特別展「北斎 百鬼見参」/すみだ北斎美術館

北斎が描いた「鬼」の浮世絵がすみだ北斎美術館に集結!同館初公開の肉筆画にも注目

2022年6月28日

特別展「北斎 百鬼見参」/すみだ北斎美術館

東京23区のなかでも、古くから伝わる行事や伝統技術を多く残す墨田区。政治家、思想家、また文筆家や芸術家として活躍した偉人を輩出しています。日本国内のみならず、世界でもファンの多い浮世絵師、葛飾北斎(1760-1849)も墨田区に生まれました。

そんな北斎とゆかり深い墨田区に建つすみだ北斎美術館では現在、特別展「北斎 百鬼見参」が開催中です。※以下、許可を得て撮影。


葛飾北斎「着衣鬼図」佐野美術館蔵(前期)

本展では、北斎が描いた「鬼」の浮世絵を紹介。彼がどのように鬼を捉え、表現してきたかについて迫ります。また、同館初公開となる北斎の貴重な肉筆画も展示されます。

※展覧会詳細はこちら

江戸時代の人びとがイメージしていた「鬼」とは

皆さんは鬼と聞いてどんな姿を思い浮かべますか? 赤い顔に鋭い牙、もじゃもじゃ頭に2本のツノなど、人によってイメージはさまざまだと思います。

日本の鬼の歴史をひも解くと、『日本書紀』に斉明天皇の葬儀を山上から見物する笠を被った鬼の目撃談が記されており、これが鬼についての最初の公的な記録だといいます。しかし、鬼の具体的な姿については描写がないのだそうです。

私たちがイメージする鬼の姿は、平安時代末期から鎌倉時代頃に盛んに制作された「絵巻物」に登場します。そして、室町時代以降はお伽草子の発展とともに大江山の酒吞童子など、物語の悪役としての存在へと認識の変化が起こります。

江戸時代になると、浮世絵や大津絵といった庶民文化の中で鬼をモチーフとした作品が多く制作されるようになります。それまで恐ろしい存在だった鬼ですが、ユーモラスな一面も取り上げられるようになりました。


葛飾北斎 百物語 笑ひはんにや 天保2~3年(1831-32)頃 すみだ北斎美術館蔵(前期展示)

本作は、北斎の妖怪絵における傑作シリーズ「百物語」のうちの一作です。「百物語」とは、江戸時代に流行した怪談を話す会のこと。集まった人びとが怪談を100話語り終えると、本物の怪異が出現すると信じられていました。

本作に描かれている鬼は、子どもをさらって食べたと恐れられていた鬼女である鬼子母神(きしぼじん)をイメージも重ねられていると考えられています。北斎の手に掛かると、怖い鬼の表情もユーモラスなものになりますね。

鬼を描いた北斎の希少な肉筆画も展示!

90年という長い生涯で多くの作品を世に遺してきた北斎。しかし、鬼を描いた肉筆画はとても少ないのだそう。本展では、北斎が描いた鬼の肉筆画を前後期に分けて3点展示します。いずれも貴重な作品です。


葛飾北斎「着衣鬼図」佐野美術館蔵(前期)

赤鬼が僧衣(僧侶が着る衣のこと)を着て、刺身の皿と徳利、数珠(じゅず)を前に座っているようすが描かれた「着衣鬼図」。煩悩を意味する酒や刺身と、それを打ち消す数珠のどちらを取るか悩んでいるようにも見えます。

本作は北斎が数え89歳のとき、弟子の本間北曜(ほんまほくよう)に与えたものだと右下の落款(*)に記載があり、最晩年の北斎のようすを知る上で重要な作品とされています。

*落款(らっかん):書画が完成した時、作者が証明し、または押印をすること。作者のサイン。

修復後&美術館初公開の「道成寺図」


葛飾北斎 道成寺図 文化(1804-18)前期頃 すみだ北斎美術館蔵(前期)

本展の目玉作品である「道成寺図」は、和歌山県にある道成寺に伝わる悲しい恋の伝説「安珍と清姫の物語」をもとにした能「道成寺」を描いた作品です。能を題材とした北斎の肉筆画は他に作例がなく、とても珍しい作品のひとつです。

修復後初公開となる本作。なんとすみだ北斎美術館での展示も初とのこと! 原画は前期(6月21日~7月24日)まで、後期は高精細複製画(プリマグラフィ)が展示されます。

ゆる~い鬼もいます


葛飾北斎『北斎略画手ほどき』すみだ北斎美術館蔵(通期)

4階の第2会場では、恐ろしい鬼だけではなく、江戸時代の人びとの暮らしの中で親しまれてきた愛らしい鬼を描いた作品も展示されています。

『北斎略画手ほどき』は、当時すでに希少本となっていた北斎の文字絵(文字を組み合わせて描く絵)の教本を、大正時代に再版したものです。本ページでは、大津絵の「鬼の寒念仏」の描き方を絵描き歌で説明しています。

鬼の不満げな表情が親しみやすさを感じさせますね。北斎が描いた「鬼の寒念仏」は、第1会場と第2会場を結ぶ階段下にパネルとなって登場しています。

こちらは撮影OK! 大人の膝くらいの小さめのパネルなので、お子さんと一緒の記念撮影に適していますよ◎

 

前後期で約145点のさまざまな鬼が描かれた浮世絵を紹介する本展。

怖い鬼からクスッと笑える可愛らしい鬼まで、約145点のさまざまな鬼の浮世絵が楽しめる展覧会でした。


「北斎 百鬼見参」公式図録 2,640円(税込)

また前期、後期に出品される全作品が1冊にぎゅっと詰まった公式図録も、ミュージアムショップや全国書店でも販売されていますよ。ミュージアムショップもお見逃しなく♪

Exhibition Information

展覧会名
特別展「北斎 百鬼見参」
開催期間
2022年6月21日~8月28日 終了しました
会場
すみだ北斎美術館
公式サイト
https://hokusai-museum.jp/
注意事項

前期:6月21日~7月24日
後期:7月26日~8月28日