白井晟一 入門/渋谷区立松濤美術館

建築家・白井晟一の晩年の代表作、渋谷区立松濤美術館で大回顧展が開催中

2021年11月24日

建築家・白井晟一の全貌に迫る展覧会。第2部では普段、観ることのできない館長室などを紹介する建物ツアーも

渋谷駅にほど近い閑静な住宅街「松濤(しょうとう)」の一角に建つ渋谷区立松濤美術館。1981年10月1日に開館し、2021年で開館40周年を迎えました。


渋谷区立松濤美術館 開館40周年記念 白井晟一 入門 展示風景より

そんな松濤美術館を設計したのは、戦後日本において独自の存在感を放った建築家・白井晟一(しらい せいいち/1905-83)です。

1部と2部に分けて建築家・白井晟一の全貌を紹介する本展では、今もなお全国に残る白井建築を中心に、初期の木造住宅から後期の記念碑的な建築を紹介。

また、白井の晩年の代表作である松濤美術館を開館当初の状態に近づける「建物公開」を行い、白井のオリジナルな美術館構想を体験することができます。

※展覧会詳細はこちら

建築家・白井晟一とは

白井晟一は京都で生まれ、京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学)図案科卒業後、ドイツで哲学を学ぶなど異色の経歴をもつ建築家です。

ヨーロッパ滞在中は、『放浪記』や『浮雲』などの代表作で知られる作家・林芙美子など多くの文化人と交流。その帰国後に、義理の兄である画家・近藤浩一路(こういちろ)の自邸の設計を手がけたことをきっかけに、独学で建築家への道に進みました。


渋谷区立松濤美術館 開館40周年記念 白井晟一 入門 展示風景より

《秋ノ宮役場》などの初期の木造建築から、《ノアビル》や《渋谷区立松濤美術館》など後期の記念碑的建築まで、多くの記憶に残る作品を残しました。そのユニークなスタイルから「哲学の建築家」などとも呼ばれています。

第1部 白井晟一クロニクル 見どころ紹介

2部に分けて構成されている本展。12月12日までは、第1部「白井晟一クロニクル」が開催中です。その1部の見どころをご紹介していきます。

日本全国に今も残る白井建築を一挙紹介


《懐霄館(親和銀行電算事務センター)》1973-75 年 撮影:柿沼守利

初期から後期までの白井の代表的な建築は、今も日本全国に残っています。それらは、地域や施設のシンボルとして多くの人びとに愛され続けています。

本展では、そんな白井建築について、図面などの貴重な資料とともに分かりやすく展示します。

ちなみに、白井建築の中には稲住温泉の離れや、静岡市立芹沢銈介美術館など、現在も建物の中に入ることができる施設があります。その他にも、見学可能なところもあるそう!

本展で興味を持った白井建築を実際に訪れて体験してみるのもおすすめです。

遺された未完の建築に関する設計図も展示

白井にはいくつか実現しなかった、あるいは、実現してもいない未完の夢といえる建築計画がありました。

もっとも有名なのは「原爆堂計画」(1954-55)であり、本計画は丸木位里(いり)・俊夫妻の《原爆の図》を常設展示する美術館として想定されていました。


原爆堂計画 1/100模型

白井への依頼も、具体的な建設の目途も立っていない段階にもかかわらず、彼はほかの仕事を絶ってまでこの計画に集中したそう。

1955年には白井と親交のあった川添登が編集長を務める『新建築』4月号で、「原爆堂計画」を発表し、さらに自費で海外配布を想定した英文入りのパンフレットを作成するなど、かなり力を入れていたといいます。


外観透視図 作画・大村建策 1955年 白井晟一建築事務所

この建築計画は未完の夢となってしまいました。しかし、計画案ならではの、自由で力強い構想力と、白井晟一研究所の所員・大村建策による緻密なスケッチは、戦後建築界に強烈な印象を残しました。

建築以外の分野でも才能を発揮!

白井はそのキャリアを通して「文字」の形にこだわり続けました。

図面に書かれた文字は美しくレタリングされ、アルファベットのカリグラフィーは《懐霄館(かいしょうかん)》(親和銀行電算事務センター)など、実際の建築作品にも刻まれています。


渋谷区立松濤美術館 開館40周年記念 白井晟一 入門 展示風景より

50歳を過ぎたあたりから、白井は書道を日課とし、日が暮れてから夜明けまで、1日何十枚と書いていたそうです。

そんな彼は、本の装丁も手掛けていました。その代表といえるのは、戦前からの嶋中雄作との関係をきっかけとする、中央公論社の仕事です。


中公文庫装丁デザイン画 白井晟一建築研究所

こちらのデザインは、今もなお使用されています。一度は見たこともある人も多いのではないでしょうか。

本展では、白井の原画を中心に初期から晩年までの装丁についても紹介。建築家・白井晟一のもう一つの顔にも迫ります。

第2部 Back to 1981 建築公開 見どころ紹介

2022年1月4日からは、第2部「Back to 1981 建築公開」が開催されます。第2部では、白井の晩年を代表する建築のひとつである渋谷区立松濤美術館そのものに焦点をあてます。


《渋谷区立松濤美術館》外観 写真:©村井修

40年にわたり、展示向けに壁面などが設置されている展示室を、白井がイメージした当初の姿に近づけて紹介。建築ツアーでは、館長室も特別に公開されるなど、会期中にしか観られない美術館の姿に注目です!

 

渋谷区立松濤美術館の開館40周年を記念し、建築家・白井晟一を紹介する本展。

これまで白井のことを知っている方はもちろん、今回の展示で初めて知る方にも分かりやすく、まさに、展覧会タイトルの「白井晟一入門」にふさわしい内容になっています。

第1部、第2部の両方を観に行く方は、リピーター割引がおすすめ! 観覧日翌日以降の本展会期中、有料の入場券の半券と引き換えに、通常料金から2割引きで入館できます。

Exhibition Information

展覧会名
渋谷区立松濤美術館 開館40周年記念 白井晟一 入門
開催期間
2021年10月23日~2022年1月30日 終了しました
会場
渋谷区立松濤美術館
公式サイト
https://shoto-museum.jp/
注意事項

※新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、土・日曜日、祝日および最終週(第1部 12月7日(火)~12日(日)、第2部 1月25日(火)~30日(日))は「日時指定制」となります。詳細は美術館公式サイトをご覧ください。

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