杉浦非水 時代をひらくデザイン/たばこと塩の博物館

日本におけるモダンデザインのパイオニア・杉浦非水の足跡をたどる展覧会

2021年9月16日

杉浦非水 時代をひらくデザイン/たばこと塩の博物館

※前期(9月11日~10月10日)・後期(10月12日~11月14日)で展示替えを行います

 

日本におけるモダンデザインのパイオニアとして知られる杉浦非水の展覧会が開催中です。

杉浦非水 時代をひらくデザイン/たばこと塩の博物館

展示風景

杉浦非水(すぎうらひすい、1876-1965)は、近代日本のグラフィックデザイナーで、現代の日本のグラフィックデザインの基礎を築いたひとりです。

本展は、非水の故郷にある愛媛県美術館所蔵のコレクションを中心に、ポスター、装丁、雑誌表紙、パッケージデザイン、図案集などの代表作はもちろん、彼の創作の背景を知るためのヒントも紹介。前後期合わせて約300点を展示し、非水の足跡をたどります!

非水とデザインの出会い

杉浦非水は幼いころから絵を描くことが好きで、東京美術学校(現・東京藝術大学)に進学し、円山派の画家・川端玉章から日本画を学んでいました。

はじめから図案家になろうとしていたわけではなかったのです。

杉浦非水 時代をひらくデザイン/たばこと塩の博物館

展示風景

在学中、非水はとある縁から、フランス帰りの洋画家・黒田清輝からフランス語や洋画の指導を受けるようになります。

その時に黒田がもたらしたアール・ヌーヴォー様式の図案と出会い、衝撃を受けた非水。このことがきっかけで、図案家としての道を進むことになりました。

非水に影響を与えた人物などの交流関係や、若き日の作品からその活動の原点をたどります。

グラフィックデザインのパイオニア

非水の図案家としてのキャリアは、黒田清輝の紹介による、1903年の大阪での仕事に始まります。

その後1908年には三越呉服店の夜間勤務の嘱託として入店、1910年には新設された図案部の初代主任となりました。

*嘱託(しょくたく)・・・有期雇用契約を持つ、契約社員の一種。

杉浦非水 時代をひらくデザイン/たばこと塩の博物館

展示風景

以降、1934年に退社するまで27年間にわたって、同店のポスター・PR誌表紙などさまざまなデザインを一手に担当。いつの頃からか「三越の非水か、非水の三越か」とささやかれるほどになりました。

この非水による一連の仕事は、近代日本における企業戦略の最初の成功例とも位置付けられています。

杉浦非水 時代をひらくデザイン/たばこと塩の博物館

展示風景

また、三越ではあくまで嘱託の身分を貫き、三越以外の企業デザインや多くの装丁・雑誌表紙なども手がけています。

企業のポスターやたばこの「響」「光」といったパッケージなどを手がけ、日本ではまだ未知の領域であった商業デザインの分野を切りひらいたのです。非水の単なる「宣伝」の枠を超えた図案家としての幅広い活動から生み出された多くの作品は、現在でいう「グラフィックデザイン」の原点といえます。

デザイン好きも必見の展示となっていますよ!

自然からデザインを学ぶ

日本画を学ぶことからスタートした非水ですが、ただ模写をするのだけでは飽き足らず、すすんで草花や動物の写生をしていました。

独創的なデザインは、自然からひたむきに学んでこそ生まれると考えていた非水。こういった創作活動への姿勢が、彼の図案が今も色あせない魅力を持ち、広く愛され続けている理由なのかもしれません。

杉浦非水 時代をひらくデザイン/たばこと塩の博物館

展示風景

本展では、非水の創作活動の根幹ともいえる「写生」に注目した展示も豊富に展示されます。

特におすすめなのが『非水百花譜』です。この作品は、非水が描いた100種の花びらの原画を、当時の一流職人たちが集い、多色摺りの木版画として仕立てられてました。色彩はもちろん、植物の姿を驚くほど美しく切り取った非水の写生力にも注目です。

グラフィックデザインの第一人者としての杉浦非水

非水は1922年、46歳にして初めてヨーロッパ進学を果たします。1年ほどの滞在期間中、フランスを中心にドイツ、イタリアなどを巡り、ポスター収集などにつとめました。帰国後、非水の作風は、それまでの和と洋が混ざった優美なスタイルから、より明快でシャープなものへと変わっていきます。また、デザインの価値と存在意義の向上を唱えるなど、教育者の立場も確立していきました。

 

さらに、大蔵省専売局の嘱託(デザイナー)となって活躍しますが、この頃に非水が手がけた、たばこパッケージやポスターなども紹介します。

杉浦非水 時代をひらくデザイン/たばこと塩の博物館
展示風景

明治・大正・昭和という3つの時代を生きた、グラフィックデザインのパイオニアは何を目指し、何を残そうとしたのでしょうか?
近代日本のデザインを語るうえで欠かせない杉浦非水。今も色あせない魅力を、非水の仕事とともに通覧できる展覧会でした。

Exhibition Information

展覧会名
杉浦非水 時代をひらくデザイン
開催期間
2021年9月11日~11月14日 終了しました
会場
たばこと塩の博物館 2階特別展示室
公式サイト
https://www.tabashio.jp/
注意事項

前期:9月11日(土)~10月10日(日)、後期:10月12日(火)~11月14日(日)
※前期・後期で展示替えを行います。