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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
「10分でわかるアート」は、世界中の有名な美術家たちや、美術用語などを分かりやすく紹介する連載コラムです。
作家たちのクスっと笑えてしまうエピソードや、なるほど!と、思わず人に話したくなってしまうちょっとした知識など。さまざまな切り口で、有名な作家について分かりやすく簡単に知ってもらうことを目的としています。
今回は、19世紀後半イギリスで起きた「アーツ・アンド・クラフツ運動」について詳しくご紹介。
「この作品を作った作家についてもう少し知りたい!」「美術用語が難しくてわからない・・・」そんな方のヒントになれば幸いです。
19世紀後半、ロンドンでは技術革新が起こり、産業技術が向上し始めました。
そのことにより、機械でのものづくりが増え大量生産が可能になり、安価な商品が多くなります。
この時代の流れに危機を感じ始めたのがデザイナーのウィリアム・モリス。
「機械はものをつくる労働の喜びをなくし、粗悪な形を作る。」という考えから、基本的な「生活」には「手仕事の美」を取り入れるべきという信念をもとに行動します。
そんなモリスの考えに賛同し、美術家のエドワード・バーン=ジョーンズ、建築家のフィリップ・ウェッブの3名で職人の手仕事を復活させるべく「アーツ・アンド・クラフツ運動」を立ち上げました。
この運動はのちにアール・ヌーヴォーや分離派にも影響を与えることになります。
機械での大量生産に反発し、起きた「アーツ・アンド・クラフツ運動」。
そんな「アーツ・アンド・クラフツ運動」の中心として活動した人物たちを紹介します。
イギリスのロンドン郊外で証券仲買人の子として生まれたモリス。工芸家、装飾家として壁紙やタペストリー、インテリアなどを手掛けました。
近代デザインの道筋を作り、「モダンデザインの父」と呼ばれ、自然の木や草花をモチーフとした作品が代表作です。
「生活に必要なものこそ美しくあるべき」と考えたモリスは職人の手で作り上げる手仕事にこだわりを持ち、手工芸品を復活させる運動、「アーツ・アンド・クラフツ運動」の中心人物として活躍しました。
ウィリアム・モリスについて詳しく知りたい方はこちら。
バーミンガムのメッキ師の息子として生まれたエドワード・バーン=ジョーンズは、モリスの生涯の友人として、彼を一番近くで支えました。
元々は聖職者を目指していたバーン=ジョーンズですが、1855年にモリスとともにフランスを訪れたことがきっかけで、美術家になることを決意。
その後、ラファエル前派で知られるダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828-1882)に弟子入りし、ステンドグラスの下絵などを手掛けます。
モリスが自身や職人の作品を販売するために立ち上げた「モリス商会」の共同設立者となり、商会で扱われたステンドグラスやタペストリー、絵付けタイルなどのデザインを手掛けるようになりました。
1831年、オックスフォードで生まれたフィリップ・ウェッブ。ジョージ・エドマンド・ストリート建築事務所にてモリスと知り合いになります。
建築家としてモリスの活動に賛同し、ともに「アーツ・アンド・クラフツ運動」をともに立ち上げました。
1858年にはアーツ・アンド・クラフツ最高傑作の建築物のひとつである《レッド・ハウス》の設計も担当。
建築様式にこだわらず、地域特有の伝統と材料による合理的な設計で知られ「アーツ・アンド・クラフツ建築の父」と言われています。
1861年、モリスは「モリス・マーシャル・フォークナー商会」を設立。その後、1875年にモリス個人経営による「モリス商会」として再発足しました。
エドワード・バーン=ジョーンズ、フィリップ・ウェッブらほか、数学者たちなど7名ほどが集まり、壁面の装飾やステンドグラス、家具などの室内装飾のデザインや製作を手掛けるように。
モリスの自宅兼工房であったレッド・ハウスは「モリス商会」を始めるきっかけになった建物であり、活動の拠点でもありました。
建築家のフィリップ・ウェッブが設計を担当し、モリスは世界で一番美しい家だと言ったのだそう。
観光地としても人気のレッド・ハウス。現在は一般公開されており、館内では、モリスが友人たちをモデルに描いた絵や、モリスがデザインした植物がモチーフのステンドグラスを見ることができます。
手仕事を復活させるために動きだしたモリス、バーン=ジョーンズ、フィリップ・ウェッブ。
彼らのものづくりへの強いこだわりを感じることができました。
レッド・ハウスを訪れると、より強く当時の彼らの意志が感じられると思います。
【参考書籍】
・池上英洋『いちばん親切な西洋美術史』株式会社新星出版社 2016年
・横山勝彦+半田滋男『改訂版 西洋・日本美術史の基本』株式会社美術出版社 2016年