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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
スフマートでは、「つくる」「つたえる」という2つの視点をもとに、アートに関係するさまざまな人へのインタビューを隔週・前後編でお届けします。
新橋駅にほど近い商業施設・カレッタ汐留内にあるアドミュージアム東京は、広告専門のミュージアムです。
2017年にリニューアルされた館内では、江戸時代の錦絵や懐かしのテレビCM、ポスターなどの広告資料を観ることができるほか、広告コミュニケーションの最先端がわかる企画展示も開催。
最近では、館内で撮影した写真や感想をSNSで発信する来館者も多く、友だち同士やデートで訪れるカップルも増えているとのこと。入館料が無料なのもうれしいですね!
アドミュージアム東京 事務局次長/三浦 善太郎さん ※撮影時、マスクを外していただきました。
今回お話をお聞きしたのは、アドミュージアム東京の事務局次長/学芸員の三浦 善太郎さんです。
前編では、広告資料の収集や展示の工夫について、同ミュージアムの人気の秘密についてお伺いしました。
──SNSで館内を撮影して発信する若い人たちが増えているようですが、何かきっかけや理由があるのでしょうか?
リニューアルの少し前に、個人使用目的に限り、ライブラリー以外の館内の写真撮影を自由にしました。それ以降、SNSに写真を投稿してくださる方が徐々に増え始めています。
来館者は特に10代後半から20代前半の方が多く、そうした世代の来館者がご自身のSNSで発信されているようです。投稿された写真や率直な意見、感想なども拝見し参考にさせていただいております。
当館を紹介いただきとてもありがたいです。
──2017年のリニューアルでは、館内はどのように変わったのでしょうか?
アドミュージアム東京は2002年に開館しました。
ミュージアムを運営している(公財)吉田秀雄記念事業財団が、1965年の創設以来、広告・マーケティングの研究者への助成を行ってきたという流れもあり、開館当初はどちらかというと研究者や広告業界の方向けのミュージアムでした。
リニューアル前はエントランスから黒を基調とした重厚な空間デザインだったのと、外から中が見えないため気軽に入りにくい雰囲気もあったかもしれません。
リニューアル前の来館者アンケートでは、展示をみて「面白かった、楽しかった」という回答をいただいており、入りづらいという理由で入っていただかないのはもったいないと感じていました。リニューアルではそれを解消しようと、入りやすさも意識しました。館内も明るくカジュアルな雰囲気にし、ガラス越しに館内が見えるようにして入りやすくするなど、かなり変わったと思います。
私たちも「リニューアルした!」という感覚がすごくありました。若い世代を含め、来館者が大幅に増えたのも、リニューアル効果のひとつだと感じています。
──コンセプトや展示方法なども変わりましたか?
専門博物館って、何だかとっつきにくい印象があると思うんです。アドミュージアムは広告専門の博物館ですから、「わたしにはあまり関係ないな」と感じる方もいるかもしれません。
けれど、通りかかったついでに「無料だしちょっと入ってみよう」と入館してみたら実はすごく奥が深くて、どんどん知的好奇心の深みに入っていけるような場所を目指して、“Into Creativity”というコンセプトで展示をつくっています。
広告への関心が高くなくても、何歳になっても学び続ける好奇心がある方達にぜひご来館いただきたいです。
館内には、常設展示室、企画展示室、ライブラリーという3つの部屋があります。
常設展示室には江戸時代から現在までの広告の歴史を展示。企画展示室では、その年の広告賞展や当館オリジナルの企画展を開催しています。
広告の過去から現在、少し未来にも目を向けた広がりのようなものを観ていただける展示構成です。
──常設展示のキャプションも、とてもキャッチーで印象的でした。惹き込まれるように展示を観て、解説文もしっかり読んでしまいました。
キャプションもリニューアルの大きなポイントです。
がんばって展示を観たり、解説文を読んだりしているうちに疲れてしまって、全て丁寧には読めないという経験は、たぶん誰もがしているのではないでしょうか?
アドミュージアム東京は広告コミュニケーションを扱う館でもありますから、キャプションは「いかに人に伝えるか」ということを生業にしているプロのコピーライターの方に書いていただいています。
まずはリード文でおおよそのストーリーを説明して、その下のボディーコピーで簡単な内容がわかるようになっています。さらにその下のパネルで詳しい資料の解説をする、というように3段階に分かれています。
説明文もなるべく200文字以内に収めたりと、読みやすいように工夫をしています。
また、展示を観て広告コミュニケーションに興味が湧いた人や、気づきやアイデアを深掘りしたくなった人たちの受け皿として、ライブラリーを活用できるようなつくりにしています。
──テレビCMなどの映像資料の展示も面白かったです。常設展示室のデジタルコレクションテーブルをタッチして盛り上がっている人たちもいました。
デジタルテーブルでは、テレビCM、新聞広告・ポスター、キャンペーン映像などを観ることができます。
総数2300あまりのサムネイルの中から気になるものを視聴すると、どんどん関連する資料が現れて、最終的には違うものを観ている。「最初に観たものよりこっちのほうが好きだった」というような、偶然の発見や出会いをねらいにしています。
視聴ブース「4つのきもち」では、「元気が出る」「心あたたまる」「考えさせられる」「びっくりする」という気持ちをテーマにしており、誰もが知っている懐かしいCMや、広告業界の中でも名作と言われるCMを観ていただけます。
ぶら下がっている雲のようなかたちのブースで視聴している姿を外から眺めると、雲から体だけが出ているように見えるので、フォトスポットとしてもおすすめです。
──放映されていた当時のテレビCMを観られる場所がなかなか無いので貴重ですね。
はい。当館の展示を観て「懐かしい!」ってみんなで盛り上がったり、その時代にはまだ生まれていない世代の方も、「これ、どこかで観たことある!」と興味を持ってくださったり。今10代の方たちには、「レトロなのが逆に新鮮」と言っていただくこともあります。
──いい広告っていうのは廃れない。
そのとおりです。当ミュージアムの常設展示の見どころは実は江戸時代です。江戸時代の展示の中にも驚きや新たな発見をたくさん見つけていただけると思います。
日本のCMはタレントが出演することが多いです。そして、江戸時代の人気タレントといえば歌舞伎役者です。歌舞伎役者が劇中や幕間に商品の宣伝をしたり、クチコミでの拡散を促している。現代でいう企業タイアップやSNSですよね。
広告の目的や役割とは、人の心を動かすことではないでしょうか。それは、江戸時代からずっと変わらないのかなと。先人たちが、知恵と工夫、アイデアをぎゅっと詰め込んだ広告資料を展示してありますので、普遍的な価値やアイデアのヒントがご覧いただけると思います。
明るく開放感のある館内で、若い世代をも惹きつけるミュージアムになるまでの試行錯誤や展示の工夫についてたっぷりお聞きしました。
写真を撮ってSNSでおすすめしたくなるのも納得の、知的好奇心を刺激される空間です!
後編では、コミュニケーション・クリエイティブの最先端を紹介する企画展示や、ニューメディアの普及とともに変わりゆく広告資料の収集や展示についてお話いただきました。
どうぞお楽しみに!