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2024年11月1日
レオポルド美術館 エゴン・シーレ展/東京都美術館
19世紀末から20世紀初頭のウィーンで活躍し、わずか28年と短い人生を駆け抜けた画家、エゴン・シーレ(1890-1918)。
波乱に満ちた28年の生涯を駆け抜けた画家の人生と創作の背景に迫る展覧会が、東京都美術館で開催中です。
本展では、シーレ作品の世界有数のコレクションで知られるウィーンのレオポルド美術館の所蔵品を中心に、シーレの油彩画、ドローイングなど50点を展示して画家の生涯を振り返ります。
さらに、シーレと同時代に活躍したクリムト、ココシュカ、ゲルストルなどの作家の作品も紹介します。
オーストリア美術を代表する画家の一人であるエゴン・シーレは、1890年にトゥルンに生まれました。
幼少期から絵画に対して関心を抱いたシーレ。授業中も絵を描いており、勉学に身が入らないと教員たちから指摘されていたといいます。
1906年、シーレは16歳の時にウィーン美術アカデミーに入学します。この入学は学年最年少であり、また特別扱いでした。
(右)エゴン・シーレ《イタリアの農民》1907年 レオポルド美術館蔵
(左)エゴン・シーレ《毛皮の襟巻をした芸術家の母(マリー・シーレ)の肖像》1907年 レオポルド美術館蔵
この2つの作品からも伝わってくるように、シーレは10代のうちから絵の才能があったことがうかがえます。
事実シーレの絵の才能は、当時ウィーン画壇の中心人物であったグスタフ・クリムトも認めるほどでした。
シーレのもっとも重要なパトロンであったアルトゥール・レスラーによれば、彼がクリムトに出会ったのは1907年の頃だといいます。
エゴン・シーレ《菊》1910年 レオポルド美術館蔵
シーレは当時17歳、クリムトは45歳。28歳の年の差でしたが、クリムトはシーレの父親のような友人となり、芸術家としてまだ模索中のシーレの後援者として彼の芸術に大きな影響を与えます。
そしてシーレはわずか28年という短い生涯の間に、鮮烈な表現主義的作品を残しました。
本展では、220点以上にも及ぶ世界でもっとも包括的なエゴン・シーレを所蔵するレオポルド美術館の所蔵品を中心に、油彩画、ドローイングなど合わせて50点を展示。日本で約30年ぶりにシーレの作品をまとめて紹介する、貴重な機会となります。
シーレが画家として活動した期間は、わずか10年でした。その10年間で彼は331点の油彩画と数千点のドローイングを描いたといいます。
人間の生と死、そして性という根源的な主題を表現性豊かな線描と鮮やかな色彩で描き出したシーレの作品は、自分が何者であるかを問い続け、社会や家族、自身と女性との関係に苦悩を生々しくも美しく映し出しています。
エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》1912年 レオポルド美術館蔵
本展のメインビジュアルにもなっている《ほおずきの実のある自画像》は、シーレの自画像の中でももっともよく知られた作品です。
生涯にわたり自画像を描き続けたシーレは、多様な価値観が行き交う世紀末のウィーンに対立する独自の世界に行きながら、自画像を通して自己のアイデンティティーを模索し続けました。
エゴン・シーレ《母と子》1912年 レオポルド美術館蔵
また、自画像以外に女性像もシーレの作品の中で大きな比重を占めています。
特に女性の裸体像は、シーレのドローイングの中でもっとも重要なモチーフのひとつとされています。
エゴン・シーレ《肩掛けを羽織る裸婦、後ろ姿(《回心Ⅱ》)の断片》1913年 レオポルド美術館蔵
モデルは不安定な境遇にある若い女性を起用していたシーレ。彼はそうしたモデルたちが裸体になることに対して、自然で偽りのないありのままの姿を捉えることができると考えていたといいます。
グスタフ・クリムト《シェーンブルン庭園風景》1916年 レオポルド美術館寄託(個人蔵)
本展の主役であるエゴン・シーレのほかにも、同時代に活躍したグスタフ・クリムトやオスカー・ココシュカ、リヒャルト・ゲルストルなどの「ウィーン世紀末美術」を代表する画家たちもあわせて紹介します。
ウィーン世紀末を生きた、個性豊かな画家たちの作品にも注目です。
リヒャルト・ゲルストル《スマラグダ・ベルク》1906/07年 レオポルド美術館寄託(個人蔵)
28年と短い生涯を駆け抜けた画家、エゴン・シーレの創作の全貌を紹介する本展。
1918年に当時流行していたスペイン風邪に感染し、この世を去ったシーレ。本展最後には、画家の早すぎる死によって未完となった作品《しゃがむ二人の女》も展示されています。
エゴン・シーレ《しゃがむ二人の女》1918年(未完成)レオポルド美術館蔵
人間の内面を豊かな表現力で見事に描き出したシーレの作品を、間近で観られる貴重な展覧会です。お見逃しなく。