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5人の現代作家による多彩な作品を紹介。自然と人の関係性を見つめなおす展覧会【東京都美術館】
2024年8月8日
19世紀末にパリで繁栄した「ベル・エポック」。フランス語で「美しき時代」を意味する言葉です。
今回の「10分でわかるアート」では、ベル・エポック期に活躍した芸術家や作品について、詳しくご紹介していきます。
「ベル・エポック」とは、19世紀末から第一次世界大戦が勃発した1914年までの約25年間を指します。
この時期のフランスでは産業の近代化により、パリなどの大都市には人口が流入し、経済成長とともに発展しました。
ボン・マルシェという世界初のデパートが登場し、人びとの消費行動も「必要なものを買う」から「欲望のままに買う」大量消費社会へと移行した時期でもあります。
ボン・マルシェの豪華絢爛な佇まいは、消費者の購買意欲を高めたことでしょう。
また、社会インフラの面でも電話が登場したり、鉄道網が発達するなど整備されていきます。
人びとが豊かになり自由な時間が増えたことで、バカンスを楽しむようになりました。
パリのシンボルであるエッフェル塔も、ベル・エポック期にあたる1889年に建設されました。
パリを中心に繁栄した華やかな文化を象徴しています。
ベル・エポックの栄華は1900年のパリ万国博覧会でピークを迎えました。
ベル・エポック期を代表する人物としては、アルフォンス・ミュシャやアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、エミール・ガレなどが挙げられます。
ミュシャはチェコ出身ですが、35歳のときに当時のフランスを代表する大女優サラ・ベルナールに見初められて6年間の専属契約を結びます。これをきっかけに大ブレイクを果たしました。
ロートレックとミュシャのポスターは、パリの街を華やかに彩りました。
また、エミール・ガレはガラス工芸家としてパリ万国博覧会でグランプリを受賞するなど国際的な評価を得ました。
ベル・エポック期には、象徴主義・印象主義の画家も活躍していました。
ギュスターヴ・モローやオディロン・ルドンなどが有名です。
彼らは、パリで華やかな文化が花開いていく反面、物質的な豊かさや都市生活がもてはやされる風潮に反発し、人間の内面に目を向けた幻想的な作品を数多く描きました。
神話や文学といったモチーフを用いて、目にはみえない精神世界が象徴的に表現されています。
パリ以外で活躍した画家としては、グスタフ・クリムトもいます。
クリムトはオーストリア出身の画家で、女性をモチーフにした妖艶で官能的な作品が特徴的です。
日本の浮世絵や琳派の影響も受けたそうで、金箔をふんだんに使った豪華な絵は金屏風を彷彿とさせます。
そのきらびやかさには誰もが目を惹かれるでしょう。
金箔を多用した「黄金様式」と呼ばれる作品の中でも、《接吻》はクリムトの最も有名です。
東京の丸の内にある、19世紀末西洋美術を中心とした作品が観られる美術館です。
特に、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの作品を多く所蔵しています。
赤レンガの建物は三菱が1894年に建設した「三菱一号館」を復元したもので、歴史を感じる荘厳な外観をしています。
長野県諏訪市にある、諏訪湖のほとりに佇む美術館。
エミール・ガレらのガラス工芸作品が展示されています。
花や昆虫などの自然を主題として生み出された繊細なデザインが魅力的なガレの作品。
自然の姿をあるがままに描写する点は、ジャポニズムの影響もみられます。
美術館内のカフェからは四季折々の諏訪湖の絶景も一望できます。
大阪府の堺市にある美術館。堺市では、故土居君雄氏が収集した約500点にのぼるミュシャの作品を所蔵しているそうです。
堺アルフォンス・ミュシャ館では、ポスターや装飾パネルだけでなく、油彩画、ブロンズ彫刻、宝飾品など多彩なミュシャ作品を鑑賞できます。
サラ・ベルナールのために制作された7点のポスターなど、世界でも貴重な作品が展示されています。
岐阜県美術館は、オディロン・ルドンの作品が鑑賞できる美術館です。
ルドン作品の所蔵数は250点ほどで、日本で一番ルドン作品を所蔵する同館。
世界的にみても、ルドンの作品をこれだけ所蔵している美術館は珍しいです。
ルドンのほか、岐阜県にゆかりのある画家らの日本美術作品も展示されています。
ルドンの作品をたくさん観たい方にはぴったりの美術館でしょう。
ベル・エポックの美術作品は、日本美術とのゆかりが深く馴染みやすい作品が多いです。
近代化により人びとの生活が豊かになっていく中で生まれた華やかな作品がある一方で、人間の内面にフォーカスした作品もみられるなど、多種多様な作品が生み出されたのが興味深いですね。
人気の高い画家のひとりであるアルフォンス・ミュシャはじめ、日本各地の美術館ではベル・エポック期の美術作品を観ることができます。
本記事が、ベル・エポックの美術作品を観る助けになれば幸いです。
参考文献
・フロラン・フェルス『【図説】ベル・エポック 1900年のパリ』 ㈱八坂書房 2016年
・杉本淑彦、竹中幸史『教養のフランス近現代史』㈱ミネルヴァ書房 2015年
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「10分でわかるアート」は、世界中の有名な美術家たちや、美術用語などを分かりやすく紹介する連載コラムです。
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