浮世絵スーパークリエイター 歌川国芳展/京都市京セラ美術館

時代を超えて響く江戸の美意識と斬新さ! 浮世絵スーパークリエイター 歌川国芳展📍京都

NEW!
2026年8月17日

時代を超えて響く江戸の美意識と斬新さ! 浮世絵スーパークリエイター 歌川国芳展 京都市京セラ美術館

京都に歌川国芳がやってきた!

会場に一歩足を踏み入れると、一人の浮世絵師の奇想天外な発想力が空間に満ちあふれていました。

内覧会では本展の監修者、福島県立美術館の月本寿彦学芸員より展示説明があり、国芳ワールドの理解がより深まりました。

江戸時代後期、幕府の規制や社会の窮屈さを軽やかに跳ね返し、人々を熱狂させた歌川国芳(1797–1861)。

「奇想の絵師」「大のネコ好き」といった親しみやすい文脈で語られることの多い彼ですが、約220点の作品をテーマ別に観ていくと、国芳が単なる流行児にとどまらず、確かなデッサン力と西洋美術への深い洞察を併せ持ったアーティストであったことが鮮明に浮かび上がってきます。

本展では、これから始まる映画やお芝居の予告編のように、全6幕でその全貌を解き明かしていきます。

第1幕:KUNIYOSHI’Sアクション!
──大画面を疾走する、圧倒的ダイナミズム

展示室の幕開けを飾るのは、国芳の出世作「武者絵」の世界です。

天保の改革等により娯楽が制限されるなか、国芳が一躍スターダムへと駆け上がる契機となった『通俗水滸伝豪傑百八人』シリーズをはじめ、大きな続絵(つづきえ)が眼前に広がります。

続絵とは複数の版画を並べて一枚の作品を構成するように描かれた作品です。

特に圧巻なのは《宮本武蔵と巨鯨》。

従来の浮世絵の枠組みを打ち破り、三枚の紙面を横断して一頭の巨大な鯨を描き出す構図は、現代のワイドスクリーンで観る映画の一場面のようです。


「宮本武蔵と巨鯨」弘化4年(1847)頃

画面上部に小さく描かれた宮本武蔵と比べると、鯨の大きさ、そして荒々しい波の飛沫が強調されていて、躍動する映像のような作品に仕上がっています。

第2幕:KUNIYOSHI’Sモンスター!
──怪異の裏に潜む、解剖学的なリアリズムと反骨の精神

第2幕では、国芳の豊かな想像力が産み出した妖怪や異形の怪物たちがうごめく世界へと誘われます。

代表作《相馬の古内裏》に描かれた巨大な骨男(がしゃどくろ)は、見れば見るほどその描写の緻密さに驚かされます。

国芳は単に不気味なものを描いたのではなく、当時オランダ等から輸入されていた西洋の解剖学書(解剖図)を研究し、人間骨格の構造を理解した上で、この巨大な骸骨を描いたとされています。


「相馬の古内裏」 弘化2-3年(1845-46年)頃

また、《源頼光公舘土蜘作妖怪図》に見られるように、妖怪たちの姿に世相への風刺や暗号を忍ばせた表現は、権力に対するしなやかな反骨精神の表れと見てとれます。

土蜘蛛などの数々の妖怪は、当時の天保の改革の弾圧下で苦しむ江戸の人々の恨みつらみを表し、歯のない妖怪は歯のない噺家を表しています。

描かれた当時の幕府の厳しい規制という不自由な状況下において、それを筆で風刺してみせる気概と洒落っ気がここにあります。


「源頼光公舘土蜘作妖怪図」 天保14年(1843)

第3幕:KUNIYOSHI’Sビューティー!
──江戸の風を纏う、健康的な色香と洗練された意匠

武者絵の豪快さとは対照的に、第3幕では粋で瑞々しい女性たちの姿が並びます。

国芳が描く美人画の魅力は、軽やかな快活さと健康的な魅力。

そこにはどこか現代的な親しみやすさやきっぷの良さが同居しています。

さらに注目すべきは衣装のデザインです。国芳の実家が江戸の染物屋(絹織物の紺屋)であったことから、着物の柄や帯の織り、布地の質感に対するこだわりは群を抜いています。

《当盛風俗好》(とうせいふうぞくこう)は、藍を基調とした藍摺り絵(あいずりえ)。

当時、江戸で流行した四季の草花(桜や菊など)、粋な縞模様、吉祥文様などを華やかに配し彼の審美眼を雄弁に物語っています。


「当盛風俗好」 天保3年(1832)頃

第4幕:KUNIYOSHI’Sハンサム!
──人間の魅力を穿つ観察眼と江戸っ子の美意識

第4幕では、江戸歌舞伎のスターたちを描いた役者絵や、侠客(きょうかく)、男伊達(おだて)たちの肖像が集結します。

人気の役者絵だけでなく、水もしたたるいい男のここぞというポーズの表情や特徴を細かく捉えて描き分けています。

また《国芳もやう正札附現金男野晒悟助》(くによしもようしょうふだつきげんきんおとこのざらしごすけ)では、着物の柄に髑髏(どくろ)模様をあしらいつつ、よく見ると無数の猫の姿で組み合わされているといった趣向は、格好よさの中に猫好き国芳の茶目っ気が垣間見えます。


「国芳もやう正札附現金男野晒悟助」 弘化元―2年(1844-45)

第5幕:KUNIYOSHI’Sヴィジョン!
──西洋遠近法や光彩が織りなす、モダンな風景群

第5幕は、国芳の実験精神が強く表れている風景画(名所絵)のセクションです。

《東都御厩川岸之図》(とうとおんまやがしのず)には、有名な謎が仕掛けられています。

激しい雨の中を行く人物の番傘に記された「千八百六十一」(1861)という数字は、奇しくも国芳自身が亡くなった年と一致します。

また画中左側のスカイツリーを思わせるような高塔の描写とともに、自身の未来を予知していたかのようなこの画は、今なお見るものの好奇心を刺激して止みません。

もしや国芳は現代からタイムスリップしてきたのでは?!と想像がふくらみます。


「東都御厩川岸之図」 (部分) 天保初期(1831-33)頃

第6幕:KUNIYOSHI’Sアイデア!
──遊戯心あふれる戯画の数々

展覧会の最後を締めくくる第6幕は、国芳の代名詞ともいえる戯画(ぎが)・遊び絵の世界です。

「寄せ絵」の名作《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》は、大勢の人間が複雑に組み合わさって一人の表情豊かな顔を形作っており、国芳の人間観察力と図案構成力の楽しさに細部までじっくりと観察したくなってしまいます。


「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」 弘化4年(1847年)

【特別展示】イマーシブ(没入型)アート映像公開

展示の締めくくりとして用意されているイマーシブアート映像は、国芳の浮世絵が持つダイナミズムを現代の映像技術で視覚体験できます。

《宮本武蔵と巨鯨》の鯨が躍動したり、《相馬の古内裏》の巨大な骸骨が空間に浮かび上がる臨場感は、もし国芳が現代に生きていたら真っ先に取り入れたであろう「新しいエンターテインメントの形」そのものです。

江戸の浮世絵が、令和の最先端のデジタル表現と響き合い、世代を超えて来場者を魅了することでしょう。

以前、大阪中之島美術館で開催された「歌川国芳展」(2024-2025)が、歴史的、体系的に国芳の総決算的な展覧会だったとすると、今回の京セラ美術館のこの現代的なアプローチは、浮世絵初心者でも思わず体感したくなるように構成されています。

歌川国芳という人物は、単に「面白い絵を描いた絵師」ではありません。

確かなデッサン力と伝統的な技法を土台としながら、西洋美術を貪欲に吸収し、時代の制約さえもアイデアの源泉へと変えてしまった真のクリエーターでした。

江戸時代から時を超えて語りかけてくる自由な魂と美意識。

浮世絵の知識がなくても、国芳ワールドを見て体験して楽しめる展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか?

開催概要

• 会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1階
• 会期:2026年7月18日(土)~9月23日(水・祝)
• 休館日:月曜日(祝休日の場合は開館)
• 開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
• 観覧料
• 当日券:一般 1,900円 / 高大生 1,400円 /小中生 700円
• 前売・団体:一般 1,700円 / 高大生 1,200円/ 小中生 500円
(団体は20名以上)
• 未就学児:無料

Exhibition Information

展覧会名
浮世絵スーパークリエイター 歌川国芳展
開催期間
2026年7月18日~9月23日
会場
京都市京セラ美術館 本館 北回廊1階
公式サイト
https://www.ktv.jp/event/kuniyoshi/
注意事項

一般1,900円(1,700円)、高大生1,400円(1,200円)、小中生700円(500円)

※( )内は団体・前売料金