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2024年11月1日
企画展「蔵出し蒔絵コレクション」/根津美術館
根津美術館で、蒔絵(まきえ)作品をまとめて紹介する展覧会「蔵出し蒔絵コレクション」が開催中です。
実業家・初代根津嘉一郎(1860-1940)が購入した蒔絵作品を、初めてまとめて紹介する本展。
根津美術館を代表するおなじみの蒔絵作品から本展で初公開されるものまで、蒔絵史において重要な作品が多く紹介される展覧会です。
漆(うるし)で文様を描き、その漆が硬化する前に金や銀の金属粉を蒔き付けて装飾する技法を用いた蒔絵。漆黒の器を彩る金のグラデーションは、今もなお人びとを魅了し続けています。
展示風景
根津美術館は、初代根津嘉一郎が蒐集したコレクションを保存、展示するためにつくられた美術館です。同館では国宝7件、重要文化財88件、重要美術品95件を含む日本と東洋の古美術を約7,600件収蔵しています。
嘉一郎がコレクターとして注目を浴びるきっかけになったのは、蒔絵作品の購入でした。
以前より、名品「花白河蒔絵硯箱」を手に入れたいと思っていた嘉一郎。1906年に大阪の豪商・平瀬家の売立にかけられていた同作を、当時としては破格の高値で落札して世間を驚かせます。
その後も嘉一郎は生涯を通じ、蒔絵作品を集め続けました。
重要文化財 春日山蒔絵硯箱 日本・室町時代 15世紀 根津美術館蔵
コレクションの中でも、質・量ともに充実しているのが硯箱で同館の蒔絵コレクションの核となっています。
重要文化財「春日山蒔絵硯箱」は、室町時代の蒔絵技術の到達点を示す名作です。
室町幕府八代将軍・足利義政が大切にしていた硯箱なのだそう。ふたの表裏に散らされた文字やもようから、『古今和歌集』巻4、壬生忠岑(みぶのただみね)の歌「山里は秋こそことにわびしけれ 鹿の鳴く音に目をさましつつ」を暗示しているといわれています。
硯箱も身の回りに置かれる調度品の一種ですが、嘉一郎はそれ以外にも小さな箱から婚礼調度まで、大小さまざまの調度品をコレクションしています。
百草蒔絵薬箪笥 飯塚桃葉(初代)作 日本・江戸時代 明和8年(1711) 根津美術館蔵
本作は、徳島藩主・蜂須賀(はちすか)家伝来の薬箪笥(くすりたんす)です。藩主お抱えの蒔絵師・飯塚桃葉(初代)(いいづかとうよう/?-1790)によって制作されたものです。
右手前に展示されているふた裏に注目。100種類の薬草と虫がその名称も添えて、写実的に描き出されており、超絶技巧に圧倒されます。
嘉一郎は印籠(いんろう)も100点以上蒐集しています。
展示風景
技術的に精緻な蒔絵を好んだと思われている嘉一郎。手のひらに収まるほどの画面に高度な技術が注ぎ込まれた印籠は、彼の好みに合っていたのではないかと考えられています。
展示風景
根津美術館の蒔絵コレクションを一堂に紹介する本展。バラエティに富んだコレクションを用途ごとに整理して展示し、蒔絵の技法解説もパネルで紹介されています。
嘉一郎が生涯にわたり集め続けた蒔絵の豊かな世界を堪能してみてはいかがでしょうか◎