塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開/アーティゾン美術館
公益社団法人石橋財団アーティゾン美術館にて、「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」が開催中です。
本展では、抽象絵画の誕生から発展、そして現代までの動向をおおよそ1960年代までのフランスを中心とするヨーロッパ、アメリカ、日本の作品を通してみていきます。
石橋財団コレクションの新収蔵作品95点を含む約150点と、フランスのポンピドゥー・センターなど、国内外の美術館や個人コレクションなどから約100点を加えた、約250点をアーティゾン美術館全体を使った大規模で贅沢な展覧会。
ここでは、本展の魅力を紹介します。
セクション1 展示風景より
展示の始まりである6階の展示室に足を踏み入れると、「抽象絵画の源泉」ともなった画家たちの作品が私たちを出迎えます。それぞれの絵画から放たれる存在感には思わず息を呑むほど。
さて、今回の展示のメインテーマともいえる「抽象絵画」。
抽象絵画とは、「対象を具体的に描写するのではなく、色や線、形などに視点をおいて描かれる表現」です。つまり、色や形自体が持つ表現力によって観るものに影響を与えようとする芸術といえます。
セクション2 展示風景より
そして、抽象絵画を語る上で欠かせないのがフォーヴィスムとキュビスム。
フォーヴィスムやキュビスムは19世紀末のパリ、あらゆる分野で新しいものが誕生し、平和が続いた時代とされる「ベル・エポック時代」に芽吹きました。
当時、目にうつるありのままを描写する「写実主義」が主流だった美術界において、フォーヴィスムは「色彩による革命」、キュビスムは「形態による革命」として絵画の考え方を根本から問い直す大革新だったといわれています。
セクション2 展示風景より
展示の序盤のセクションでは、フォーヴィスムの活動の中心人物であるアンリ・マティス、キュビスムの創始者ともいえるパブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック、そして抽象芸術の源泉ともなったポール・セザンヌなどの貴重な作品が展示されます。
そんな絵画の数々から、抽象芸術の誕生を感じることができるでしょう。
(左)フランティセック・クプカ《赤い背景のエチュード》1919年頃
(右)ロベール・ドローネー《街の窓》1912年 いずれも、石橋財団アーティゾン美術館蔵 新収蔵作品
抽象絵画の創始者であるヴァシリー・カンディンスキー、パウル・クレー、ロベール・ドローネー、フランティセック・クプカ、ジョージア・オキーフらの初期作品をはじめとする新収蔵作品95点が公開される本展。
それだけではなく、フランスのポンピドゥー・センター、アメリカのフィリップ・コレクションなどの海外美術館や個人コレクション、そして国内美術館から集められた選りすぐりの作品も展示されており、今回だからこそ叶う贅沢な展示内容も魅力の一つです。
セクション3 展示風景より
ヴァシリー・カンディンスキー《自らが輝く》1924年 石橋財団アーティゾン美術館蔵 新収蔵作品
抽象絵画の潮流は同時期の日本にも。岡本太郎や長谷川三郎など日本における抽象絵画についての作品も同時展示されており、日本と西洋における作風の違いも楽しめます。
セクション4 展示風景より
セクション11 展示風景より
4階の展示室にはいるとアンス・アルトゥング、ピエール・スーラージュ、ザオ・ウーキーら抽象絵画の興隆を担った巨匠たちの晩年に焦点を当てた作品が展示されます。
巨匠たちの作品だけあって、展示室に足を一歩踏み入れただけでパッと空気感が変わるのを肌で感じることができます。
セクション11 展示風景より
最後のセクションでは、今までの抽象表現を受け継ぎながらも現代における新たな抽象表現を生み出す現代作家たちの作品が展示されます。
「具象的なものから抽象的なものへ変わる瞬間に注目し作品を作成した」という鍵岡リグレ アンヌ、「目に見えないもの、不確かなものをどのようにして作品に落とし込むかをテーマに作品作りに望んだ」という横溝美由紀など7人の現代作家たちの作品を味わうことができます。
鍵岡リグレ アンヌ《Reflection p-10》 2023年 作家蔵
セクション12 展示風景より
セクション12 展示風景より
セクション12 展示風景より
抽象絵画の魅力が存分につまった「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」。
約250点にもおよぶ大規模な展覧会なだけあって、鑑賞時間は余裕を持って確保した方がよいかもしれません。
なんと本展は学生は無料で入館できるとのこと(高校生以上要ウェブ予約)。本記事で紹介しきれなかった魅力もたくさんありますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。