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2024年11月1日
今回の「10分でわかるアート」では、マニエリスム期に活躍した個性豊かな画家「ジュゼッペ・アルチンボルド」について、詳しくご紹介していきます。
ジュゼッペ・アルチンボルドは、1526年にイタリアのミラノで生まれました。
彼の生まれた家庭は、かなり裕福で歴史ある貴族の家系であったことが知られています。
アルチンボルドの父ビアージは、レオナルド・ダ・ヴィンチの弟子として知られるベルナルディーノ・ルイーニと親交があったそうです。
ルイーニは、ダ・ヴィンチの死後、その作品集やスケッチを受け継いだ人物です。
レオナルド・ダ・ヴィンチについて詳しく知りたい方はこちら▼
このような環境で育ったアルチンボルドは、父から間接的にダ・ヴィンチの絵画様式を学んだと考えられています。
この経験が、後の彼の独創的な作品に大きな影響を与えたのかもしれません。
アルチンボルドの作品の中でも、特に有名なのが「四季」シリーズです。
春夏秋冬それぞれの季節を、その季節に関連する植物や動物を組み合わせて人物の肖像画として描いています。
例えば「春」は、さまざまな春の花で構成された顔が描かれています。
「夏」は果物や野菜、「秋」はぶどうや栗などの秋の味覚、「冬」は枯れ木や干し草で表現されています。
これらの作品を観ると、アルチンボルドの豊かな想像力と細密な観察眼に驚かされるでしょう。
もう一つの代表作が「ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世」です。
この作品は、ローマ神話の園芸の神ウェルトゥムヌスに扮した皇帝ルドルフ2世の肖像画です。
果物や野菜、花々で構成された顔は、まさにアルチンボルドの技巧の粋を集めたものと言えるでしょう。
これらの作品を観ると、アルチンボルドの独創性と技術の高さが良くわかります。
一見奇妙に見える絵も、よく観察すると細部まで緻密に描かれていることに気づくはずです。
他にも「大地」、「水」、「火」、「大気」の4枚で構成された「四元素」シリーズもよく知られています。
アルチンボルドの独特な「寄せ絵」風の作品は、彼が30代後半になってから生み出されたものです。
実は、それまでのアルチンボルドは、伝統的な宗教画を描いていたのです。
宗教画について詳しく知りたい方はこちら▼
30代までのアルチンボルドは、父ビアージと共にミラノ大聖堂のステンドグラスの下絵制作や、メディチ家のための仕事をしていました。
ミラノ大聖堂のアプスにあるステンドグラスには、アルチンボルドの下絵を元に作られた「アレクサンドリアの聖カタリナの物語」が今も残っています。
また、この頃アルチンボルドは、後の神聖ローマ皇帝フェルディナンド1世のために5種類の勲章をデザインしました。
残念ながらこの勲章は現存していませんが、フェルディナンド1世はこの勲章のデザインを気に入り、アルチンボルドをウィーンに招聘したのです。
これが、アルチンボルドが宮廷画家としての道を歩むきっかけとなりました。
彼の人生における大きな転換点だったと言えるでしょう。
ウィーンに招かれた後、アルチンボルドは3人の皇帝に仕えました。
最初に仕えたのがフェルディナンド1世、その後マクシミリアン2世、そしてルドルフ2世と続きます。
特に、ルドルフ2世との関係は深かったようです。
先ほど紹介した「ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世」は、ルドルフ2世を大変喜ばせたと伝えられています。
多彩な農作物で表現したことで、ルドルフ2世の統治による繁栄を称えたのです。
この作品には、アルチンボルドの高い教養が如実に表れています。
ウェルトゥムヌスという神を題材に選んだことが、彼の古典的教養の深さを示しています。
さらに、その神に皇帝を重ね合わせるという斬新な発想は、まさに宮廷画家ならではのものと言えるでしょう。
アルチンボルドの作品は、一見すると奇抜で不思議な印象を与えます。
しかし、その背後には深い教養と卓越した技術が隠されているのです。
彼の作品を観るときは、全体の印象だけでなく、細部にも注目してみてください。
果物や野菜、花々がどのように配置されているか、それぞれの要素がどのような意味を持っているのかを考えてみるのも面白いでしょう。
アルチンボルドの作品は、観れば観るほど新しい魅力に気づかされます。
機会があれば、ぜひ美術館で実物を観てみてください。
きっと、あなたも彼の独創的な世界観に引き込まれることでしょう。
【参考書籍】
・リアナ・デ・ジローラミ・チーニー (著), 笹山 裕子 (翻訳)『アルチンボルド アートコレクション』グラフィック社 2017年
・ミニマル+BLOCKBUSTER 『いちばんやさしい 西洋美術の本』 株式会社 彩図社 2021年
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