特別展「正倉院 THE SHOW -感じる。いま、ここにある奇跡-」/大阪歴史博物館

注目は再現された蘭奢待の香り。正倉院宝物「再現模造」の世界【大阪歴史博物館】

NEW!
2025年7月4日
注目は再現された蘭奢待の香り。正倉院宝物「再現模造」の世界【大阪歴史博物館】

模造 螺鈿紫檀五絃琵琶

特別展「正倉院 THE SHOW -感じる。いま、ここにある奇跡-」が、2025年6月14日から大阪歴史博物館で開催中です。

正倉院事務所が研究、制作を進めてきた「再現模造」。今回は映像・音楽・照明と組み合わせて展示されています*。
*正倉院宝物の実物は展示されていません

注目は、同展にて初公開となる再現された「蘭奢待(らんじゃたい)」の香り。
毎年秋に奈良で開催されている正倉院展とは異なるアプローチで、正倉院宝物を楽しむことができます。

正倉院が取り組む「再現模造」

1300年を経て今もなお9000件もの宝物が守り伝えている奈良・正倉院。1972年からは「再現模造」を研究、制作する模造事業を開始しました。

東西の文化の融合を示す品と言われている「瑠璃杯(るりのつき)」のレプリカを展示

これは単に似せて作るのではなく、分析装置や光学機器を使いながら、当時の素材や技法にもこだわり、宝物本来の姿を再現していく取り組みです。

同展は「再現模造」を通して、正倉院宝物を感じることができる展覧会です。

模造 螺鈿紫檀五絃琵琶

展示品の一つ「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」は、世界で唯一現存する五絃琵琶の模造です。

宝物と同じように、細やかな文様も見事に再現されています。

正倉院事務所は「正倉院宝物をもうひとつ作ること」を目標にしており、これまでに作られた再現模造は50件におよびます。

なかでも注目は、再現された「蘭奢待」の香りです。

会場には蘭奢待のレプリカが展示。宝物名は「黄熟香」(おうじゅくこう)

蘭奢待とは、東南アジアに分布するジンチョウゲ科アクイラリア属の木の切り株などに樹脂や精油が沈着してできた香木のことで、通称「沈香(じんこう)」と言います。

正倉院の蘭奢待は“名香”とされ、織田信長も愛したと言われるほどです。

正倉院事務所は、2024年より高砂香料工業株式会社の協力のもと、成分分析などの調査を実施。
そして科学調査の結果と、香りを嗅いだ調香師の研ぎ澄まされた感覚によって、現代に蘇らせることができたのです。

カップを開けて香りを嗅ぐ「香りの体験」

実際に会場で香りを嗅いでみたところ、ふんわり優しく、品のある香りがします。

これが正倉院宝物の香りだと思うと、より一層贅沢な気分に。

どんな匂いに感じるかは人それぞれ。ぜひみなさんも、大阪歴史博物館で「蘭奢待」の香りを楽しんでみてくださいね。

巨大スクリーンで正倉院宝物を堪能

湾曲した巨大スクリーンで宝物美を味わうことができます

同展では、宝物を360度からスキャンして取得した高精細な3Dデジタルデータに、演出を加えたイマーシブ映像も上映されています。

高さ4m、幅20mの巨大スクリーンに映し出される映像からは、肉眼では見えにくい宝物の細部や質感までも感じ取ることができます。

とくに圧巻だったのが「漆金薄絵版(うるしきんぱくえのばん)」です。

32枚の蓮弁に、花鳥や迦陵頻伽が描かれている。迦陵頻伽(かりょうびんが)とは、仏教における想像上の鳥のこと

仏前でお香を炊く台として使われていたもので、蓮の花のように外側に広がる曲線美と、そこに繊細に描かれた絵柄に思わずうっとり。

螺鈿箱に中に入っている紺玉帯は、高位の人にのみ付けることができるもの

もう一つ気になったのは、「螺鈿箱(らでんばこ)」。
螺鈿装飾が美しいことはもちろんですが、ラピスラズリ(紺玉)で飾られた「紺玉帯(こんぎょくのおび)」とのコラボレーション映像が印象的です。

現代アーティスト×正倉院のコラボレーション

現代アーティストが正倉院にインスピレーションを受けて制作した新作も展示されています。

ここでは、その一部をご紹介します。

構想から1年をかけて制作したという篠原ともえデザインのドレス

デザイナーの篠原ともえの作品。
鳥の頭をかたどった蓋を持つペルシア風の水瓶「漆胡瓶(しっこへい)」にインスパイアを受け、新作ドレスを作り上げました。

丸みのあるフォルムが印象的ですが、生地には動物や植物、昆虫などが描かれており、ファッションアイテムとしてのかわいさを感じます。

正面だけでなく横や後ろからのシルエットも素敵なので、チェックしてみてくださいね。

陶芸家・亀江道子の作品。よく見るとトランプの図柄も見える

ほかにも、陶芸家・亀江道子や写真家・瀧本幹也の新作も展示。

写真家・瀧本幹也の作品。正倉院正倉の見たことのない表情を捉えた作品群

また、会場内で音楽プロデューサーの亀田誠治さんによる「光」が試聴できます。
この楽曲は、昭和20〜30年代に録音された琵琶や尺八などの宝物の音源に、ピアノやベースといった現代の音色を組み合わせたもの。

1300年の歴史を誇る正倉院は、現在も多くのアーティストや芸術家たちに影響を与えているのです。

コラボグッズも充実
9月には東京でも開催

1階のミュージアムショップには、さまざまなコラボグッズが登場しています。

大手通販会社フェリシモとのコラボした「螺鈿箱ラウンドトートバッグ」(4,260円)や「宝物イメージバングルウォッチ」(5,940円)は普段使いできるおしゃれなアイテムに。

「螺鈿箱ラウンドトートバッグ」(4,260円)。直径約40cmのトートバッグは内側にも色鮮やかなプリントが施されている

「やさしいオオカミウルフくん」のコラボグッズは、描き下ろしイラストを使用した「ポストカード」(220円)や「Tシャツ」(5,280円)など、ほかにもたくさんのグッズが並びます。

「Tシャツ」(5,280円)。イラストは背面にプリントされている

新たなアプローチで正倉院宝物が楽しめる同展は、今後東京でも開催されます。

いち早く体感してみたい方は、ぜひ大阪歴史博物館へ足をお運びください。

Exhibition Information