ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン/アーティゾン美術館

石橋財団コレクション×山口晃。サンサシオン=感覚で体感する美術とは【アーティゾン美術館】

2023年9月25日

山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン/アーティゾン美術館

アーティゾン美術館(東京・京橋)にて、「ジャム・セッション 山口晃」が開催中です。

アーティゾン美術館のコンセプト「創造の体感」を体現する展覧会であるジャム・セッション。毎年1回開催されています。

ジャム・セッションでは、同館の学芸員とアーティストが共同して、石橋財団コレクションの特定の作品からインスパイアされた新作や、コレクションとアーティストの作品のセッションによって生み出される新たな視点による作品を紹介します。

鴻池朋子でスタートを切り、2回目に森村泰昌、3回目は柴田敏雄と鈴木理策の2名で構成。そして4回目となる本展では、山口晃と石橋財団コレクションがセッションします。


山口晃

日本の近代絵画と向き合う山口がジャム・セッションの対象として選んだのは、雪舟《四季山水画》とセザンヌ《サント=ヴィクトーワール山とシャトー・ノワール》。

雪舟に基づくインスタレーション作品やセザンヌに理解を向けた山口流セッションに注目です。

画家・山口晃の頭の中を大解剖?
山口が“見る”石橋財団コレクション


(左)山口晃《来迎圖》2015年、作家蔵
(右)山口晃《大屋圖》2023年、作家蔵

今回、石橋財団コレクションとセッションする山口晃は、日本の伝統絵画様式を用いて、油絵という技法を使って描かれる作風を特徴とする画家、現代美術家です。

2013年には『ヘンな日本美術史』で第12回小林秀雄賞を受賞。絵画や立体、漫画やインスタレーションなど多岐にわたる表現方法で、国内のみならず海外にも活躍の場を広げています。

そんな広い視野を持った山口晃と、西欧の近代絵画と日本の近代絵画と幅広い作品を所蔵する石橋財団コレクションがセッションする本展。

現在約3,000点を数える同コレクションの中から山口は、雪舟《四季山水図》とセザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》を選びました。


(左)山口晃《オイル オン カンヴァス ノリバケ》2023年、作家蔵
(中央)雪舟《四季山水画》室町時代 15世紀、石橋財団アーティゾン美術館蔵 重要文化財


(左)ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06年、石橋財団アーティゾン美術館蔵
(右)ポール・セザンヌ《帽子をかぶった自画像》1890-94年頃、石橋財団アーティゾン美術館蔵

セザンヌの作品とのセッションにあたり、山口は作品を理解するために、本作を「模写」したいと学芸員に頼んだと言います。

本展タイトルに使われている「サンサシオン」は「感覚」を表すフランス語で、セザンヌが制作について語る話によく出てきます。

模写という作業の中で生まれた山口晃の感覚で“見る”《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》を、ぜひ会場で体感してみてください。


山口晃《セザンヌへの小径(こみち)》2023年、作家蔵

また、2023年11月19日までは、えんぴつでのデッサンが可能とのこと。ただしデッサン禁止マークのついている作品を除きます。

美大生はもちろん、絵を描くことが好きな方などは、この機会にぜひアーティゾン美術館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

話題作の原画も初公開


山口晃《東京圖1・0・4輪之段》2018-2023年、作家蔵

NHK大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺~」(2019年)のオープニングタイトルバック画となった《東京圖1・0・4輪之段》などの話題を呼んだ作品の原画も、本展で初めて公開します。


山口晃《日本橋南詰盛況乃圖》2021年、作家蔵

また、2021年7月に完成した東京メトロ日本橋駅のパブリックアート《日本橋南詰盛況乃圖》も展示。


山口晃《当世壁の落書き 五輪パラ輪》(部分)2021年、作家蔵

《当世壁の落書き 五輪パラ輪》には、東京2020年パラリンピックのポスターとなった《馬からやヲ射る》を描いた際の山口の心境がつづられています。

普段の細かなところまで描く精緻なタッチとは違い、ゆるく流れる筆致で描かれる山口の心の中をじっくり読んでいると・・・思わずクスッと笑ってしまうところもありました。

文量もありますので、展示室では読み切れない!という方は、併設ミュージアムショップにて販売中の公式図録の購入をおすすめします。


「山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」カタログ 2,200円(税込)

ポスターによく使われるA3サイズの大判な公式図録。展示作品のほかにも、期間限定の特別企画として、山口によるインスタレーション・アートがデジタル画像で楽しめるQRコードも付いています。

※デジタル画像の閲覧期間は、2023年9月15日〜2026年9月15日まで。

オンラインショップもありますので、遠方の方はこちらをご覧ください。

アーティゾン美術館オンラインショップ:https://shop.artizon.museum/

同時開催の展覧会もお見逃しなく

「ジャム・セッション 山口晃」のほかにも、5階展示室では「創造の現場―映画と写真による芸術家の記録」、そして4階展示室では「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 読書する女性たち」が開催中です。

5階展示室「創造の現場」は、アーティゾン美術館の前身であるブリヂストン美術館が1953年に発足した映画委員会制作の「美術映画シリーズ」を一挙に公開します。

また、写真家安齊重男によるアーティストたちの制作現場を捉えた写真約30点も展示。


「創造の現場―映画と写真による芸術家の記録」 展示風景

アーティゾン美術館が現在所蔵する約200点以上の安齊作品から、選ばれた作品が堪能できますよ。

続く4階展示室「読書する女たち」では、石橋財団コレクションの中から「読書する女性」が描かれた作品を厳選して紹介。


(中央)メアリー・カサット《娘に読み聞かせるオーガスタ》1910年、石橋財団アーティゾン美術館蔵

メインビジュアルにもなっているメアリー・カサット《娘に読み聞かせるオーガスタ》などが展示されています。

「ジャム・セッション 山口晃」と一緒に、2つの展覧会もご覧ください。

 

約3000点の石橋財団コレクションと現代のアーティストがセッションし、新しい美術の見かたを提唱する「ジャム・セッション」シリーズ。

多岐にわたる表現で、国内外で活躍する山口晃のまなざしを通して、皆さんもいつもと違う見方で美術を楽しんでみては?

ちなみに冒頭には、山口らしく度肝を抜くインスタレーション作品が展示されています。

内覧会に来た山口本人から「展示内容はぼやかしてほしい」と言われてしまったので、最後にアドバイスだけ。

ヒールやかかとの無い脱げやすい靴で行かない方がいいですよ。できれば、スニーカーなど歩きやすい靴での来館をおすすめします。