モネ、ルノワール 印象派の光/松岡美術館

モネやルノワールなどフランスの印象派・新印象派が一堂に【松岡美術館】

2023年7月3日

モネ、ルノワール 印象派の光/松岡美術館

港区白金台の閑静な住宅街に建つ松岡美術館。実業家・松岡清次郎氏が集めた古今東西の美術品を所蔵・公開する美術館です。

現在、同館では「モネ、ルノワール 印象派の光」展が開催中です。

本展では、松岡美術館が所蔵するクロード・モネや、ピエール=オーギュスト・ルノワールをはじめとする、フランス印象派・新印象派の絵画を一堂に紹介します。

実業家・松岡清次郎氏と印象派絵画

松岡美術館の創設者・松岡清次郎氏は、貿易業を手始めに、冷蔵倉庫業やホテル経営、教育事業、不動産賃貸業といった人びとの生活に関わる事業を多く手がけました。

なかでも、大正12年に創業し、2023年に創立100年周年を迎えた松岡冷蔵は、日本の食品コールドチェーンのパイオニア的存在として、広く知られています。


(左から)クロード・モネ《エトルタの波の印象》1883年/ウジェーヌ・ブーダン《海、水先案内人》1884年 いずれも、松岡美術館蔵

常に未来を見据え、さまざまな事業を発展させてきた清次郎氏。清次郎氏が、西洋画をコレクションし始めたのは、晩年からと言われています。

清次郎氏が、印象派の絵画に惹かれたのは、画家たちの生活への眼差しや、現状を見据え新たな表現を生み出そうとする心意気にシンパシーを感じたからなのかもしれません。

松岡美術館では、121点の西洋画を収蔵しています。本展では、そのうち37点を展示。

2階の展示室5、6を使って印象派から新印象派までの流れを、ていねいに紹介しています。


(左)アンリ・マルタン《ラバスティド=デュ=ヴェールの教会》
(右)アンリ・マルタン《ラバスティド=デュ=ヴェール、ロット県》1920-30年代
いずれも、松岡美術館蔵

今回は、本展担当学芸員の山口翼学芸員に、展覧会の見どころをいくつか説明いただきました。

ここでは、展示で注目してみてほしい点などを中心に紹介していきます。

ノルマンディ地方の観光名所「エトルタのがけ」


クロード・モネ《エトルタの波の印象》1883年 松岡美術館蔵

フランス北西部に位置するノルマンディ地方は、世界遺産モン・サン=ミシェルなどで知られる観光地です。

ノルマンディのなかでも画題としてよく観られるのが、モネやクールベを魅了した「エトルタ」という英仏海峡に面した街です。

自然が生んだ彫刻とも表現される白い巨大ながけは「エトルタの断崖」と呼ばれ、その自然が創り出した雄大な景色は、19世紀末に鉄道が引かれると、中心地パリから避暑や週末の小旅行に訪れた人びとで賑わいを見せるようなります。


ギュスターヴ・ロワゾー《エトルタの断崖》1902年 松岡美術館蔵

本展では、エトルタのがけを描いた作品を2点紹介しています。

1枚目は、モネが描いた《エトルタの波の印象》。2枚目は、ロワゾーの《エトルタの断崖》です。

この2つの作品の面白いところは、エトルタ海岸の左右両側にある断崖をそれぞれ描いているところ。モネが描いたのは海岸右手にあるアモンの断崖、ロワゾ―が描いたのは左手にあるアヴァルの断崖です。

展示室内では、2作品が対面に展示されており、その中間に立つと疑似的にエトルタ海岸を楽しむことができます。

そんなユニークな展示方法にも注目です。

清次郎が好んだ印象派の画家ギヨマン


展示風景

松岡美術館が所蔵する印象派コレクションの中でも、ひと際目立つのが、アルマン・ギヨマンの作品です。

ギヨマンの作品は、どれも鮮烈な色彩が特徴です。印象派の画家ながら、アンリ・マティスなどの「フォーヴィスム」の作品と並んでも、違和感を感じさせないほど、鮮やかな色彩です。

清次郎氏は、ギヨマンのほかにもドンゲンやヴラマンクなどの作品も、多くコレクションしています。

おそらく清次郎氏は、ギヨマンの作品のような色彩を好んでいたのでしょう。

新印象派の画家の作品も充実!

1884年5月、独立芸術協会設立に先立ち開かれた最初のアンデパンダン展で、新印象派を代表する画家ジョルジュ・スーラは《アニエールの水浴》を発表しました。

感覚的であった印象派の筆触分割を科学的な表現に昇華し、細かな点描法で描かれたスーラの作品は、シニャックやクロッスなどの多くの画家たちの賛同を得て、「新印象派」というグループを形成しました。

しかし、残念ながら、スーラは31歳の若さで亡くなってしまいます。

新印象主義はシニャックたちによって引き継がれ、明るさや鮮やかさを強調した色彩表現へと移行していきました。


ポール・シニャック《オレンジを積んだ船、マルタン》1923年 松岡美術館蔵

シニャックの作品《オレンジを積んだ船、マルセイユ》。

シニャックは生涯で30艘以上の船を所有していたといいます。

そんな船が大好きなシニャックならではの作品です。間近で観ると、モザイクタイルのような本作。計算された色づかいにうっとりしてしまいます。

 

松岡美術館が所蔵するフランスの印象派・新印象派の絵画を一堂に紹介する本展。

印象派の作品が好きな方はもちろん、展示解説も充実しているので、美術初心者の方も十分に楽しめる展覧会でした。

8月15日からは、本展のメインビジュアルにも使用されている、ルノワールの《リュシアン・ドーデの肖像》の展示もスタートします。

こちらもお見逃しなく。


ピエール=オーギュスト・ルノワール《リュシアン・ドーデの肖像》1879年
※8月15日より展示

さらに松岡美術館では、本展と一緒に「江戸の陶磁器 古伊万里展」(展示室4)や、「古代オリエント 創造の源」(展示室1、本展のみ2024年2月11日まで開催)も開催中です。

松岡清次郎氏の集めた優品の数々を、ゆったりと松岡美術館で堪能してみては?

 

 

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Exhibition Information

展覧会名
モネ、ルノワール 印象派の光
開催期間
2023年6月20日~10月9日 終了しました
会場
松岡美術館
公式サイト
https://www.matsuoka-museum.jp/
注意事項

※会期中展示替えあり
前期展示:6月20日~8月13日
後期展示:8月15日~10月9日

【同時開催】
・展示室4「江戸の陶磁器」