レオナルド・ダ・ヴィンチ/10分でわかるアート

「10分でわかるアート」とは?

10分でわかるアート」は、世界中の有名な美術家たちや、美術用語などを分かりやすく紹介する連載コラムです。

作家たちのクスっと笑えてしまうエピソードや、なるほど!と、思わず人に話したくなってしまうちょっとした知識など。さまざまな切り口で、有名な作家についてたっぷり知ってもらうことを目的としています。

今回は、世界で一番有名な絵画《モナ・リザ》を描いた画家、レオナルド・ダ・ヴィンチについて詳しく紹介していきます。

「この作品を作った作家についてもう少し知りたい!」「美術用語が難しくてわからない・・・」そんな方のヒントになれば幸いです。

レオナルド・ダ・ヴィンチとは

15世紀末から16世紀初頭にかけて活躍した画家、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)。世界一有名な絵画である《モナ・リザ》を描いたことで知られています。しかし、 現在まで残っている彼の絵画作品は数が少なく、そのほとんどが未完成のものです。

スフマート 10分でアート 美術コラム レオナルド・ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》1503₋06年

レオナルド・ダ・ヴィンチは1452年、イタリア・フィレンツェの郊外にあるヴィンチ村に生まれました。この「ダ・ヴィンチ」の意味は、ヴィンチ村という意味だそうです!ということは、「ヴィンチ村のレオナルド」という意味になるのかも。直訳するとずいぶんと親しみやすい響きですね。

 

ある日、ダ・ヴィンチの父・ピエロのもとに、知り合いの農夫が丸い盾を持ってきて「この盾に絵を描いてくれないか」と依頼しました。そこで、ピエロはダ・ヴィンチに「よかったら絵を描いてみないか」とその盾を渡します。

ダ・ヴィンチはその絵を描くために、部屋にさまざまな生き物を連れ込んでじっくりと観察します。そうしてできた絵は、目から火を、鼻から煙を、口から毒を吐く恐ろしいモンスターでした。

ピエロは息子の作品を見て、絵の才能があると確信します。そしてダ・ヴィンチを、フィレンツェで一番有名な工房「ヴェロッキオ工房」に弟子入りさせたのです。この時、ダ・ヴィンチは14歳。師匠・ヴェロッキオのもとで絵を学び、メキメキと上達していくと20歳で正式に一人前の画家として登録されました。

スフマート 10分でアート 美術コラム レオナルド・ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》1495~98年

《モナ・リザ》と並ぶダ・ヴィンチの代表作《最後の晩餐》。この絵を手掛けたとき、彼は43歳でした。

最後の晩餐とは、キリストが十字架にかけられる前夜に12人の弟子たちと共にした夕食のこと。このとき、キリストが「この中に裏切者がいる」と爆弾発言をした場面を描いた作品です。

ダ・ヴィンチのほかにも多くの画家が描いていたテーマ《最後の晩餐》。しかし、そのどれもが裏切者のユダだけが画面正面に描かれ、キリストとほかの11人の使徒とは区別される、という構図が一般的でした。

しかしダ・ヴィンチは本作で、キリストの発言「この中に裏切者がいる」だけでは、まだ裏切者が誰であるかバレていないという理由から、裏切者のユダもほかの使徒たちと一緒に描いています。

スフマート 10分でアート 美術コラム レオナルド・ダ・ヴィンチレオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》1495~98年(赤枠に描かれているのが「裏切者のユダ」)

ありとあらゆるジャンルを研究し、聡明だったダ・ヴィンチならではの発想ですね。

ダ・ヴィンチは、万能の美青年だった?

ダ・ヴィンチは、絵画や彫刻のみならず、建築、自然科学、哲学などあらゆる分野で革新的な研究を残しました。そのことから「万能の人」とも呼ばれています。また美青年だったらしく、若い頃はほかの芸術家たちのモデルにもなっていました。

スフマート 10分でアート 美術コラム レオナルド・ダ・ヴィンチ

ダ・ヴィンチは当時、貴族が着ていたバラ色の短い上着を好んで着ており、その姿で道を歩けば通行人が足を止めて振り返るほどの美貌を持っていたそう!

彼の師匠である芸術家・ヴェロッキオの《ダビデ像》や、フランチェスコ・ボッティチーニの絵画《トビアスと三人の大天使》に描かれた大天使ミカエルなどに、モデルとして登場しています。

青年時代の14世紀半ばのフィレンツェの画家が描いた絵を鑑賞するときは、「ダ・ヴィンチが描かれていないか」と探してみるとより楽しめるかも♪

《モナ・リザ》に使われている絵画技法「スフマート」って?

ダ・ヴィンチの代表作の一つである《モナ・リザ》は、フランスのルーヴル美術館が所蔵する目玉の展示物です。実際に観に行くと、多くの観光客の頭と分厚い防弾ガラスに囲まれているので、ちょっとガッカリしてしまいますが・・・有名人に会った気分を味わえます!一生に一度はみたい名画です。

《モナ・リザ》の「モナ」はマドンナ、つまりは婦人という意味で、直訳すると「リザ婦人」となります。モデルは、フィレンツェの名士、ジョコンダの妻というのが現在は定説となっているそう。

当時の人物画では「普通の人」の肖像画が描かれることはなく、教皇や皇族などが主題とされていました。モナ・リザも名士の妻という身分も持っていますが一般人。当時としてはとても珍しい主題です。

ダ・ヴィンチが活躍した時代から、だんだん普通の人の肖像画も描かれるようになりました!

スフマート 10分でアート 美術コラム レオナルド・ダ・ヴィンチ

神秘的な雰囲気を漂わせる本作には、「スフマート」という絵画技法が使われています。

スフマートはダ・ヴィンチが生み出したもので、りんかく線をぼやかして立体感を出していく技法です。彼はりんかくについて「ものが隣接したとき、あるいは、重なり合ったときに見える境界線」と語っています。

「物にりんかくがない」ことを理解していたダ・ヴィンチは、距離によって色調が変わることに気づき、りんかく線をぼかして薄く溶いた絵具を何回もぬり重ね、微妙に色の変化をつけていくスフマート技法から「空気遠近法」を生み出します。彼が生み出した「空気遠近法」により、対象物の立体表現や空間表現が自然なものになりました。

おわりに

レオナルド・ダ・ヴィンチについて、さまざまなエピソードをご紹介しました。

私たちが運営するアートメディア「Sfumart(スフマート)」は、ダ・ヴィンチが生み出した絵画技法「スフマート」が由来になっています。彼が生み出したこの技法のように、ていねいに層を重ね、深みのあるサイトになるよう、願いを込めてこの「スフマート」という名前を付けました。

アートやカルチャーについて、これからもていねいに伝えていきますので、応援いただけますと幸いです。

 

次回は、レオナルド・ダ・ヴィンチが活躍した「ルネサンス期」について紹介します。お楽しみに!

【参考書籍】
・早坂優子『巨匠に教わる 絵画の見かた』株式会社視覚デザイン研究所 1996年
・早坂優子『鑑賞のための 西洋美術史入門』株式会社視覚デザイン研究所 2006年
・早坂優子『101人の画家 生きてることが101倍楽しくなる』株式会社視覚デザイン研究所 2009年