
東山魁夷を中心に日本の風景画をたどる展覧会【福田美術館】
2025年2月10日
アイラブ百人一首/嵯峨嵐山文華館
伝 藤原定家《小倉色紙 あさぼらけ》前期展示 紙本墨書 13世紀 福田美術館蔵
百人一首は、藤原定家が飛鳥時代から鎌倉時代までの百人の歌人の優れた和歌を一首ずつ集めたものです。
嵯峨嵐山文華館近くの小倉山にあった定家の別荘で和歌を撰んだことから「小倉百人一首」とも呼ばれます。
情景や心情が和歌となり、詩歌に詳しい人ならば日本画から浮かぶ和歌もあるでしょう。日本画と百人一首に詠われた和歌を結び付けた企画展が開催中です。
池田孤邨《三十六歌仙図屏風》通期展示 紙本着色 19世紀 福田美術館蔵
藤原公任(ふじわらのきんとう)の『三十六人撰』に載っている36人の歌人のうち26人が百人一首にも採り上げられています。
特徴を捉えて描かれた歌仙たちは、絵画の中で一堂に会しています。
村上華岳《白梅図》通期展示 紙本墨画淡彩 1927年頃 福田美術館蔵
四季の折々の自然美を描いた絵画に百人一首の一首を添えてみる。あるいは先に歌があってそれにそう日本画が撰ばれたのかもしれません。
絵画の情景や画家の説明、添えた一首とその現代語訳の解説もあり、絵画にも和歌にも理解が深まります。
村上華岳の作品に添えられた一首は歌番号15の紀貫之で、梅の咲き初める今の季節でしょう。
村上華岳《白梅図》部分 通期展示 紙本墨画淡彩 1927年頃 福田美術館蔵
墨の濃淡で表現したボコボコした幹が見事です。
土佐光貞《伊勢大輔》前期展示 絹本着色 18世紀 福田美術館蔵
やまと絵の土佐派の流れをくむ土佐光貞が雅な宮中の一場面を描いた作品です。
奈良より届けられた八重桜を紫式部に代わって宮中に取り次ぐ後ろ姿の伊勢大輔が、天皇の御前で花に託して宮中の栄華を賞賛する歌を即興で詠んだ、歌番号61が添えられています。
百人一首には秋や月をテーマにした歌が多いそうです。
長沢芦雪《月夜紅葉図》前期展示 絹本着色 18世紀 福田美術館蔵
月は絹地の元の色を残した外隈で表現されています。
描かれたモチーフは紅葉だけで、秋の情趣が伝わります。撰ばれた一首は歌番号23大江千里の遊女の夜の想いです。
西山翠嶂《東山晴雪》前期展示 絹本着色 20世紀 福田美術館蔵
京都市内から遠く比叡山を望み、市内も雪景色で八坂の塔も描かれています。歌番号95天台座主も務めた慈円の歌があてられています。
上村松園《月可希》部分 前期展示 絹本着色 20世紀 福田美術館蔵
松園ならではの女性像で、描かれていない月に照らされた影が絶妙です。歌番号59赤染衛門の恋の歌は源氏物語の世界です。
岸岱《蘆月図》通期展示 絹本墨画淡彩 19世紀 福田美術館蔵
濃淡の墨を遣い分けてさっさっと描いた蘆、胡粉を筆に含ませて散らした粉雪、絵画に漂う寂寥感に想いをのせた歌番号19女性歌人伊勢の恨み節です。
山内信一《十二ヶ月花鳥図屏風(右隻)》通期展示 絹本着色 1919年 福田美術館蔵
右から四扇目の長い尾の山鳥がテーマです。番の山鳥は谷を隔てて別々に眠るそうで、歌番号3「歌聖」柿本人麻呂の独り寝の寂しさの歌が添えられています。
菊池契月《六歌仙図屏風》通期展示 絹本着色 20世紀 福田美術館蔵
『古今和歌集』の序文に記された六人の代表的な歌人、六歌仙を丁寧に描いた豪華な金屏風です。せっかくなので、畳に座して眺めてほしい作品です。
前後期で展示替えがあります。3月末にはカフェのテラス前の桜も見ごろとなることでしょう。