塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
本と絵画の800年 吉野石膏所蔵の貴重書と絵画コレクション/練馬区立美術館
練馬区立美術館で、吉野石膏所蔵の貴重書と絵画コレクションを紹介する展覧会が開催中です。
本展では、吉野石膏株式会社が長年収集してきた絵画コレクションと、吉野石膏美術振興財団のアートライブラリーが有する貴重書のコレクションより、絵画と本との結びつきに注目して選んだ約200点の作品を紹介します。
国内を代表する建材メーカーとして広く知られている吉野石膏株式会社。虎のマークの「タイガーボード(せっこうボード)」の商品名でも有名な会社です。
吉野石膏コレクションとは、近代フランス絵画と日本画・洋画を中心としたコレクションです。
本展では、吉野石膏株式会社が収集した絵画と吉野石膏美術振興財団のアートライブラリーが所蔵する貴重書を合わせて、本と絵画の800年の歴史をひも解きます。
時祷書零葉(聖セバスティアヌス受難の場面)
1435年頃 吉野石膏コレクション
第1章では、中世・ルネサンス期のヨーロッパで作られた美しい本の世界を紹介します。
本作は、時祷書(じとうしょ)と呼ばれるキリスト教の一般信徒のための祈祷書で、13世紀末ごろに登場してから16世紀初頭まで高い人気を保ち続けました。
15世紀半ば、ヨハネス・グーテンベルグによる活版印刷が誕生するまで、本の複製はすべて人間の手によって行われていました。
本作のような鮮やかな色彩と文様で彩られた美しい本も、当時の人が一つひとつていねいに描いたものです。
写本は写字生(しゃじせい)と呼ばれる職人が、文字を一つひとつ手で書いて作るので、1冊の本が完成するまで大変な時間がかかります。
紙にペンを使って本を写していく。この工程だけ聞くと簡単なように思うかもしれません。しかし当時は、現代のように店に行ったら真っ白な紙と筆記用具が売っている時代ではありません。
鳥の羽で作ったペンにインクをつけ、動物の皮を薄く削って加工した「羊皮紙(ようひし)」と呼ばれる紙を用意することから始まります。
本展では、これらの美しい写本が生まれる工程も分かりやすく紹介しています。
実際に羊皮紙を触ることができる体験展示も!それぞれの紙の違いも比べてみてくださいね◎
19世紀に入るとヨーロッパでは産業革命に伴い、社会が急激な変化を迎えました。その反動として、イギリスで中世的な社会のあり方への関心が高まります。
第2章では、印象派の画家で有名なカミーユ・ピサロの息子リュシアン・ピサロによって設立されたエラニー・プレス出版所に注目します。
(左)シャルル・ペロー
『眠れる森の美女・赤ずきん:ふたつの寓話』エラニー・プレス
1899年 吉野石膏コレクション
1891年にウィリアム・モリスが「ケルムスコット・プレス」を設立して以降、19世紀末から20世紀初頭にかけてイギリスでは「プライヴェート・プレス」が数多く誕生しました。
プライヴェート・プレスとは、小規模な事業形態と良質な素材・デザインへのこだわり、さらに少部数限定出版を主体とした出版社です。
リュシアンが設立したエラニー・プレスも、プライヴェート・プレスの一つとして数えられています。
ピエール・ド・ロンサール『ソネット選集』
エラニー・プレス 1902年 吉野石膏コレクション
エラニー・プレスの出版物は、他のプライヴェート・プレスにはない豊かな色彩が特徴とされています。
製本以外は全てリュシアンと妻エスターが手掛け、彼が自分の作品として作り上げたエラニー・プレスの本は、「芸術家の本(リヴール・ダルティスト)」と評されています。
20世紀に入ると、フランスでは芸術家が挿絵を描いた豪華本が盛んに作られました。
中でもスペインを代表する画家であるパブロ・ピカソは、詩や戯曲によって絵画とは異なる世界を表現します。
本展では、モダン・アートの画家たちがどのように書物と関わったのかについても紹介します。
吉野石膏コレクションを代表するルノアールをはじめ、ピカソやシャガール、藤田嗣治などの作品も多数展示していますよ◎
第3章では、吉野石膏コレクションの日本画と洋画を、関連書籍とともに紹介します。
暮しの手帖社より出版されたぬり絵集の絵は、当時を代表する洋画家たちの原画が使用されている豪華なぬり絵です。
ぬり絵練習帖 1951年 暮しの手帖社
絵画と本では、同じモチーフが違った見方で表現されていることがあります。
本展は、そうした違いやさまざまな表現について吉野石膏コレクションの貴重な所蔵品からひも解く展覧会です。
貴重書と絵画・・・吉野石膏の二大コレクションが同時に公開されるのは初とのこと!この機会をお見逃しなく。