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2024年11月1日
井上泰幸展/東京都現代美術館
日本の映像史に重要な位置を占める「特殊撮影(以下、特撮)」領域に大きな足跡をのこした特撮美術監督、井上泰幸(1922-2012)。2022年に生誕100年を迎えます。
現在、東京都現代美術館では井上の生誕100年を記念する展覧会「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」が開催中です。
本展では、井上の遺したスケッチやデザイン画、絵コンテをはじめ、記録写真や資料、撮影で使用したミニチュアやプロップ、当時を再現したミニチュアセットなどを展示。日本の特撮を支えた井上の功績と日本の特撮映像史について紹介します。
※展覧会詳細はこちら
井上泰幸は、1922年に福岡県古賀市に生まれました。1944年に佐世保海兵団に入隊し、中国最大の川である揚子江(ようすこう)にてアメリカ軍の攻撃を受け、左ひざ下を負傷し義足となってしまいます。
戦後は小倉の傷痍(しょうい)軍人補導所で家具の勉強をしたのち、上京。日本大学藝術学部美術科に入学します。そこではドイツのバウハウスで学んだ建築家山脇巌(やまわき いわお、1898-1987)に師事し、デザイン・設計の仕事に携わりました。
1953年に美術スタッフとして新東宝の撮影所に入り、翌年には特撮技術のパイオニアである円谷英二の下で「ゴジラ」(1954)に特撮美術助手として参加します。その後、井上は東宝撮影所にて「空の大怪獣ラドン」(1956)や「地球防衛軍」(1957)、「モスラ」(1961)などに携わり、特撮美術監督の渡辺明の右腕として、東宝特撮映画の黄金期を支えました。
後進の教育にも熱心に取り組んだ井上。「シン・ゴジラ」の脚本・総監督を務めた庵野秀明や「シン・ウルトラマン」の監督、樋口真嗣など、現在でも最前線で活躍するクリエーターに多大な影響を与えています。
井上は1966年、東宝撮影所の初代特撮美術監督の渡辺明に代わり、二代目特撮美術監督に就任しました。
就任後は、ミニチュアセットや怪獣のほか、メカニックの美術イメージを統括するデザイナーとして多数のデザイン画を描いた井上。総合的に美術面を采配するために井上独自の作業手順を確立していきました。
特撮映画は、怪獣が街を襲い壊すミニチュアセットが重要な要素とされています。井上は独自に画面を想定したイメージボードや絵コンテを作成し、セットやミニチュアの発注を他部署に先行して進めていました。
そうして井上は、図面や予算管理、スタッフの配置など「井上式セット計画」と呼ばれる総合的な手法を駆使して、特撮黄金期を支えるクオリティの高い特撮美術セットを生みました。
ゴラス、ミニチュア FRP、アクリル、ほか 55×55×55cm
こちらは、東宝特撮映画の「妖星ゴラス」(1962)に登場するミニチュアです。
超重力を持つ黒色矮星(こくしょくわいせい)ゴラスの地球衝突を回避するための、科学者たちの奮闘を描いた本作。このミニチュアは、地球に迫るゴラスのようすを表現しています。
今にも内側から得体のしれない怪獣・ゴラスが誕生しそうなリアルさに注目です。
井上の作るミニチュアセットは、とても本格的なものです。彼の仕事に一貫する特徴は、表現する空間の空気の層まで調査するという、徹底的な再現性! その姿勢に驚かされます。
本展では、私たちが暮らす地球の市街地から宇宙空間まで、さまざまななシーンを現実化し、それをミニチュアセットで実装した井上の仕事について、台本や制作の進行表、スケッチや図面など数百点を通して紹介します。
展示室内にずらりと並ぶ資料は、どれも設定が細かく書き込まれており、井上のこだわりが見てとれます。
当時、リアルタイムで特撮映画を見ていた方はもちろん、今回初めて東京都現代美術館で特撮映画史に触れる方も楽しめる展示になっていますよ。
グリフォン、撮影用ミニチュア FRP、ほか 62×15×60cm
ミニチュアも数多く展示されているので男の子には、ロマンを感じる展示かもしれませんね♪
アトリウムに展示されている「岩田屋ミニチュアセット」は、一般の方も撮影OK(*)です!
*ただし、撮影の条件があります。詳しくは展示室内の注意パネルをご確認ください。
岩田屋再現ミニチュアセット 2022 年 マーブリングファインアーツ制作 空の大怪獣ラドン 1956
本作は特撮研究所の三池敏夫氏が、初のカラー怪獣映画「空の大怪獣ラドン」(1956)に登場する、西鉄福岡駅周辺のミニチュアセットを再現したもの。井上のこだわりの詰まった仕事が、令和の技術でよみがえります。
特撮映画に参加するような記念撮影が楽しめるユニークな本作。とてもリアルに作り込まれているので、ずっと観ていられそうです。
「#井上泰幸展」のハッシュタグを付け、本展の思い出にSNSでシェアしてみてはいかがでしょうか。
井上泰幸展と同時期に、東京都現代美術館では3つの展覧会が開催されています。
藤井光《日本の戦争画》153点の絵画とキャプションによるインスタレーション、2022
東京都とトーキョーアーツアンドスペースが実施する「Tokyo Contemporary Art Award」。2018年よりスタートした本賞は、中堅アーティストを対象に受賞から、アーティストへ複数年にわたる継続的支援を行い、更なる飛躍を促すことを目的とした現代美術の賞です。
山城知佳子《肉屋の女》3面マルチチャンネル・インスタレーション、21分15秒、2012年版
東京都現代美術館 企画展示室3Fで開催中の受賞記念展では、第2回受賞者の藤井光氏と山城知佳子氏による作品が個展形式で展示されています。
※展覧会詳細はこちら
企画展示室 1Fでは、東京出身の建築家・吉阪隆正(1917-1980)の活動の全体像にふれる展覧会が開催されています。
「メビウスの輪」
戦後復興期から1980年まで活躍した建築家・吉阪隆正。コンクリートによる独特の建築で知られています。そんな吉阪の建築だけにはおさまらない活動の全貌を紹介する本展は、公立美術館では初の展覧会となります。
戦後美術を中心に、近代から現代に至る約5,500点の作品を収蔵する、東京都現代美術館。「光みつる庭/途切れないささやき」と題された本展では、絵画作品や、同館のコレクションの核である版画作品、舟越桂のまとまったコレクションなどを、2部に分けて紹介します。
クリスチャン・ボルタンスキー《死んだスイス人の資料》[Archives des Suisses morts]1990
第2部(3F)では、2021年に亡くなったクリスチャン・ボルタンスキーの作品も展示されています。静かな空間で、作品の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
なお、それぞれの展覧会の入場方法については、美術館公式サイトをご確認ください。
同時に4つ展覧会が楽しめる東京都現代美術館。お出かけが楽しくなる春は、東京都現代美術館でアートな1日を過ごしてみては?