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2024年11月1日
学者の愛したコレクション ―ピーター・モースと楢﨑宗重―/すみだ北斎美術館
すみだ北斎美術館で、同館を支える二大コレクション、ピーター・モースコレクションと楢﨑宗重(ならざき むねしげ)コレクションから、厳選した作品約140点を展示する展覧会が開催中です。
(左)葛飾北斎「冨嶽三十六景 武州玉川」すみだ北斎美術館蔵(前期)
本展では、希少な北斎作品や、有名な絵師、画家たちによる貴重な作品を展示。両氏が生涯をかけて収集、研究した珠玉の名品に対するこだわりと研究業績を紹介する展覧会です。
※展覧会詳細はこちら
東京23区のなかでも、長い歴史をもち、特に古い行事や伝統技術を残している墨田区。こうした歴史を持つ「すみだ」は、政治家や思想家、文筆家や芸術家など、数多くのスターが誕生した土地でもあります。
そのひとりである浮世絵師の葛飾北斎(1760₋1849)も、墨田区に生まれました。
88年にも及ぶ長い生涯のうち、90回以上も引越しをしたといわれる北斎。そのほとんどを「すみだ」で過ごし、多くの名作を残しています。
残した作品の中には、両国橋や三囲神社、牛嶋神社など、当時の「すみだ」の景色を描いたものが数多くあります。
すみだ北斎美術館は、北斎と「すみだ」との関わりなどについて分かりやすく伝えるため、2016年11月に開館しました。
コレクション(収蔵作品)は、美術館のすべての事業の基盤となる大切なものです。
すみだ北斎美術館では、世界有数の北斎作品コレクターであったピーター・モース氏と、葛飾派作品以外にも、貴重で多種多様な資料を収集した浮世絵研究の第一人者・楢﨑宗重氏の二大コレクションを収蔵しています。
本展では、ピーター・モースコレクションからは江戸時代の風俗と流行を描いた作品を、楢﨑宗重コレクションからは江戸から昭和期にかけて、特に人気や評価が高かったとされる絵師・画家の作品を厳選し紹介。
2人の学者が愛したコレクションから、約140点の作品を展示します。
ピーター・モース(1935₋93)氏は、北斎の「諸国瀧廻り」シリーズに関する論文の執筆や、「百人一首乳母かゑとき」シリーズに関する単著『Hokusai: Hundred Poets』を刊行するなど、北斎の研究者であり、世界有数の北斎作品のコレクターでした。
葛飾北斎「百人一首乳母かゑとき 猿丸太夫」すみだ北斎美術館蔵(前期)
本展では、モース氏が単著にまとめたシリーズ作品である「百人一首乳母かゑとき」より「猿丸太夫(さるまるだゆう)」が展示されています。
乳母が子どもに百人一首を絵で説明することを目的とした本シリーズ。北斎の大判錦絵(*)のシリーズの中でも最後に制作されたものにあたります。
本作は、百人一首のうち猿丸太夫の「奥山に紅葉ふみわけ啼(な)く鹿の 声きく時ぞ秋はかなしき」の絵解きが描かれています。
秋の夕暮れの風景が描かれ、画面左上の丘の上にいる女性はなにやら遠くの方を指さしています。その先には鹿がシルエットで表現されています。
それまでの北斎大判錦絵シリーズと比較すると、本作は色数が多く、細部にわたってこった表現が特徴とのこと! モース氏も単著の中で「この作品は多くの点から見てまったく完璧な絵である。」と評価しています。
*大判錦絵:約39cm×26~27cmの錦絵(浮世絵の多色摺り木版画)のこと。
葛飾北斎「新板浮絵三囲牛御前両社之図」すみだ北斎美術館蔵(後期)
後期(11月9日~12月5日)には、モース氏がもっとも愛したシリーズ作品から「新版浮絵三囲牛御前両社之図」を展示。
浮絵とは、遠近法を利用し奥行きを強調した作品のこと。「新板浮絵」と題して江戸の名所が描かれた本シリーズは、赤い“すやり霞”(*)が印象的で、現在13図が確認されています。
ピーター・モースコレクションでは12図が収蔵され、保存状態が極めて良く、モース氏がもっとも大切にした作品群として伝わっています。
*すやり霞(がすみ):横に長くたなびくかすみのこと。鎌倉時代以降、大和絵とくに絵巻物で遠近感を与え、また場面を転換するために使われました。
どの作品も、当時の色合いを残しているかのような鮮やかさ! ぜひ、会場でじっくりと眺めてみてください。
昭和から平成にかけて活躍した美術史家、楢﨑宗重(1904₋2001)氏。
戦前より浮世絵雑誌の発行に携わり、国際浮世絵学会の前身である日本浮世絵協会(第二次・第三次)を設立し、会長などをつとめました。
また、戦後まもない時期に『北斎論』を刊行し北斎研究の分野で活躍し続け、浮世絵を美術史の中で学問的に位置づけることに尽力しました。
学者の愛したコレクション ―ピーター・モースと楢﨑宗重― 展示風景より
これらの研究活動の中で収集された楢﨑コレクションは、美術史研究上、貴重な美術資料・歴史資料を含んでいます。
すみだ北斎美術館では、同コレクションを約480点所蔵しています。そんな楢﨑宗重コレクションから、おすすめの作品2点をご紹介します。
蹄斎北馬「夕立図」すみだ北斎美術館(前期)
夕立に見舞われる峠の茶屋のようすを描いた肉筆画「夕立図」は、北斎の門人(弟子のこと)の中でも優れた浮世絵師として知られる蹄斎北馬(ていさい ほくば)の作品です。
茶屋でくつろぐ人や、そこで商売をする人、また雨宿りをする人などさまざまな人物のようすが詳細に描きこまれています。風俗描写に秀でた北馬の特徴をよく表す作品です。
長沢蘆雪「洋風母子犬図」すみだ北斎美術館蔵(後期)
「洋風母子犬図」は、京都画壇を代表する絵師・円山応挙に学んだ長沢蘆雪(ながさわ ろせつ)の作品です。
母犬とその乳を飲む子犬が描かれた本作のこだわりは、犬の毛の質感です。1本1本が分かるほど描きこまれていることから、熱心な写生や質感の追及がうかがわれます。
胡粉(*)をはじめ日本の伝統的な画材が使われていますが、顔料を厚く塗るなど、西洋の油彩画を強く意識して描かれているとのこと。単眼鏡などお持ちの方は、そちらを使って細部まで鑑賞してみては?
*胡粉(ごふん):日本画に用いる白色顔料。牡蠣(かき)・はまぐり・ほたてなどの貝がらを焼き、砕いたうえで水処理してつくる。
すみだ北斎美術館を支えるピーター・モースコレクションと、楢﨑宗重コレクションを紹介する本展。
両氏のコレクションには、本展で展示されている作品のほか数多くの名品があります。それらの図版や解説をまとめた既刊図録が会期中、美術館1階のミュージアムショップで販売されています。
なお、本展は会期中一部展示替えがあります。詳しくは作品リストをご覧ください。