2021年10月20日

旅を愛した木版画画家・川瀬巴水の全貌を紹介。新宿でプチ旅行気分♪

川瀬巴水 旅と郷愁の風景/SOMPO美術館


芝増上寺『東京二十景』より 1925(大正14)年 渡邊木版画美術画舗

大正から昭和の時代にかけて活躍した木版画画家、川瀬巴水(かわせ はすい/1883₋1957)

日本全国を旅して、四季折々の風景画をたくさん描いた巴水は、江戸時代の浮世絵に新時代の画風や技法を使った「新版画」を確立させて人気を博します。

彼の作品によって、日本の風景や木版画が海外にも広く知られるようになりました。

本展では、初期から晩年までの木版画作品より、ふだんはまとめて見る機会の少ないシリーズ(連作)を中心に紹介。生涯で残した600点を超える木版画作品の中から厳選した280点を、前期・後期と一部作品を入れ替えて展示します。

※展覧会詳細はこちら

大の旅好き!木版画画家・川瀬巴水とは?

川瀬巴水(本名:川瀬文治郎)は、1883年に現在の東京都港区新橋にある糸組物(いとくみもの)職人の家の長男として生まれました。

幼いころから絵を見たり、描いたりするのが大好きだった巴水。6歳のころには、絵草紙屋(えぞうしや)へ通い、売られている本の絵をよく見ていたといいます。14歳のころには、画家になることを夢見ていました。

しかし、長男として家業を継ぐように期待されていたため、画家になることは反対されていました。

父の仕事の失敗によって傾いた家業を継ぐことになった巴水ですが、まったく商才がなかったそう。そのため、家業は妹夫婦に任せて、巴水は画家デビューを果たました。

*糸組物:糸を組み合わせて作る手芸品を作る職人のこと。
*絵草紙屋:江戸時代にあった本屋のこと。芝居の役者の絵などが入った本などが売られていました。

木版画画家を目指したきっかけと処女作「塩原三部作」

念願の画家となった巴水の年齢は25歳でした。

かねてよりあこがれていた日本画の有名画家・鏑木清方への弟子入りを希望しますが、清方からは「日本画の修行には年を取りすぎている」と断られ、代わりに西洋画を勧められます。

勧められたとおり、巴水は西洋画を習い始めますが油絵になじめず・・・2年後ふたたび清方に相談。念願かなって彼のもとで修業に励むこととなりました。

そんな巴水と木版画の出会いは、同じく清方のもとで学んでいた15才年下の伊東深水(いとう しんすい)が描いた風景画の木版画だったそうです。彼の風景木版画の連作に感動し、これをきっかけに木版画画家の道に進むことになりました。


(左から)《塩原おかね路》1918(大正7)年秋/《塩原畑下り》1918(大正7)年秋/《塩原しほがま》1918(大正7)年秋 いずれも、渡邊木版画美術画舗

「塩原三部作」と呼ばれる《塩原おかね路》《塩原畑下り》《塩原しほがま》は、巴水の版画家としての処女作です。

塩原には巴水の伯母夫婦の家があり、幼いころ何度も訪れていました。そのため、巴水にとって塩原は「第二のふるさと」として思い入れのある土地だったといいます。

芝居のような物語性を感じる巴水の風景木版画


(左から)五月雨ふる山王『東京十二題』より 1919(大正8)年/こま形河岸『東京十二題』より 1919(大正8)年初夏 いずれも、渡邊木版画美術画舗

《こま形河岸『東京十二題』より》は、巴水が36歳のときの作品です。東京浅草の竹屋に並べられた竹のすき間から隅田川が見えます。

竹を運ぶための馬車の荷台には、一仕事を終えた男性が寝ている姿が描かれています。

5歳のころから母によく芝居見物に連れて行ってもらっていた巴水。人物が描かれた巴水の風景画には、どこか芝居のような物語性を感じます。

巴水とともに日本全国を巡るシリーズ(連作)

巴水の木版画の多くは、ふるさとの東京や旅先で描いた風景を、シリーズ(連作)という形で制作しました。

このシリーズ(連作)は、江戸時代の浮世絵木版画では「揃物(そろいもの)」と呼ばれていました。大ヒットした作品として広く知られているものに、歌川広重の『東海道五十三次』(1833₋34)があります。

揃物には、木版画を1枚ずつ比べたり、集めたりする楽しみがありました。また、それを売る版元にとっては、ヒットすれば大きな利益になる魅力的な商品でした。


北海道洞爺湖『日本風景集 東日本篇』1933(昭和8)年11月 渡邊木版画美術画舗

巴水のシリーズ(連作)は、従来の展覧会では選定された作品を展示することが多いですが、本展では、代表的なシリーズを可能な限りまるごと展示。巴水作品とともに日本全国をプチ旅行できる、貴重な機会となっています。

あのジョブズも愛した!巴水の木版画

Apple・コンピュータの共同創業者であり、企業家として世界的に有名なスティーブ・ジョブズ(1955₋2011)。彼も巴水の新版画のファンのひとりでした。

本展では「スティーブ・ジョブズと巴水」の特設コーナーを設け、巴水が現代でも多くの人びとに愛されていることを紹介します。


(左から)《富士之雪晴(忍野附近)》1952(昭和27)年/《西伊豆木負》1937(昭和12)年6月/《上州法師温泉》1933(昭和8)年12月 いずれも、渡邊木版画美術画舗

1983年、当時28歳のジョブズは、東京に訪れた際に《西伊豆木負》という作品を購入しました。

本作は、それまで伊東深水などの美人画を収集していたジョブズにとって、巴水の風景画に関心が広がっていくきっかけになった作品だそうです。

ここでは、ジョブズが購入したものと同じ作品を展示。現代人にも愛される川瀬巴水の魅力に、さらに詳しく迫ります。

 

日本の木版画のすばらしさを世界に伝え続け、伝統的な木版画の高度な技術を後世に残した巴水。生涯で600種類以上の風景版画を生み出しました。

ギネス世界記録®で「世界でもっとも忙しい駅」に認定された新宿駅に建つSOMPO美術館で、ゆったりと懐かしくも美しい、日本の原風景を楽しんでみてはいかがでしょうか。

※「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」出品リストはこちら(PDF)

Exhibition Information

展覧会名
川瀬巴水 旅と郷愁の風景
開催期間
2021年10月2日~12月26日 終了しました
会場
SOMPO美術館
公式サイト
https://www.sompo-museum.org/
注意事項

※会期中に一部展示替えあり
【前期】10月2日(土)~11月14日(日)
【後期】11月17日(水)~12月26日(日)