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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
日本には、美術館・博物館がたくさん存在しています。
年に何度か足を運んだり、旅先でお楽しみとして訪れたり・・・素敵な館が全国のさまざまな場所にありますよね。
「学芸員の太鼓判」は、全国の館の自慢の名品を詳しく知りたい! そんな想いから生まれた企画です。本連載では、全国の美術館・博物館の自慢の所蔵品を詳しくご紹介。
今回は世界一の乗車数をほこる新宿から文化・芸術を発信する「SOMPO美術館」の所蔵品を紹介します。
SOMPO美術館
SOMPO美術館は、世界一の乗車数をほこる新宿に位置し、多様な価値観に満ちた魅力溢れるコレクションを持つ美術館です。2020年に「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」から「SOMPO美術館」へと館名を変更したことも記憶に新しいのではないでしょうか?
同館は、日本初の高層階美術館として、1976年に開館しました。
コレクションは、1978年に逝去した洋画家・東郷青児の遺族から寄贈を受けた作品345点(うち青児の作品156点、その他は青児の収集品)を中心に、ゴッホの《ひまわり》、ルノワール、ゴーギャン、セザンヌなどの印象派とポスト印象派やアメリカの素朴派画家グランマ・モーゼスの作品、さらには美術家の支援・表彰事業による収蔵作品も加わり現在約640点を所蔵しています。
今回詳しくお話を聞いたのは、小林晶子学芸員です。
これまでに、「ゴッホと花」(2003年)、「オランダ・ハーグ派展」(2014年)、「フランスの風景・樹を巡る物語」(2016年)、「カリエール展」(2016年)など、おもにフランス近代絵画の展覧会を担当しています。
SOMPO美術館が誇る作品、そして小林学芸員イチオシの作品をお聞きしました!
公式サイトはこちら
フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》SOMPO美術館蔵
《ひまわり》は、ゴッホが南フランスのアルルで描いた7点の《ひまわり》のうちの1枚です。現在では1点は焼失し、1点は行方不明、他5点はそれぞれ、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、オランダのゴッホ美術館、アメリカのフィラデルフィア美術館、ドイツのノイエ・ピナコテーク、そして日本のSOMPO美術館が所蔵しています。
ゴッホは1888年8月、画家仲間との共同生活用に借りた「黄色い家」の部屋を飾るための「ひまわり」の連作を思いつき、青系を背景にした《ひまわり》を3点、黄色を背景にした《ひまわり》を1点描きました。
SOMPO美術館の《ひまわり》は、この8月に描かれた黄色い背景の《ひまわり》(現在、ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵)を元に、1888年11月下旬から12月上旬頃に描かれた作品です。
本作は安田火災が創業100周年事業として購入したもので、当時の価格でおよそ58億円で購入したと言われています。
作品のポイント
・アジアでゴッホのひまわりが観られるのはSOMPO美術館だけ!
・ゴッホにとってひまわりは重要な主題だった
親友・ゴーギャンと暮らしていた間に生まれた作品
7点の《ひまわり》のうち、唯一、ゴッホがゴーギャンと共同生活を送っていた期間に描いたと言われる作品です。
また使用されているキャンヴァスも、ゴーギャンが1888年10月のアルル到着直後に購入した生地(ゴーギャンは20メートルの生地をアルルで購入し、半分ずつ、ゴッホと分け合った)を用いています。
ゴッホにとっても大切なテーマだったひまわり
「自分にはひまわりがある」と明言するほど、「ひまわり」はゴッホにとって主要なテーマでした。また生前からゴッホの《ひまわり》は批評家から高く評価されており、自他共に認めるゴッホの「絶対的」代表作でもあります。
本作は、ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵する《ひまわり》を元にした、画家自身による「複製」ですが、ただ単に模写するだけでなく、黄色の色調や背景とのコントラスト、筆遣いなどに変化を加えており、ゴッホが《ひまわり》を何度も描くことで色彩や筆触の研究を行っていたことがうかがえます。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーの《ひまわり》
ピエール=オーギュスト・ルノワール《浴女》SOMPO美術館蔵
《浴女》は後期のルノワールが繰り返し描いた、「座る浴女」を主題とする1点です。ルノワールが51歳頃に描いた作品です。柔らかい女性の描き方や美しい色彩がいかにもルノワールという作品ですよね。
一時期古典絵画に影響されたルノワールが、再び本来の画風へ戻っていく転換期に制作されました。
親友・モネが所有していた
本作は、印象派を代表する画家クロード・モネが所有していた作品でもあります。モネは自分の作品と交換したが、2番目の妻(アリス・オシュデ)の父を介して手に入れたと考えられています。モネの死後は息子のミシェルが受け継ぎ、1950年頃に売却されました。
また、モネはこの作品とほぼ同サイズの、ルノワールによる座る浴女を描いた作品を所有していました(現在、パリのマルモッタン・モネ美術館が所蔵、制作年は1883~1888頃)。おそらくモネ旧蔵の2点は対で飾るように描かれたと考えられ、制作年に関しても従来説より10年ほど早い新説が浮上しています(従来説:1892~93年頃→新説:1883~1888頃)。
作品のポイント
・ルノワールが繰り返し描いた主題のうちの1点
・鮮やかな色彩と画風がルノワールならでは!
本作は2019年に変色したニスを除去し、額装のガラスを取り換える処置が行われました。このおかげで以前よりも鮮明に、ルノワールの色彩を鑑賞することができるようになりました。ぜひ間近でその色彩を目に焼き付けてくださいね。
多彩な作品を所蔵するSOMPO美術館。今回ご紹介した《ひまわり》は常設なので開館時はいつでも鑑賞することができます。
小林学芸員イチオシの《浴女》は、7月に開幕する「スイス プチ・パレ美術館展」で観ることができます。スイスのジュネーヴにあるプチ・パレ美術館のコレクションから38名の画家による油彩画65点を展示し、印象派からエコール・ド・パリに至るフランス近代絵画の流れを紹介する展覧会です。こちらもぜひお見逃しなく。
次回は、写大ギャラリーの自慢の名品をご紹介します。お楽しみに。