没後10年 映画監督 大島渚

没後10年。今こそ知る映画監督・大島渚【国立映画アーカイブ】

2023年4月24日

国立映画アーカイブにて、展覧会「没後10年 映画監督 大島渚」が開催中です。

本展では、大島監督自らが遺した膨大な作品資料や個人資料をもとに、大島渚の人物像や生き方を探ります。

企画監修には、それらの資料を見つけ、世に出した『大島渚全映画秘蔵資料集成』(2021年)の編著者・樋口尚文(ひぐちなおふみ)氏が携わりました。


『大島渚全映画秘蔵資料集成』(2021年)

同書の構成を踏襲し、国立映画アーカイブ独自のコーナーも加え、大島渚の激動の人生を振り返ります。

映画監督・大島渚とは

映画監督や脚本家として、人生の多くを映画づくりに捧げた大島渚。

京都大学法学部卒業後、1954年に松竹に入社すると、大船撮影所で助監督としてのキャリアをスタートさせ、大庭考雄や野村芳太郎などのもとで研さんを積んだのち、1959年公開の『愛と希望の街』で長編監督デビューを果たします。

監督と脚本を担当した『青春残酷物語』(1960年)では若者の社会への抵抗と挫折を描き、第1回日本映画監督協会新人賞を受賞。

撮影所の同世代の監督とともに「松竹ヌーヴェル・ヴァーグ(*)」と呼ばれました。

代表作に、『儀式』(1971年)、『愛のコリーダ』(1976年)、『戦場のメリークリスマス』(1983年)などがあります。

*松竹ヌーヴェル・ヴァーグ:1950年代末から始まったフランス映画の革新運動にならって、日本のジャーナリズムが松竹撮影所の新進監督たちを呼んだ語。

映画の自由を求め、作品ごとに主題やスタイルを刷新し続けてきた大島渚監督。

日本の映画だけでなく、日本社会そのものに衝撃を与えてきた人物です。

約150点に及ぶ膨大な資料の展示

展示されている約150点に及ぶ資料は、多くが大島渚監督が保管していたもの。

樋口氏は「ムダのない大島作品とは対照的に、“全部遺していた”ところが大島渚監督のアンビバレントさ」だと表現していました。

企画書やセット平面図など、膨大な量の製作資料はもちろん、尋常小学校時代の習字や進学適性検査の受験票、学生時代の創作ノートをはじめ、入院証明書、葬儀写真といった個人的な資料も展示されています。

展覧会を一周することで、膨大な製作資料から大島作品への理解が深まるとともに、1人の人間の出生から晩年までを振り返ることができるのです。

美術監督・戸田重昌の貴重な資料

製作環境が変化する中で大島渚監督が信頼を寄せ、創造の現場を任せたのが、『白昼の通り魔』(1966年)から『戦場のメリークリスマス』に至るまで数々の作品の美術監督を務めた戸田重昌(とだじゅうしょう)。

『戦場のメリークリスマス』の捕虜収容所をはじめ、作品世界を的確に捉える優れた手腕によって、奇抜なアイディアに基づいた異様な造形物でさえも、自然に映画のフレームに溶け込ませる鬼才でした。

戸田重昌に関する資料は、これまで本人が一切を破棄したと伝えられていました。

しかし、何でも残そうとした大島渚監督によってそれらは保管されており、そのいくつかが本展で展示されています。

戸田が携わったコンセプトブックやセットデザイン図などをじっくりと観ることができる、貴重な機会となるでしょう。

たくさんの『戦場のメリークリスマス』の資料に注目

2023年3月末に坂本龍一が亡くなり、再び話題になっている『戦場のメリークリスマス』

本展では、『戦場のメリークリスマス』の映画企画書や東南アジアでのロケハン写真、キャストの契約書など作品にまつわるさまざまな資料も展示されています。

数多くの貴重な資料が展示されているので、『戦場のメリークリスマス』が好きな方にとっては、堪らない空間でしょう。

作品への理解度が深まるうえに、大島渚監督が作品に込めた想いが伝わってくるはずです。

大島作品の映像・楽曲にどっぷりと浸れるスペースも

会場には、大島監督作品劇場予告篇集のほか、大島映画を彩った5人の作曲家たち(眞鍋理一郎、林光、武満徹、三木稔、坂本龍一)の音楽を視聴できるスペースがあります。

大島作品を観たことがない人は、予告映像を観たり音楽を聴いたりし、気になった作品を観てみるのも楽しみ方のひとつです。

『愛のコリーダ』の音楽構成表や数々のレコードなどが展示された、音楽ファン必見のスペースもあります。

大島渚と写真が撮れる撮影スポットも!

会場内には、大島渚監督のパネルのほか、監督本人が遺した“名言”の垂れ幕があります。

垂れ幕は会場のあちこちに飾ってあり、中にはドキリとする言葉も。

こちらは写真撮影可能のスペースとなっているので、訪れた記念に、ぜひ大島渚監督と並んで映ってみてくださいね。

没後10年の今知る、大島渚監督

大島監督がつくる映画のように壮絶で、“アクシデントを楽しんできた”人生は、過去に大島作品に触れたことがある人はもちろん、まだ作品を観たことがない人も、楽しめる構成となっています。

没後10年という節目だからこそ、大島渚を知ることができる展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか。


『愛のコリーダ』フィルム断片(1976年)

展覧会が終わる頃には、大島渚という人間の紆余曲折を少しだけ理解できた気がします。

展覧会と並行した上映企画も開催中!

展覧会企画と並行して、企画上映「没後10年 映画監督 大島渚」も開催中。

こちらも、ぜひ展覧会とあわせて楽しんでみてください。

※詳細は、国立映画アーカイブ公式サイトをご確認ください。

Exhibition Information

展覧会名
没後10年 映画監督 大島渚
開催期間
2023年4月11日~8月6日 終了しました
公式サイト
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/nagisaoshima2023/