風刺画/10分でわかるアート
2023年3月29日
体感型古代エジプト展 ツタンカーメンの青春/角川武蔵野ミュージアム
こんにちは。
趣味で美術館巡りを楽しんでいる、Sfumart読者レビュアーのかおりです。
もうすぐ夏休み。
この夏は古代エジプトへ時空を超えてトリップしてみませんか?
今回は大人もこどもも楽しめる、夏休みの思い出作りにも自由研究にもぴったりな、角川武蔵野ミュージアムで開催中の「体感型古代エジプト展 ツタンカーメンの青春」をご紹介します!
展覧会を鑑賞する前、本物の発掘品や美術品はひとつもない展覧会だと聞いて驚きました。
展示されるのは、世界に3セットしかないという「超複製品(スーパーレプリカ)」。そして本物をスキャニングした高精細デジタルデータをもとに制作されたプロジェクションコンテンツをはじめとした映像コンテンツ。
どんな展覧会になるんだろう。
実際に展示を見て、そんな気持ちは吹き飛びました!
臨場感たっぷりで、「体感する」とはこのことか! という圧巻の展示でした。
た の し い ! !
また、この展覧会のコンセプトは「HISTORYはSTORYだ!」。
はるか古代の夭折のエジプト王という遠い歴史上の人物としてではなく、生身のひとりの人間であると捉えて構成された展示に、ツタンカーメンがぐっと身近に感じられるようになりました。
この興奮を読者のみなさんにも是非とも味わっていただきたいです!
明るい外から2階のエントランスを経て1階の会場へ降りていくところから、古代エジプトへの旅がはじまっています。
次第に暗くひんやりしてくる館内。
階段を降りてすぐのホワイエでは、実際のエジプトの風景をスキャニングしたデータを元に作られたプロジェクションコンテンツが流れます。
研究データを元に作られたというピラミッド内部の映像も映し出され、ドキドキ!
本展の監修、河江肖剰氏のイントロダクションを経て、いよいよ、100年前のツタンカーメン発見の現場へ、さらには古代エジプトの世界へ誘われます。
▲冒険がはじまる予感ビシバシな入り口
会場に入るとすぐに、ツタンカーメンの王墓を再現したエリアがあります。
ツタンカーメンの王墓を発見した考古学者ハワード・カーターが壁の穴から副葬品をみつけた瞬間を追体験できるのぞき穴があります。
そして2体の「番人の像」のあいだを通った先には大きな石棺が。石棺の横をとおって、ついにメインの展示会場、古代エジプトへトリップします。
▲「番人の像」の先に石棺が!
一気に開ける大広間には、巨大な厨子や人型の棺、黄金のマスクに目を奪われます。
▲迫力の巨大厨子3体の先には人型の棺、黄金のマスクが並ぶ
ツタンカーメンは4つの厨子と3つの人型棺の中に収められていたそうで、展示では第2〜第4の厨子と3つの人型棺が展示されています。
レプリカなのでごく近い位置からじっくり見ることができます。
人型棺は真上からも見られるように設置されているので要チェックです!
▲こんなに間近でツタンカーメンの棺が見れるなんて!写真撮影もOKです
そして会場中央には、古代エジプトの風景や副葬品などからつくられたイメージ映像がプロジェクションコンテンツで映し出されます。
▲音楽と映像、スーパーレプリカの相乗効果で迫力満点なプロジェクションコンテンツ
プロジェクションコンテンツの前の方にいると吸い込まれるような臨場感があるので、ぜひ近づいて見てみることをおすすめします。
会場では、プロジェクションコンテンツに連動した音声ガイドを無料で聞くことができます。スマートフォンとイヤホンを忘れずに持ってきてくださいね!
さて、迫力ある中央の展示への興奮が落ち着いたら、じっくり各章の展示を見ていきましょう。
まずはツタンカーメンの日常を。
「古代エジプトの少年王」として世界に知られるツタンカーメン。
8〜9歳のときに即位、結婚と子供の誕生(そして死別)があり、19歳で没したという歴史的事実があるわけですが、現代の私たちの生活に照らし合わせて考えてみると、青春期にそれらすべてを経験しているわけで、古代エジプトの厳しい環境をひしひしと感じます。
一方で、副葬品からうかがい知れる豊かな日常もあります。
大理石の床に、古代エジプトの壁の模様、きらびやかな装飾品。
黄金の玉座の背にはツタンカーメンと妻が描かれており、仲睦まじい様子がうかがえます。
ツタンカーメンは足が悪く、副葬品からは130本もの杖がでてきたことから、普段から杖を手放せなかったであろうと推測して、玉座には杖が立てかけられています。
▲副葬品から蘇るツタンカーメンの日常イメージ
▲金銀にきらめく色とりどりの輝かしい装飾品の数々
椅子に杖を立てかけるなんて、本物の副葬品だったらもってのほか!
装飾品もこんなに間近で当時の輝きそのままにガラスケースごしではない状態で見ることはできないでしょう。
本展は「レプリカ」ということを活かして、当時のままの姿を再現したかのような、私たち観覧者がイメージしやすいかたちで再現された展示となっており、当時のようすに想像が広がります。
古代エジプトの死生観を表したものとして最も知られているのがミイラです。
ツタンカーメンのミイラは14層の包帯で包まれていて、その各層に財宝が詰め込まれていたそうで、層ごとに発見された副葬品が展示されています。
▲包帯の各層に副葬されていた装飾品の数々と調査時のスケッチ
死後の世界で墓の主に仕えるよう副葬された、人の姿をした小さな像「シャブティ」も展示されています。
▲死後の世界でファラオに仕えるシャプティたち
また、ツタンカーメンとともに埋葬されていた、ツタンカーメンの双子の娘のミイラも展示されていました。レプリカとはいえ、小さな2体のミイラには胸が痛みます。
死後の世界で家族が仲良く穏やかに暮らしていることを願わずにはいられません。
ツタンカーメンやミイラ以外にも、古代エジプトの文字である「ヒエログリフ」や、古代エジプトの宗教についても解説されています。
ヒエログリフの解読方法についても解説されているので、ぜひ解読してみてください!
副葬品に記されたヒエログリフについても解説されているので、展示されている副葬品と見比べてみるのもおもしろいですね。
▲「ツタンカーメン」のヒエログリフ表記がこちら。かわいい
また、宗教観についても知ることで、古代エジプトを厚みを持って見ることができます。
古代エジプトの宗教は多神教のイメージが強いですよね。しかし、ツタンカーメンの父であるエンアデンによる一神教への宗教改革がありました。こうした宗教観の揺れ動きについても解説されています。
▲古代エジプトの多神教の神々
▲一神教を信仰するエンアデン王一家
展示物を見たり解説を読んだりしながら、ツタンカーメンが生きた時代に思いを馳せていると、展覧会場に入る前と後では、古代エジプトとツタンカーメンへの理解度が体感として変わっている実感がありました。
じっくり古代エジプトの世界に浸ったあとは、企画展限定のミュージアムグッズやコラボメニューで余韻を味わいたいですよね。
ミュージアムグッズには個性的なものがたくさん!
私が気になったのは「木製ポストカード」!
ぜひお手にとってみてください。ほんとに木なんです!厚みも2mmほどあって、表面がでこぼこしていて味があります。お揃いの柄のボールペンもあるんです。
▲珍しい木のハガキ!お手にとってみてください
そして、古代エジプト文字「ヒエログリフ」があしらわれたトートバッグにアクリルチャームも!
▲ころんと丸いチャームにかわいい古代エジプト文字のヒエログリフが!
▲なんて書いてあるのか解読したくてうずうずしますね!
さらには、ところざわサクラタウン内にある神社、武蔵野坐令和神社の本展覧会をモチーフにした御朱印まで。
▲本展覧会仕様の御朱印
見終わったあとは、ツタンカーメンなど古代エジプトの象徴的な図柄がプリントされたプリントラテでゆっくりお茶してはいかがでしょうか?
▲ラテもコラボメニューも気になる!
超複製品(スーパーレプリカ)ならではの臨場感ある展示と、最新の研究データを元に作成されたプロジェクションコンテンツ、そして死生観や文字、宗教なども深掘りした展示で、頭と体のまるごと古代エジプトを体験できた展示でした。
この展覧会をきっかけに、将来の古代エジプト研究者の卵がうまれるかもしれませんね。
暑い夏。
涼しい館内で古代エジプトの世界にどっぷり浸ってみませんか?
それでは愉しい古代エジプト旅を♪