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2024年11月1日
野又 穫 Continuum 想像の語彙/東京オペラシティ アートギャラリー
これは、現実なのか非現実なのか。どこか昔懐かしい記憶が呼び覚まされるような、独特な世界を描くのは、画家・野又穫(1955-)です。
現在、東京オペラシティ アートギャラリーでは、同館の企画展示室で初めてとなる個展「野又 穫 Continuum 想像の語彙」が開催中。
本記事では、広々とした空間に、初期から最新作まで、野又の作品が一堂に会する本展を紹介します。
野又穫は、東京藝術大学デザイン科でデザインを学んだ後、広告代理店のアートディレクターとして就職。デザイナーとして勤務する傍ら、絵画制作に取り組んできました。
1986年、佐賀町エキジビット・スペースでの初個展「STILLー静かな庭園」を皮切りに、いくつかの個展を経て、独立。その後は「知る人ぞ知る」作家として、熱心なファンの注目を集めていきました。
そんな野又の名が世界で知られるようになったのは、2020年。
イギリスの有名ギャラリー「ホワイト・キューブ」でオンライン個展を開催後、同ギャラリーへの所属が決まったのです。
きっかけは、2004年に東京オペラシティ アートギャラリーで、ヴォルフガング・ティルマンス(※)展と同時に開催されていた野又の個展「カンヴァスに立つ建築」を、同ギャラリーのディレクターが観に来ていたこと。
16年の時を経て、国際的に注目される作家となったのでした。
(※)ロンドンとベルリンを拠点に活動するドイツ出身の写真家。
野又が描く世界観は、目の前に広がる見知らぬ風景に、不思議な建造物がそびえたつ、なんとも独特なもの。ですが、どこか懐かしさを感じられ、架空の光景と一言で片付けることのできない絵画作品ばかりです。
野又穫《Forthcoming Place-5 来たるべき場所 5》1996年 野又穫蔵
東京オペラシティ アートギャラリーのコレクションの寄贈者である寺田小太郎氏(1927-2018)は、そんな野又の作品を心から愛していました。
1980年代から毎年収集を続け、現在同館は、野又の代表作40点あまりを収蔵する、最大の所蔵館となりました。
野又穫《Babel 2005 都市の肖像》2005年 東京オペラシティ アートギャラリー蔵
そんな野又と同館の長年の深い繋がりから、今回の個展の開催が決まったのです。
初期の絵画作品から、いつの時代か分からない謎めいた建造物を描いている野又ですが、それは作りかけなのか、はたまた朽ちていくようすを描いているのか。正しい答えはなく、鑑賞者の想像に自由に委ねられています。
野又穫《Still-25 静かな庭園 25》1986年 野又穫蔵
1990年代に入ると、野又の描く建造物は大型化し、結合した大地と人工物が高くそびえたつ、独特な姿が表現されます。
野又穫《Land-Escape 10 境景 10》1992年 東京オペラシティ アートギャラリー蔵
さらに、1990年代後半からは、船の帆や風車、気球といったように、何かの機能を備えたような工業的な構造物も描かれるようになりました。
野又穫《Windscape-20 風見の地 20》1997年 東京オペラシティ アートギャラリー蔵
相変わらずこれらの絵画に描かれる構造物は、誰が何のために建てたのか謎のまま。ですが、鑑賞者の想像力を掻き立てるものといえるのではないでしょうか。
さまざまな建造物を描き続けてきた野又ですが、2011年の東日本大震災がその制作に大きな影響を与えます。
自然の力によって、建造物があっという間に破壊されるようすを見たことで、一時期キャンバスに描くことができなくなったといいます。
そんな時期に、水彩と鉛筆を使用し、紙面上に描いた作品が《Square Drawing》です。
野又穫《Square Drawing》2011-2015 野又穫蔵
野又にとって、大切なものは果たして何なのか、一つひとつ考えながら丁寧に描いたこのシリーズを経て、再び絵画作品に着手。
そして2023年、最新作《Continuum》シリーズが完成しました。
野又穫《Continuuum-1》2023年 野又穫蔵
本展では、初期からの野又の心情の変化も、作品を通じて感じられると思います。
また、展示作品の横にあるのは数字のみで、キャプションは一切なし。これも鑑賞者の想像力に委ねられているからです。
野又の作品のほとんどが1mを超える大きなものですが、アートギャラリーは広々とした展示空間なので、ゆったりと想像しながら鑑賞できます。
現実と非現実の境界線を行き来しているような、不思議で独特な世界が広がる、「野又 穫 Continuum 想像の語彙」。
初めての方も、なぜか懐かしさを感じてしまうような作品ばかりです。美術ファンのみならず、デザイン好きや建築好きの方も楽しめるはず。
そんな不思議な世界を、ぜひあなたも体感してみませんか。