塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
企画展「北斎バードパーク」/すみだ北斎美術館
こんにちは!
趣味で美術館巡りを楽しんでいる、Sfumart読者レビュアーのかおりです。
今回は両国にあるすみだ北斎美術館の「北斎バードパーク」へうかがってきました。
展覧会の名のとおり、北斎一門の描いた「鳥」に焦点をあてた展示となっています。
バードウォッチング感覚で楽しく見ながら、江戸の人びとがいかに鳥と親密な関係でともに生活し、鳥を愛していたかがわかる展覧会でした。
みなさんは「鳥」というとどんな種類を思い浮かべますか?
すずめ、からす、はと。
日常的に見かけるのはこの3種類でしょうか。
SNSで大人気のシマエナガも外せません。
では、江戸時代はどうだったのでしょうか?
江戸時代には鳥ブームが起こっていたそうで、ペットとして飼われるだけでなく、孔雀茶屋や花鳥茶屋というものもあったそうです。
現代でもインコや文鳥を飼う愛鳥家がいたり、フクロウカフェがあったりするように、江戸時代にも同じように鳥は人びとに愛されていたんですね。動物カフェが江戸時代からあったなんておどろきです!
それではさっそく、江戸時代に活躍した浮世絵、葛飾北斎と門人たちの作品のなかでバードウォッチングしていきましょう。
鶯(うぐいす)。
まさに春の代名詞といえる春告鳥です。
桜のピンクにうぐいすの緑という彩色が綺麗ですよね。
魚屋北溪『狂歌百花鳥』上(後期頁替)
鶉(うずら)。
ころころしててかわいい。
二代葛飾戴斗『花鳥画伝』初編 萩 鶉(後期頁替)
文鳥。
オレンジと緑の配色、文鳥の妙な体勢と辛夷の枝がつくる対角線構図が目を引きます。
葛飾北斎 文鳥 辛夷花(作品を替えて通期展示)
百舌鳥(もず)。※本図右上
鋭い眼光とスピード感あふれる滑空姿が印象的です。
葛飾北斎 鵙 翠雀 虎耳草 蛇苺(前期)
雀(すずめ)。
空を飛ぶちいさく丸いすずめとピンクのあざやかな芙蓉の花が華やかで可愛らしい印象を与えます。
葛飾北斎 芙蓉に雀(前期)
他にも、杜鵑(ほととぎす)に雁(がん)など、普段見かけることはなくても聞いたことはある、という鳥の名前がズラリですね!
江戸時代の人はたくさんの鳥に囲まれて生活していたようです。
描かれる鳥たちは、一瞬の姿や表情、醸し出す雰囲気をしっかりと捉えたものばかり。
写真もない時代にもかかわらず、小さくよく動き遠くにいることの多い鳥、そんな鳥への観察眼、描き出す北斎一門の画力がうかがえます。
江戸時代の人びとの鳥愛は、もちろんグッズにも現れます。
現代の私たちが持ち歩くものとしてはスマホなどがありますが、江戸時代では櫛や煙管(キセル)といったグッズのデザインに鳥があしらわれています。
北斎一門はそんな小物のデザインまで手がけていたんですね!
葛飾北斎 馬尽 駒菖蒲(前期)
着物の柄にも鳥が描かれており、色鮮やかな着物に舞う鳥の姿はまさに洒脱!といった風格があります。
魚屋北溪 三体三番続 真(前期)
そしていちばん私が心惹かれたのは、つるの足跡の模様!
斬新!
肉球はよくありますが、鳥の足跡?!
日常では鳥の足跡を見る機会が少ないので思いもつきませんでした!
かわいい。
ノートの表紙デザインとかにしてほしい。
二代葛飾戴斗『万職図考』三編 霍の脚跡(通期)
好きなもの、かわいいもの、綺麗なものはグッズにして身近に置きたくなる気持ちは、江戸時代も今も変わらないようです。
また、鳥はただ「かわいい」というだけでなく、季節感や心情を表すものとして、さまざまな物語や絵の題材として扱われました。
現代でも、うぐいすが鳴くと春だな、と思うし、カラスが鳴くと不吉な感じを抱きますよね。
江戸時代は、さらにその感度が高い印象です。
葛飾北斎 雪の朝(作品を替え通期展示)
こちらは「雪の朝」という作品。
後朝の別れを描いた1枚ですが、雄鶏を描くことで早朝の時間帯であることを表現しています。
そしてここでこの展覧会でいちばんかわいい絵をご紹介です。
こちら〜!
葛飾北斎『卍翁艸筆画譜』 山鴞(通期)
フクロウちゃんです!
頭巾をかぶったふくろうが居眠りしながら止まり木にとまっています。
フクロウといえば「福を呼ぶ」という幸福の象徴として有名ですよね。
さて、このフクロウにはどういう意味があるのでしょうか?
それはぜひ会場でご確認ください!
展覧会の最後に、北斎の鳥にまつわる逸話として、11代将軍徳川家斉の御前で行なった絵画パフォーマンスが紹介されています。
横長い紙に刷毛で藍の線を引き、かごから出した鶏の足に朱肉をつけて紙の上に放って足跡を残させたそうです。
「竜田川に紅葉」と言われる逸話です。
エンターテイナー!
現代アートのパフォーマンスのようですよね。
すみだ北斎美術館では、2017年になんとこのパフォーマンスの再現を行なったそうです!
そのときの作品がこちら。
向井大祐 勝川ピー 竜田川に紅葉の図 2017(通期)
なんともいえない味がありますよね。
かわいい。
ほっこりする最後の作品でした。
「花鳥風月」という言葉もあるように、日本の絵画でもよく画題とされる「鳥」をテーマに、北斎一門の描くさまざまな「鳥」の姿を、ひいては江戸時代の日本人にとって身近な「鳥」の捉え方について知ることができる展示でした。
現代でもペットとして、キャラクターとして、身近で人気のある「鳥」ですが、江戸時代はそれよりもぐっと濃い、人と鳥との付き合いがあるように感じました。
そして、日常生活のなかで愛をもってアートを楽しんでいる!
そんな風景が浮かびました。
「北斎バードパーク」展では、ご紹介した意外にもたくさんの「鳥」にまつわる視点や発見がたくさんあります。ぜひ新発見を楽しんできてください!
そして、これからの私たちの日常でも、ちょっと「鳥」に注目して日々を過ごしてみませんか?
それでは愉しいアートライフを♪
※前後期で一部展示替えを予定
前期:3月14日~4月16日
後期:4月18日~5月21日