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2026年2月24日
Re:辻邦生-いま、ふたたび作家に出会う/霞会館記念学習院ミュージアム

書斎机復元
霞会館記念学習院ミュージアムでは、「Re:辻邦生-いま、ふたたび作家に出会う」が2026年5月16日まで開催されています。
本展は、辻邦生の生誕100年を記念し、各地で行われてきた展覧会の集大成となります。
辻邦生は1960〜90年代に活躍した作家です。緻密に構築された物語と美しい文章は、いまも多くの読者を魅了しています。
一方で、その人物像は意外と知られていません。
本展では、作家としての歩みをたどりながら、ひとりの人間としての実像にも光を当てます。
タイトルの「Re:」には、いま改めて彼と出会い直すという意味が込められています。

辻邦生パネル
辻は約35年にわたり、学習院大学でフランス文学を教えました。その縁から、没後には自筆の原稿や日記など約6万点もの資料が同校へ寄贈されています。
本展では、その膨大なコレクションの中から厳選した200点余りが公開されます。

会場風景
会場は、もとは図書館として建てられた柱のない広い空間です。そこに細かな仕切りやブースが設けられ、巡るうちに作家の深い知性と情熱に触れられる、密度の高い展示となっています。
入口付近では、東京・高輪の自宅にあった書斎の一部が再現されています。
書棚には膨大な蔵書だけでなく、ナポレオンの胸像など、辻の愛蔵品も当時のままに置かれています。

書棚復元
さらに進むと、主な著作が発表年代ごとに紹介されています。小説家・桜庭一樹ら辻文学を愛する著名人のコメントも添えられ、時代を超えて愛される作家の魅力が浮かび上がります。

主な著作の紹介コーナー
本展の大きな見どころは、全100冊に及ぶ初公開の日記「Journal(ジャーナル)」です 。
19歳から亡くなる直前まで綴られたこの記録には、日々の思いや創作のアイディアなどが、びっしりと書き込まれています。
妻の佐保子は、彼のことを「絶えず書く人」と呼びました。辻にとって「書くこと」は、生きることそのものだったのかもしれません。

日記の展示
若き日の日記には、同年代の三島由紀夫の活躍に衝撃を受けたことや、多忙な勤労学生としての悩み、それでも文学への思いを捨てきれない切実な心情が率直に綴られています。

東京大学時代の日記の展示
辻は大学の後輩・佐保子と1953年に結婚します。その直後、妻に贈った本には「40年経てば君を遠い宝島に連れて行こう」という熱いメッセージが記されていました。
1957年から1961年にかけて、2人はフランスへ留学します。これは辻の人生において大きな転機となりました。

結婚(右)と渡仏関連の展示
パリでの3年半、辻は読書と旅を重ねながら思索を深めていきました。
戦後の混沌の中で「文学に何ができるのか」と悩んでいた彼は、ギリシアやパリでの出会いを通じて、文学が持つ力を確信します。
この体験はその後の作家活動の土台となり、名作を生み出す大きな原動力となりました。

(左)《パリ俯瞰地図》 昭和32年(1957)~昭和36年(1961)頃
辻は「書く」人であると同時に、「描く」人でもありました。
パリの国立図書館では、私語が禁じられていたため、おしゃべりの代わりに図書請求用紙の裏にユニークなイラストを描いて、佐保子と交換していました。
辻が「MANGUA(マングア)」と呼んだこれらの絵には、彼の鋭い観察眼とユーモアのセンスがよく表れています 。

パリ留学時代に描かれた「MANGUA」
『夏の砦』のブースでは、日常の光景をユーモラスに捉えたイラストなども楽しめます。

『夏の砦』ブースに展示のイラスト《犬》昭和43年(1968)頃
会場には4つの代表作をテーマにした「没入ブース」が設けられています。
貴重な自筆原稿や創作メモ、参考資料などが並び、作品が誕生するまでのプロセスを多角的に体感できます。
ルネサンス期を舞台にした『春の戴冠』のブースでは、タイトルに悩んだメモや、創作の着想源となったボッティチェルリの絵葉書などが展示されています。
実際に本を手に取り、物語世界に浸ることも可能です。

『春の戴冠』ブース展示風景
『背教者ユリアヌス』のブースには、彫刻家・宮脇愛子が手がけた芸術品のような豪華な特装版が並んでいます。
『西行花伝』のブースでは、わずか5部しか制作されなかった希少な私家本を目にすることができます。

(左) 『背教者ユリアヌス』特装版(限定500部のうち家蔵本)装幀:宮脇愛子 昭和50年(1975)11月30日
1959年のギリシャ旅行の際、アクロポリスで手に入れた石は、「宝物」と書き込んだ洋菓子の空箱に収められ、生涯大切に保管されていました。
手挽きコーヒーミルは、パリ留学時代の夫妻の愛用品です。辻が先に帰国する際、パリに残る妻に「僕だと思って大事にして」という言葉を添えて託しました。

(中央)アクロポリスの石と収めていた箱、(右奥)手挽きコーヒーミル「ゴリオ」
6月23日からのPart 2「Re:辻邦生―作家をめぐる人と世界(モノ)」では、内容が大きく変わり、辻を取り巻く人びとやモノとの関係に焦点が当てられます。
会場は目白駅からすぐで、入館は無料です。気軽に足を運び、知られざる辻邦生の素顔に触れてみてはいかがでしょうか。
※Part2 として下記を開催予定です。あらためてご案内いたします。
Part2「Re:辻邦生-作家をめぐる人と世界(モノ)」
会期:2026年6月23日(火)~8月1日(土)