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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
スフマートでは、「つくる」「つたえる」という2つの視点をもとに、アートに関係するさまざまな人へのインタビューを隔週・前後編でお届けします。
約33万点ものコレクションの中から、選りすぐりの広告資料を展示しているアドミュージアム東京。
明るくカジュアルな雰囲気の館内では、錦絵、ポスター、映像など、江戸時代から最新のものまで、さまざまな広告資料を幅広く紹介。楽しくて知的好奇心を刺激されるスポットとして、SNSでおすすめする若い世代も増えています。
アドミュージアム東京 事務局次長/学芸員・三浦 善太郎さん ※撮影時、マスクを外していただきました。
今回お話をお聞きしたのは、事務局次長/学芸員の三浦 善太郎さんです。
前編では、広告資料の収集や展示の工夫について、同ミュージアムの人気の秘密についてお伺いしました。
つづく後編では、広告コミュニケーションの“今”を知ることができる企画展示や、広告資料を扱うミュージアムならではの課題や展望についてお話いただきます。
──企画展示室では、国内外の広告賞展や、オリジナルの企画展を開催されていますね。それぞれの展示の特色について教えてください。
各アワードで上位に入賞した作品を主に展示しますが、その他の受賞作品の中からも、その年の広告業界の動きや傾向をよく現しているものを紹介するよう心がけています。当ミュージアムの学芸員だけではなく、各賞の事務局で審査に携わられた方といっしょにセレクトすることもありますよ。
オリジナル企画展に関しては、ミュージアム内で話し合って、世界の広告コミュニケーションの潮流を反映した独自のテーマを設定しています。
広告コミュニケーションを通して、少し未来が垣間見れるような、そして来館者と一緒に考えられるようなテーマを設定することを心掛けています。
──これまで携わってこられた中で、印象に残っている企画展はありますか?
『Good Ideas for Good』という、ソーシャルグッドに焦点を当てた企画展を2016年から開催してきました。
今は多くの場所で「SDGs (Sustainable Development Goals=“持続可能な開発目標”の略語)」が取り上げられていますが、第1回を開催した2016年当時、日本の広告業界ではあまり取り上げられていませんでした。
ちょうどSDGsが国連サミットで採択された翌年で、海外では「ソーシャルグッド」という流れがすごく盛んでしたので、当館もそこに着目するべきではないかと。
まだあまり馴染みのなかった「SDGs」の代わりに、「for Good」というワードを切り口に、ソーシャルグッドを扱った広告を集めて展示しました。反響も大きく、近々第3回を開催予定です!
──アドミュージアム東京でこれからつくっていきたい展示や企画展はありますか?
常設展で、平成以降の部分をどのように広告史としてまとめるかということですね。平成の前半に関してはすでに展示もあるのですが、特に後半は大きな課題だと思います。
今年で令和4年になりますので、そろそろ振り返れる時期には来ているのかなと思います。
──近年の広告は、誰もが知っている有名広告が減っている気がします。広告コミュニケーションもめまぐるしく変化していますよね。
今は、それぞれが自分の趣向に合ったメディアを選択して観ていて、かつ情報の受け手も発信者になっている時代ですよね。ですから「テレビCMの名作」みたいなものもだんだん少なくなってきていて・・・。メディアも多岐にわたっていますし、ターゲットも性別や年代別に細かく設定されていたり。かつ、キャンペーンなどになると立体的に展開されています。
どういう軸を持って何をコレクションしていくのか、私達も模索しているところです。
世の中全ての広告資料を収集・保存するのは困難ですので、最新の広告資料については国内外の広告賞の事務局から提供いただいた資料を中心に展示しています。
その年の潮流を反映していたり、最新の技術などが詰め込まれた受賞作品を通して、広告コミュニケーションの“今”をみなさんとも共有をしていければと思っています。
──来館者がアドミュージアム東京をより楽しめる、おすすめポイントはありますか?
ぜひ、スタッフが館内の見どころを解説付きでご案内する「見学会」を利用してほしいです! 当ミュージアムのWEBサイトから、グループごとの先着順で予約を受け付けています。
「見学会」というと、団体が対象というイメージがあるかもしれませんが、1名様からでも気軽に申し込んでいただきたいです。どのコースも無料です。
──「見学会」の内容や所要時間はどのくらいですか?
ABCの3コースがあります。Aコースは修学旅行などの団体向けなのですが、今はコロナ対応もあって一時中止をしています。開催中なのが、BコースとCコース。
Bコースは、展示室にいるガイドスタッフが、館内や展示資料の見どころやポイントなどを解説しながら30分程度でご案内しています。一般の方は、このコースをご利用いただくと楽しめるのではないかと思います。
Cコースは、例えば「大正時代のグラフィックについて知りたい」など、専門的なテーマについて学びたい方向けです。50分~90分程度の完全カスタマイズのコースで、ご希望の内容についても事前にメール等でやりとりをさせていただいています。テーマがなくても、例えば「広告史全般が知りたいです」といった場合は、江戸から平成まで日本の広告史全体をご案内することもできます。
もちろんご自身のペースでゆっくり鑑賞いただくのも良いと思いますが、解説を聞くことで、違った見方ができたり発見や気づきがあったりするかもしれません。私たちも見学会を通して、来館者のみなさんから気づきをいただくことも多いです。
見学アテンドは、ミュージアムにとって大事な機能の一つだと思いますので、ぜひご利用いただき、私たちもみなさんと一緒に考えていければなと思います。
見学会も展示もそうなのですが、ひとつの資料を「広告コミュニケーション」の角度から見る際に、必ず決まった答えや正解があるわけではないんです。
いろいろな見方をご提示したり、来館者といっしょに考えていくのも、博物館の提供すべき役割ではないかと感じています。
「アドミュージアムの展示や見学会を通して、広告に対するイメージが変わった」といった感想をいただくと本当に嬉しくて。
広告に興味がある人はもちろん、興味のない人にこそぜひ来ていただきたいです。
──広告資料を扱うミュージアムは、世界でアドミュージアム東京だけだそうですね。
印刷物や映像など、何かのメディアに特化した広告マーケティング関連の博物館はいくつかあるんです。ですが、メディアや広告の歴史を網羅的に扱っている博物館というのは国内で唯一、世界でも類を見ないと思います。
その背景として、広告資料は大事に扱われる美術品やアートとは違って、「たかが広告」と思われがちなんです。役割を終えるとすぐに流れて無くなってしまう。だからこそコレクションしている施設が少ないような気もしています。
だけど、実はすごく奥深くてさまざまなものが詰まっている。振り返ってみると、その当時は感じていなかった価値があぶり出されてくるんですよね。
美術品やアートなどの文化遺産とは違って、広告資料はその役割を終えるとすぐに無くなってしまいます。しかし、広告資料は時代を映す鏡ともいわれ、その時代の背景や文化など、さまざまな情報が映りこんでおり、当時を知ることができる貴重なものでもあります。そういった資料をできるだけ多く残し、広告の歴史だけでなくその時々の社会や文化がわかる資料として後世に伝えていくことが、私たちのミッションのひとつだと考えています。
広告コミュニケーションやマーケティングの世界は、日々進化しています。常にみなさんに新しい視点やヒントを提供できるミュージアムで在り続けたいです。
何気なく視聴している広告の魅力と奥深さを堪能できるアドミュージアム東京は、2022年で開館20周年を迎えるとのこと!
平成以降の広告資料がどのように展示され、後世に伝えられていくのかも楽しみですね。
日々進化しながら、時代を経ても変わらない普遍性を持つ広告資料を扱う希少なミュージアムとして、これからも在り続けてほしいです。
次回のインタビューは、練馬区立美術館の秋元雄史館長にお話をお伺いします。お楽しみに。
(次回:2022年6月6日 更新)