古美術逍遙 ― 東洋へのまなざし/泉屋博古館東京

「東洋美術」の魅力をダイジェストで紹介する展覧会【泉屋博古館東京】

2022年9月21日

古美術逍遙 ― 東洋へのまなざし/泉屋博古館東京

2022年3月にリニューアルオープンした泉屋博古館東京。住友家が収集した美術品を中心に調査研究、公開をする美術館です。

同館では3月からリニューアルオープン記念として、館蔵品から近代の日本画や洋画のコレクションを紹介してきました。


展示風景

リニューアルオープン記念パート3となる本展では、京都・鹿ケ谷にある泉屋博古館が所蔵する近世以前の名品と合わせて、住友コレクションを代表する作品を一挙に紹介!

多種多様のジャンルを今回は4章に分けて展示し、国宝2件・重要文化財10件を含む79件の作品から古美術の魅力に迫ります。

親子二代にわたって集められた「中国書画」

住友コレクションの中国書画は主に、泉屋博古館の所蔵品の礎となっている住友家15代当主・住友春翠(しゅんすい)と、その息子の住友寛一によって集められました。

親子のコレクションを見ると、趣味はだいぶ違っているのだそう。父・春翠は気品のある作品を好んで収集していましたが、息子の寛一は主に伝統に縛られない個性的な画風を作り上げた画家の作品を集めていたといいます。


(左)石濤《盧山観瀑図》重要文化財 清時代17~18世紀 泉屋博古館蔵

親子二代にわたって築かれた住友家の中国書画のコレクション。その中でも石濤(せきとう)が描いた《廬山観瀑図》に注目です。

本展の展示を担当した泉屋博古館の竹嶋康平学芸員に、この作品の見かたについて聞いてみました!

「本作品は大作なので、どこから見ていいかわからないかもしれませんので、2種類の見かたをご紹介します」という竹嶋学芸員。絵の中に描きこまれている人物を探して、その人の視点で絵画世界に入り込む見かたと、右側にある大きな岩の傾きに従って目を動かす見かたを教えてもらいました。


石濤《盧山観瀑図》重要文化財 清時代17~18世紀 泉屋博古館蔵

編集部は「絵画世界に入り込む見かた」で本作をじっくりと観察。

画面下に小さな人が描きこまれていますね。この人の気持ちになって画面奥に描かれている滝の音や、水分をたっぷり含んだ空気などを想像して楽しむと「VR」のような没入感が味わえました◎

「古美術ってどう楽しんだらよいか分からない」という方は、絵画世界に入り込んで想像力を働かせて作品を観ると、楽しめるかもしれません♪

京都では見られない?豪華な取合せ!

茶会を開く時に、お客様をもてなすのに必要な道具の組合せに工夫することを「取合せ」といいます。

本展では、京都の泉屋博古館では見られない《二条城行幸図屏風》と、《小井戸茶碗 銘 六地蔵》名品の取合せが堪能できますよ!


(奥)《二条城行幸図屏風》江戸時代・17世紀
(手前)《小井戸茶碗 銘 六地蔵》朝鮮時代・16世紀 泉屋博古館東京蔵

総勢3226人が描かれた豪華な屏風に負けない気品を持つ《小井戸茶碗 銘 六地蔵》は、春翠が生涯大切にした品のひとつ。

本展では、100年ほど前に春翠が開いた茶会の取合せからさらに厳選した名品を展示します。

また10月4日から始まる後期展示では、春翠を偲んで開かれた茶会で用いられた道具が紹介される予定です。

受験生の文房に飾られていた「学問の神様」

現代的に表すと書斎という意味である文房。


展示風景

そこには文房の主人である文人たちの美意識をギュっと凝縮した道具が数多く飾られていました。

本展では、文房でどのように芸術が鑑賞されてたかについて紹介。キャプションがないので、中央のベンチに腰をかけて当時の文人の気持ちになって鑑賞してみると、新しい芸術の楽しみ方が見つかるかもしれません♪


《鍍金魁星像》明時代・17世紀 泉屋博古館蔵

雲に乗った鬼が、右手に筆、左手に斗(ます)を持ち駆けていくユニークな《鍍金魁星像(めっきかいせいぞう)》は、中国で隋代から清末期まで行われた、高級官吏任用制度である「科挙(かきょ)試験」を受ける受験生(文人)たちに信仰された「学問の神様」です。

魁星とは、北斗七星の一番先頭に位置する、魁(さきがけ)の星です。その意味から中国では、科挙試験を首席で合格するために信仰を集める存在となりました。

鬼が斗を持つ姿は「魁」の漢字を表しているのだそう!遊び心もある作品です。

泉屋博古館東京のリニューアルオープン展の第3弾となる本展。東西の泉屋博古館が所蔵する古美術の名品を一度に楽しめるチャンスです◎

また、泉屋博古館東京周辺の美術館では以下の展覧会が開催中です。

菊池寛実記念 智美術館「畠山耕治―青銅を鋳る」

大倉集古館「合縁奇縁~大倉集古館の多彩な工芸品~」

この秋の芸術鑑賞の候補にいかがでしょうか。

Exhibition Information

Ticket Present

本展のチケットを「5組10名様」にプレゼント!
〆切は2022年10月2日まで。
※当選は発送をもって代えさせていただきます。