塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
建物公開2024 あかり、ともるとき/東京都庭園美術館
東京都庭園美術館で開催中の「建物公開2024 あかり、ともるとき」。
年に一度開催される建物公開では、アール・デコ様式が美しい旧朝香宮邸がクローズアップされます。今年度のテーマは「照明」です。
細部までこだわり抜かれた照明器具を深く知り、歴史的建築と光が生み出す美しさを堪能できます。
家具やテーブルセッティングなど邸宅の雰囲気が再現されており、自然光も取り入れた建物本来の姿が楽しめる絶好の機会です。灯りが装う庭園美術館の新たな一面を体感してみましょう。
建物公開展は、旧朝香宮邸の建築デザインを細部まで鑑賞できるまたとない機会です。
照明に焦点を当てた今年の展示会では、「あかり」が居室ごとに与える彩りを楽しむことができます。
窓のカーテンは開け放たれており、自然光との調和も。室内空間と緑豊かな庭園・青い空とのつながりは、訪れた季節や時間ごとに異なる景色を見せてくれるでしょう。
再現展示がおこなわれる建物公開展では、宮邸時代に使用されていた家具や調度品が配置されています。朝香宮邸での暮らしをイメージさせる演出に心が動かされます。
大客室に設置された重厚感のあるシャンデリアはルネ・ラリックのもの。
規則性のある細やかなガラスの装飾は、天井の漆喰のしつらえや壁面の上部を囲むアンリ・ラパンの壁画とともに、来客を迎えるためにふさわしい豪華さを感じさせてくれます。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」より ルネ・ラリック《ブカレスト》
大食堂は家具の設置に加え、テーブルセッティングまでされています。テーブルの真上には、ルネ・ラリックによるパイナップルと柘榴をモチーフにした遊び心のある照明があり、暖かな食事風景を想像させます。
円形を描く窓から見える庭の風景が印象的です。開かれたカーテンから入る自然光とともに建物の魅力を際立たせる空間になっていました。
他にも、窓の下にある魚や貝がデザインされたラジエーターカバーや、レオン・ブランショによる植物文様の壁面など、照明以外にも見どころがたくさんあります。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」より ルネ・ラリック 《パイナップルとざくろ》
円形に見える間取りの書斎には、ドーム型の天井に間接照明が設置されていました。照明自体に装飾はありませんが、機能的な光の設計が施されています。
中央にあるデスクは光の差し込み具合にあわせて回転できるとのこと。照明だけでなく、太陽光にも配慮した仕様になっており、時間を問わず仕事がはかどる環境が整っています。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」会場風景
特徴的な照明がたくさんある旧朝香宮邸。今回の展示会では、各照明の詳しい解説が添えられています。
デザインの見どころはもちろん、見ただけではわからない構造や素材、長い歴史の中で生まれたエピソードなども紹介されており、目的や工夫を感じながら鑑賞することができます。
若宮居間にある幾何学模様を描いたステンドグラスの照明。色ガラスの配色が美しく、無着色の部分には凹凸のあるガラスが使用されており、温かみを感じさせます。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」より 宮内省内匠寮《チェーンペンダント照明》
とても可愛らしい金平糖そっくりの星形ペンダントライト。庭園美術館のシンボル的な照明と言えるでしょう。
先ほどと同様にステンドグラスのものですが、こちらから見えない上部にも色ガラスが使用されています。天井に映し出される色づいた光さえも照明の一部のようですね。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」より 宮内省内匠寮《チェーンペンダント照明》
2階の広間に設置されている花のような装飾が美しい照明。
1階部分にも似た図柄があり、照明を含めた一連の階段デザインに、細やかなこだわりを感じます。
今回の展示会では、メインオブジェとして扱われている作品です。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」会場風景
新館ギャラリーでは、美術館所蔵の作品とともに同時代のランプが多数展示されています。
収蔵されている当時のポスターも見どころのひとつです。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」会場風景
常夜灯やパフュームランプが放つ神秘的な光。精妙なデザインが暗闇に映えていました。
他にもエミール・ガレの作品など、一見の価値があるランプが多数展示されています。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」会場風景
温室として屋上階に設置されたウィンターガーデン。本館3階にあり、市松模様の床が特徴的な居室です。
三方を窓に囲まれており、他の部屋とは異なる空に近い風景を堪能できます。
期間限定で鑑賞できる特別な空間です。見逃さないようにしたいですね。
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」会場風景
東京都庭園美術館「建物公開2024 あかり、ともるとき」会場風景
再現展示と自然光を取り入れた今回の展示会は、鑑賞だけでなく「旧朝香宮邸で過ごす」という楽しみもあり、快適で満ち足りた時間を過ごすことができました。
窓から見える景色が大きく変化することから、今回の展示は夏から秋にかけての季節に実施されたそうです。
「あかり、ともるとき」という言葉がぴったりの夕暮れの時間帯、そして秋が深まった頃に、もう一度東京都庭園美術館を訪れたいと思います。