写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策/アーティゾン美術館

現代の写真作品と石橋財団コレクションの競演

2022年5月17日

写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策

アーティゾン美術館(東京・京橋)が毎年開催するジャム・セッション。

ジャム・セッションとは、アーティゾン美術館のコンセプト「創造の体感」を体現する展覧会のことです。年に一度、石橋財団コレクションと現代のアーティストの作品から生み出されるセッションによって、新たな視点による展覧会を公開しています。


「写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」展示風景

現在、現代の写真作品と絵画の関係を問う「写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」が開催中です。

※展覧会情報はこちら

現代アーティストと印象派の巨匠の競演

写真が発明され、普及しだしたのは19世紀ごろのこと。
写真は誕生したころから、ただの記録的な目的ではない絵画的な表現が模索され、その意識は現代に至るまで続いています。


「写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」展示風景

同時期に、絵画にも大きな変革がありました。そのひとつが印象派でした。印象派を一つの起点に、絵画界はそれまでの伝統的な表現からどんどん変化していきましたが、そのモチベーションには写真の存在が少なからずありました。


「写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」展示風景

現代の作家、柴田敏雄と鈴木理策の写真作品には、人間がものを見て表現するという、近代絵画に共通する造形思考が感じられます。

2022年のジャム・セッションは、両作家がその活動の初期より関心を寄せ続けていたセザンヌの作品を起点に、現代の写真作品と絵画の関係をひもときます。

本展の見どころ

ダムや橋といった自然の中の人工的構造物を題材に、自らの作品を絵画との関係を意識して形態を単純化し、かつ主たるモティーフを浮かび上がらせることで見る者の想像力に働きかける柴田敏雄。

サント=ヴィクトワール山、セザンヌのアトリエ、桜や雪といった対象を、カメラという機械の知覚を通して、人間がものを「見ること」への問題意識を提示する鈴木理策。


「写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」展示風景

柴田・鈴木両作家にとって、ポール・セザンヌの自然に即しながら自己の視覚的感覚を実現することを果敢に試みた芸術家としての態度とその革新的な作品は、その活動の初期より重要な参照であり続けました。


「写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」展示風景

本展では、セザンヌのみならず、柴田は藤島武二やアンリ・マティス、ピート・モンドリアン、鈴木はギュスターヴ・クールベやクロード・モネ、ピエール・ボナールといった絵画の視点を織り交ぜることで、両作家が「写真」を通じて提示する、作品の特異性とその魅力をご紹介します。

同時開催の2つの展示もお見逃しなく

Transformation 越境から生まれるアート

「越境」を切り口に、国際化する近現代美術を展望する本展。


「Transformation 越境から生まれるアート」展示風景

19世紀半ばから第二次大戦後までのヨーロッパ、日本、アメリカの美術を展望。

異質な存在との接触や対話を契機に自らの芸術を刷新していった芸術家として、4人の画家、ピエール=オーギュスト・ルノワール、藤島武二、パウル・クレー、ザオ・ウーキーを、約80点の作品と資料により、その創作の態度に光を当てるものです。

あわせてパウル・クレーとロベール・ドローネーの新収蔵作品も初公開されます!

石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 ピカソとミロの版画 —教育普及企画—

いずれもスペイン出身で、同時代に活躍したピカソとミロ。ふたりの多様な創作活動のなかに、版画があります。

本展では、石橋財団コレクションのピカソとミロの版画作品の魅力に迫るとともに、版画の技法についてわかりやすく紹介。


「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 ピカソとミロの版画 —教育普及企画—」展示風景

会期中には版画のワークショップも予定されているそうです。展示室入り口では、ミニ冊子も配布。版画について分かりやすく知ることができますよ。

 

同時開催で3つの展示を楽しめるアーティゾン美術館。京橋駅のすぐそばという立地も魅力的です。

これから梅雨に入りますが、駅近見ごたえバツグンの同館で、美術鑑賞のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

なお同館は日時指定予約制です。詳しくは公式サイトをご確認ください。