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2024年11月1日
MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ/東京都現代美術館
東京都現代美術館で「MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ」展がはじまりました。
「生成AI」が流行語にもなり、人が創ることの意味を問われるいまタイムリーなタイトルですが、本展ではAIに限らず「テクノロジー」と「造形による表現」を通じて、いま身近にあるものや課題を見つめなおします。
「MOTアニュアル」は、若手作家の作品を中心とした現代美術のグループ展のシリーズです。
19回目となる今回は、「創造と生成」の両域にまたがり活動するアーティストたちに注目。「メディアアート」と呼ばれる領域を中心に、11組の作家による約50点の作品・資料を展示しています。
作|石川将也+nomena(杉原寛/武井祥平/キャンベル・アルジェンジオ)+中路景暁/共同制作|nomena(江川主民/井上泰一/前川和純/藤井樹里/園部莉菜子)《四角が行く》(2021)
タイトルの「シナジー、創造と生成のあいだ」には、人がつくりだす「創造」と自然に生じる「生成」という、対極にあるような2つの言葉が含まれます。
本展では、「デジタル」と「アナログ」、「バーチャル」と「リアル」、「テクノロジー」と「手仕事」など、相反する要素が交差する作品に焦点を当てています。
後藤映則《Heading》(2022)
「彫刻」と「映像」のあいだにあるような作品。昼と夜での観え方の違いにも注目です
このなかから一部の作品をご紹介します。
会場入り口に掲げられた展覧会のタイトル。
荒井美波《『シナジー、あるいは創造と生成のあいだ』》(2023)
一見すると原稿用紙に書いた文字のようですが、実は立体の作品!針金によって形作られた文字が、リアルタイムの映像として映し出されています。
デジタル技術の普及によって、「文字を書く」という行為が変化したことに注目した荒井美波による作品です。
荒井美波《『シナジー、あるいは創造と生成のあいだ』》(2023)
このほか、太宰治や夏目漱石といった文学者らの活字の書籍と、その直筆原稿を針金を使って再現した作品も展示。
パソコンで文字を書いても、完成した原稿にその創作の過程は残りませんが、立体化された原稿からは、文学者らが試行錯誤しながら文章を生み出してきたようすが強く伝わってきます。
荒井美波《太宰治 『人間失格』》(2012)
一方、スマートフォンの中で文学作品の文章が入力されていく作品も。
時々、言葉に迷うように留まりながら画面の中で作成されていく文章を見ていると、ツールが変わっても人が新しいものを創造する苦労は変わらないようにも感じられます。
荒井美波 展示作品 太宰治『人間失格』の一節がスマホで入力されていく
空間を使ったインスタレーション作品が多い中、会場の壁面だけを使ったUnexistence Gallery(原田郁/平田尚也/藤倉麻子/やんツー)の展示も目をひきます。
Unexistence Gallery (原田郁/平田尚也/藤倉麻子/やんツー) 《今日の新しい実存》(2023)
コロナ禍以降、リアルな空間での展覧会を補完するかたちでオンライン展を活用する展覧会も増えましたよね。でも、こちらは美術館が入り口で、オンライン上のギャラリーが「展示空間」となる展覧会。
Unexistence Gallery (原田郁/平田尚也/藤倉麻子/やんツー) 《今日の新しい実存》(2023)
会場にあるQRコードから、オンライン上の展示空間に入場できます
「絵画」が変化していったり、空中に浮かぶ彫刻や天井に掛けられた作品など、デジタル空間だからこそ存在できる作品も並びます。
Unexistence Gallery (原田郁/平田尚也/藤倉麻子/やんツー) 《今日の新しい実存》(2023)
いくつもの作品でリアルとバーチャルが入れ子状になっています
中でも原田郁は、バーチャルの空間につくりだした風景をキャンバスに描き出す手法で作品を制作してきたアーティスト。
今回はその絵画が、再びデジタルのギャラリーの中に展示され、作品と空間とが、バーチャルとリアルとの間でいくつもの入れ子になっています。
作品を通じて、現代の社会の課題に目を向けるアーティストたちも。たとえば、電力をはじめとしたエネルギーの課題は、最近よく耳にしますよね。
櫓のような木組みにバイクが吊り上げられたインパクトのある作品は、やんツーによる《TEFCO vol.2 ~アンダーコントロール~》。
やんツー《TEFCO vol.2 ~アンダーコントロール》(2023)
この作品の中で使われるのは、ものを高い場所に上げ、それを落下させるエネルギーでタービンを回す「重力発電」という発電の方式。
この方法で生み出された電気が「作品」となり、鑑賞者は自身のスマホを充電することで「作品」を持ち帰れます。
やんツー《TEFCO vol.2 ~アンダーコントロール》(2023)
「作品」を充電して持ち帰ることもできます
バイクを持ち上げる際には、作品の一部として美術館の敷地内に設置したソーラーパネルによる電力を使用。
昼間に発電した太陽のエネルギーを位置エネルギーに変換しておけば、重力発電で夜にも電気のエネルギーとして取り出せるんですね。
やんツー《TEFCO vol.2 ~アンダーコントロール》(2023)
しくみは映像とドローイングを使って解説されています
大きなバイクが上下するようすはなんとも迫力!
目に見えない電気はふだん意識しづらいですが、そのエネルギーの大きさが視覚的にも感じられるようです。
将来的な「食料」の確保も、よく耳にする課題のひとつ。
2022年の「六本木クロッシング2022展」(森美術館)では、《未来SUSHI》としてディストピア感あふれる「未来のSUSHI」を具現化した市原えつこは、今回も未来の食に注目した作品を発表しています。
市原えつこ《ディストピアの美食》(2023)
移動を制限された2020年のコロナ禍には、「自宅フライト」として自宅で飛行機での機内食を再現。
さらに今回は、2050年、2080年と年代を追って未来の食事を食品サンプルと映像で紹介しています。
海洋資源や金属資源が枯渇した将来を想定し、表現された未来の食は、まさに「ディストピア飯」!
市原えつこ《ディストピアの美食》(2023)
でも、そうした中でも、色や形状で美味しそうに見せる遊び心があったり、その食事を楽しそうに紹介する映像を観ていると、コロナ禍でも新しい楽しみを見いだしてきたのと同様に、大変な状況も楽しめるような人間の創造性への希望も感じられます。
市原えつこ《ディストピアの美食》(2023)
「MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ」展は、「自動で生成されるもの」と「手仕事」、「バーチャル」と「リアル」、そして「デジタル」と「アナログ」といった一見対極にあるような手法やテーマを融合させるアーティストたちによる展覧会。
その作風は軽やかながらも、いまここにある社会の課題に目を向けたり、ふだんは気づかない身近な現象や普遍的なものに改めて目を向けさせてくれます。
菅野創+加藤明洋+綿貫岳海《野良ロボ戦隊 クレンジャー》(2023)
なお本展の会期中、東京都現代美術館では現代アーティスト・豊嶋康子の初の大規模個展「豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表」も開催されています。
こちらもさまざまなメディアを使った現代アート展です。あわせて訪問してみるのはいかがでしょうか?