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2024年11月21日
はみだす。とびこえる。絵本編集者 筒井大介の仕事/京都dddギャラリー
かわいらしい絵、ちょっと怖そうなおはなし。本屋さんに行くと、バラエティー豊かな絵本が並んでいます。
「この作家の絵本が好き」という人もいるでしょう。でも絵本編集者って?
ふだん私たちが見ることのない絵本編集者の仕事にスポットを当てた珍しい展覧会が、京都dddギャラリーで開催されています。
京都dddギャラリーは、大日本印刷株式会社(DNP)が関西での文化活動の場として大阪に1991年開設したグラフィックデザイン・グラフィックアート専門のギャラリーです。
2008年からは公益財団法人DNP文化振興財団が運営。2014年に京都・太秦に移転し、昨年京都・四条烏丸に移転したばかり。グラフィックデザイン専門のギャラリーで絵本関連の展覧会とは、どんな展示が見られるのか興味津々です。
会場風景
京都dddギャラリーは、京都中心部・四条烏丸のおしゃれな商業ビルの3Fにあります。
エスカレーターで昇っていくと、全面ガラス張りのギャラリーが。展示空間が通路からまるごと見えるので、通りすがりの人も「なんだろう?」と入ってみたくなるんじゃないでしょうか。
編集者と聞くと、作家に締め切りの催促をしたり、原稿チェックしている姿ばかり思い浮かべてしまいがち。
でも実際は、絵本編集者は一冊の本が生まれるきっかけをつくり、画家や作家、デザイナー、出版社などさまざまな人と関わりあいながら形にしていく、とても幅広い仕事なんです。
本展は、日本絵本大賞をはじめ数々の賞を受賞し、絵本の可能性に挑戦する注目の絵本編集者・筒井大介の目を通して絵本編集者の仕事をひも解いていく展覧会です。
展示風景
ガラス張りのドアを開けると、目に飛び込んでくるのは壁一面に貼られた下絵や校正紙。
展示室に入る前の通路は、絵本編集者の仕事部屋のような空間になっていました。
今回の展示会の主役は「絵本」でなく「絵本の編集者」なんだと再認識させられます。
赤字で指示がぎっしり書き込まれた校正紙
「肌もうすこしY(イエロー)を下げて」とか「服の横じまをもう少し明るく」など、本当に細かいところまで注意を払っていることがわかります。それに応える印刷会社もすごい!
こちらは「絵本がかたちになる前」の習作やラフやパーツの数々。
一枚一枚に絵本のタイトルを書いた筒井大介手書きの付箋が貼ってあります。ここを見ただけでも、一冊の本が出来上がるまでに膨大な作業があることが納得できます。
ひとつひとつの作品に対する絵本編集者の想いが伝わってきます。
「絵本編集者」の仕事のイメージが少し膨らんだところで、いよいよ展示室内へ。
決して大きな画面ではないのですが、一枚一枚が想像以上の迫力です。すべて筒井大介が一緒に仕事をした52人の作家の原画が展示されています。
原画の下に貼ってある紙には、作家それぞれの言葉と編集者・筒井大介の言葉が書かれています。
その絵本の魅力と、絵本を作ろうと思ったきっかけ、作家とのエピソードなど、編集者の思い入れたっぷりのコメントが並んでおり、目を通すうちに「いったいどんな作品?」と、絵本を手にとってみたくなります。
たとえば「棄てられたバスが周りの植物と合体して恐竜みたいになって動き出す、そんなのが描きたい、ということでスタートした絵本」・・・?!ちょっと読んでみたいと思いませんか?
色鮮やかで大胆な構図が印象的な人気作家・ミロコマチコの原画も並んでいました。
ミロコマチコといえば「動物」が代名詞。しかし筒井大介は「動物そのものを描きたいわけではないのではないか。そう思っていました。」と語ります。
編集者ならではの洞察力です。
絵本は形だってさまざま。例えば、とびだす絵本。
作家・スズキコージさんの「表紙に穴が開いた仕掛け絵本が創りたい」という一言がきっかけで、『飛び出す!妖怪の絵本』が誕生したそう。
ポップアップ絵本は画家、テキスト作家、デザイナー、立体設計のデザイナー、印刷、特殊製本など多くの人の手によって生み出されます。
原画から起こした立体パーツも展示されており、飛び出す絵本がどのように作られるのかも見ることができます。
筒井は「絵本塾」と題した絵本のワークショップも主宰しており、その中から生まれた作品も。新たな才能の発掘も、筒井大介という絵本編集者の仕事のひとつなのです。
それにしても膨大な数の原画。これでも展示しきれてないとのこと。添えられた筒井大介のコメントに、それぞれの作品に対する愛情がにじみます。
近年は原画も様変わり。デジタル制作の原画もありました。
絵本編集者・筒井大介の最大の魅力は、「絵本」という枠にとらわれないこと。
落語家にテキストを依頼して古典や新作落語を絵本にしたり、絵本に関わったことのない画家に絵を依頼したり、まさに展覧会のタイトル通り『絵本の世界を「はみだす。とびこえる。」』。
「絵本にはまだまだこんな可能性がある」という筒井大介の声が聞こえてくるようです。
ただ楽しい作品ばかりでなく、重いテーマに優しく触れられるのも絵本の可能性のひとつ。
「闇は光の母」は、「死」を通じて「生きる」ということを考えるシリーズ。詩人や小説家、写真家などさまざまなジャンルの作家がそれぞれの方法で表現しています。
「あの日からの或る日の絵とことば」は、3.11東日本大震災がテーマ。32名の作家が震災にまつわる個人的な思いを描き、記しています。
編集者も作家も逡巡し、ためらい、立ち止まりながら、誰かの不安やためらいに届くかもしれない・・・との思いで編まれた絵本です。
絵本の展示
こうして世の中に出た絵本が並ぶコーナーがありました。
あの原画がいろんな人の手を経てこの一冊になったのかと思うと、感慨深いです。
ギャラリー受付のグッズ
ギャラリー受付には可愛いグッズも並んでいました。
会場風景
さまざまな人が集まり、形になって世の中に出る絵本。
「この作家の魅力を広く世の中に伝えたい」という絵本編集者・筒井大介の情熱が伝わってくる展覧会。
ふだんは表舞台に出ることのない絵本編集者ですが、絵本に込められた思いを目の当たりにすると絵本の見方も変わります。
絵本をとびこえた発想で、その可能性を拡大していく筒井大介の創り出す絵本に、今後も注目したいですね。
デパートや商業施設の立ち並ぶ歳末の華やかな一角、お出かけの際にぜひお寄りになってみてはいかがでしょう。