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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
大吉原展/東京藝術大学大学美術館
東京藝術大学大学美術館(東京・上野)にて、「吉原(よしわら)」に関する美術品を国内外から集め、ていねいに考察する展覧会「大吉原展」が開催中です。
本展では、ワズワース・アテネウム美術館や大英博物館からの里帰り作品を含む、菱川師宣(ひしかわもろのぶ)や英一蝶(はなぶさいっちょう)、葛飾北斎などの絵画や錦絵を展示。
さらに、修復後初公開となる重要文化財《花魁》も展示します。
吉原は、1618年に日本橋葺屋町(ふきやちょう)に開設された幕府公認の遊廓です。
公認遊廓であった吉原には、独自のしきたりやルールが定められていました。
例えば、医者以外は馬や駕籠(かご)の使用禁止や、武士であっても刀などの刃物を持ち込むことができないなど。
吉原だけの秩序がありました。
吉原風俗蒔絵提重 江戸時代 19世紀 サントリー美術館蔵
錦絵や工芸作品など美術品のみならず、時代劇やマンガなどで現代でも広く知られている「吉原」。
美しい女性たちがつくり上げる煌びやかな吉原の経済基盤は、売春です。
吉原を支えた女性たちは、家族のためにやむを得ずおこなった借金返済のために働いていました。
日本文化の集積地、発信地としての面を持つ吉原ですが、それが売春を基盤としていた事実があります。
そうした二面性をしっかりと見定め、ていねいに考察された本展は、遊女たちが発信した江戸文化を紹介する展覧会といえるでしょう。
(右)鳥高斎栄昌《春駒》寛政5~6年(1793~94)頃 大英博物館蔵
18世紀末から19世紀初頭に板行(*)されていた大判錦絵による美人画。
その中でも特に遊女たちを描いた美人画は、「遊女絵」と呼ばれています。
*板行(はんこう):書籍・文書などを版木で印刷して発行すること。また、その印刷したもの。
吉原の遊女たちの着物や髪型、髪飾り、化粧などを描いた浮世絵版画は、当時の女性たちにとってファッション誌のようなものでした。
吉原の最先端のファッションは、江戸市中の女性たちにとってあこがれの的でもあったことが伺えます。
喜多川歌麿《吉原の花》寛政5年(1793)頃 ワズワース・アテネウム美術館蔵
美人画の名手である喜多川歌麿は、吉原の日常のようすを詳細に観察し、描いた浮世絵師のひとりです。
本展では、ワズワース・アテネウム美術館が所蔵する《吉原の花》を展示。
本作は、《深川の雪》(岡田美術館蔵)、《品川の月》(フリーア美術館蔵)とあわせて歌麿肉筆画三部作として知られています。
修復後、初の公開となる重要文化財《花魁》。「日本洋画の父」とも呼ばれる高橋由一(たかはしゆいち)の代表作です。
高橋由一 重要文化財《花魁》明治5年(1872) 東京藝術大学蔵
本作に描かれている女性は、当時全盛の花魁であった、角町稲本屋庄三郎(稲本楼)の四代小稲(こいな)です。
錦絵や美人画にみられる理想化したものではなく、小稲の姿を油彩画でリアルに描いた由一。
彼の弟子によると、完成作を見た小稲は「私はこんな顔じゃありません」と泣いて怒ったのだそう。
由一の徹底した質感描写は、「花魁」の神秘性を取り払い、遊廓に生きるひとりの女性の存在を浮かび上がらせました。
当時の遊女の姿を観ることができる貴重な作品です。
江戸風俗人形 辻村寿三郎・三浦宏・服部一郎 昭和56年(1981)台東区立下町風俗資料館蔵
人形師・辻村寿三郎と檜(ひのき)細工師・三浦宏、江戸小物細工師・服部一郎の三人の職人技が一体となって作られた《江戸風俗人形》。
江戸を中心に文化・文政時代(1804~30年頃)の妓楼(ぎろう)を念頭に創作された作品です。
それぞれの部屋には、季節に合わせた小物や調度品、人形が配置されています。
遊廓の年中行事に思いを馳せながら、細部までじっくりと鑑賞してみてください。
《江戸風俗人形》のみ、撮影OKです。
約250年続いた江戸幕府公認の遊廓「吉原」の歴史を、国内外の美術品からひも解く展覧会「大吉原展」。
吉原が描かれた美術品を紹介する展覧会は、これまで多く開催されてきました。
しかし、本展のように吉原を正面からテーマとした展覧会は、あまり例がありません。
等身大の「吉原」という遊廓の姿から、その歴史や文化を今一度、自分なりに考えてみてはいかがでしょうか。
※会期中、展示替えがあります。
前期:3月26日~4月21日
後期:4月23日~5月19日