2022年11月17日

画家・大竹伸朗の“脳内”を巡る疑似体験を!【東京国立近代美術館】

大竹伸朗展/東京国立近代美術館

画家・大竹伸朗の大回顧展が東京国立近代美術館で開催中です(来年2月5日まで)。

2006年に東京都現代美術館で開催された「全景 1955-2006」以来、16年ぶりとなる大回顧展。およそ500点の作品を時系列関係なく、7つのテーマに分けて紹介し、半世紀近くにわたる大竹の創作活動を振り返ります。


展覧会会場入口。展覧会名や会場名の文字デザインも大竹によるもの

現代日本を代表するアーティスト・大竹伸朗

1980年代初めにデビューした大竹伸朗(おおたけ しんろう、1955-)は、これまでさまざまな表現方法で多くの作品を生み出してきました。絵画や彫刻、映像、インスタレーション、絵本やエッセイなどの書籍、さらには巨大な建造物と、多彩な創作活動を繰り広げ、今でも日本の現代美術を代表するトップランナーとして走り続けています。

瀬戸内国際芸術祭に足を運んだことがある人なら、香川県直島にある《直島銭湯「I♥湯」》や女木島の休校中の小学校の中庭に設置された《女根/めこん》を思い浮かべるのではないでしょうか。

その活躍は国内だけにとどまらず、ドクメンタ(2012年)やヴェネチア・ビエンナーレ(2013年)などの国際展にも多数参加し、海外でも高い評価を得ています。

作家自身の中に流れる7つの言葉をテーマに

大竹自身が「挑戦的な要素が多い」と語る本展。綿密に組まれた会場構成もそんな“挑戦”のひとつです。

「自/他」「記憶」「時間」「移行」「夢/網膜」「層」「音」という、大竹の中に消えずに流れ続ける7つのキーワードをテーマに構成されています。


「自/他」の展示風景 手前:《男》1974-75年 富山県美術館


「記憶」の展示風景 手前:《ヘッド》1988年 作家蔵

最初期の作品からコロナ禍に制作された最新作まで、500点近くもの作品で埋め尽くされた会場は圧巻のひと言です。大竹によれば、7つのキーワードはそれぞれ独立したものというよりも、各々が重なり合い、一つのものとして自分自身の中に存在するものとのこと。

本展担当キュレーターの成相肇も「7つのテーマは概念としては重なり合うものも含まれています。あくまでも一つの手がかりとして受け止めていただければ」と言います。

そんな思いもあり、7つのテーマごとに作品は配置されているものの、年代順というわけでもなく、決められた順路もありません。ゆるやかにつながるテーマを行ったり来たりしながら、まるで大竹の脳内を自由に巡るように楽しむことができます。

重ねて、貼り付けて、超高密度な大竹作品

大竹作品といえば、「重ねる」「貼り付ける」といったコラージュが特徴的です。大竹が「既にそこにあるもの」と呼ぶ他者との共同作業のような形で作品を生み出してきました。ライフワークとして日々作り続けてきたスクラップブックの数々は、その象徴ともいえるもの。ノートや既成本をベースに、雑誌やチラシの切り抜き、チケットといった印刷物などを貼り付け、さらにインクや絵の具を塗り重ねて作っていきます。中には全895ページ、重さ28.9kgという大ボリュームの作品も!

本展は、1977年に作られた1冊目から最新作まで71冊のスクラップブックがすべて展示される貴重な機会です。


《スクラップブック #68/宇和島》2014-16年 作家蔵

歴代のスクラップブックがずらりと並ぶコーナーも 手前:《スクラップブック #71/宇和島》2018-21年 作家蔵

会場内でまず目を引くのが、ドクメンタ(5年に一度、ドイツで開催される世界最大級の国際美術展)にも出品された《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》(2012年)でしょう。国内での展示は今回で2度目。なんと関東では本展が初公開となります。


《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》2012年 作家蔵

ネオンサインやトレーラー、舟などの様々な「もの」、さらには音までが重なり合うようにして一体となった小屋型のインスタレーション。小屋の中を覗いてみると、巨大なスクラップブックもあります。時にはギターが音色を奏でることも。ぜひ、いろんな角度からじっくり見てみてください。

「音」も一つの素材

大竹は「もの」だけでなく、「音」も積み重ねる一つの素材として捉えています。2階の「音」をテーマにしたセクションでは、初個展よりも前にロンドンで行ったサウンドパフォーマンスの様子をはじめ、ライブステージ自体を作品にした《ダブ平&ニューシャネル》(1999年)や8枚ものパネルを使った大型作品《ゴミ男》(1987年)など、「音」にまつわる作品を紹介。「もの」が積み重なった物質的で視覚的な層に「音」が重なって、ユニークな鑑賞体験ができます。


《ダブ平&ニューシャネル》1999年 公益財団法人 福武財団


《ゴミ男》(部分)1987年 東京都現代美術館

そして展覧会は、最新作の《残景 0》(2022年)で締めくくられます。本作は、2019年から大竹が取り組む「残景」シリーズの中でも大きな作品。細部の積み重なりに目を凝らすと、いまだ衰えぬ大竹の創作への熱量に圧倒されます。


本展で初公開となる最新作《残景 0》2022年 作家蔵

さらに見逃してほしくないのが、かつて駅舎に掲げられていた古いネオンサインを作品にした《宇和島駅》(1997年)。本展会期中、東京国立近代美術館のテラスに設置されています。日が暮れると点灯され、よりノスタルジーが漂う雰囲気に。昼と夜で変わる作品の表情も必見です。


《宇和島駅》1997年 作家蔵

「東京国立近代美術館のサインと《宇和島駅》のネオンサインが交差する感じが、ある種のコラージュ。そもそもサインというのは『既にそこにあるもの』の典型で、まさに展覧会の7つのテーマすべてが重なっているような作品であることに初めて気がつきました」と、大竹自身も新たな発見があったと明かしています。

図録をはじめ、こだわりのグッズにも注目を!

会場構成のほかに、本展のもう一つの大きな”挑戦”が図録です。「これまで見たことのない図録を作ろう」という大竹の強い気持ちが込められて出来上がったのが、超大判パノラマ紙と新聞・B全サイズの紙を駆使して「大きな作品図版の再現」を可能にした図録。「冊子の形をしているもの」という図録の固定概念が吹っ飛ばされます。と同時に、複数の素材や形態で構成されている様は、まさにコラージュの一種であり、大竹作品そのものともいえます。


展覧会図録(税込2,700円)

他にも、スクラップブックの見開きから厳選したポストカード100枚セットをはじめ、代表作《ニューシャネル》(1998年)の「大竹文字」があしらわれたTシャツやトートバッグにキャンディ缶と、展覧会オリジナルグッズが盛りだくさん! すべて大竹自身がデザイン・監修したこだわりのグッズばかりです。


手前:T-shirts「ニューシャネル」White×Gold(サイズ:S、M、L、XL)(税込5,500円)
※在庫状況によって売り切れの場合もございます。あらかじめご了承ください。

「いま世界では破壊が続いているが、ものを作って何かを作り出すパワーを感じてもらえたらうれしい」と語る大竹。

一人の画家から発せられる凄まじい創造力をぜひ会場で体感してみてください。

なお、本展は2023年5月3日~7月2日に愛媛県美術館、2023年8月5日~9月18日[仮]に富山県美術館へと巡回します。こちらもお見逃しなく!

Exhibition Information

TICKET

本展のチケットを「5組10名様」にプレゼント!
〆切は2022年12月18日まで。
※当選は発送をもって代えさせていただきます。