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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
スフマートでは、「つくる」「つたえる」という2つの視点をもとに、アートに関係するさまざまな人へのインタビューを隔週・前後編でお届けします。
2015年、天王洲アイルにオープンしたPIGMENT TOKYO(ピグモン トーキョー)。壁一面に並べられた約4,500色におよぶ顔料をはじめ、墨、膠(にかわ)、筆など古今東西の希少かつ良質な画材を取り揃えており、PIGMENT TOKYOに足を運ぶために来日する海外からのお客さんも珍しくありません。
今回お話を伺うのは、PIGMENT TOKYOの渡邊和(わたなべ いずみ)さん、能條雅由(のうじょう まさよし)さんです。
PIGMENT TOKYOの能條雅由さん(左)、渡邊和さん(右) ※撮影時、マスクを外していただきました。
熟練者好みの商品ラインアップでありながら、鮮やかな顔料が並ぶセンスが光る館内の雰囲気はまるでギャラリーのようで、ふらっと立ち寄りたくなります。
そんな唯一無二の空間が誕生した経緯や哲学について、お二人からお聞きしました。
──まずは寺田倉庫とPIGMENT TOKYOについてお聞かせください。
社名にも“倉庫”とありますが、はじめは政府の備蓄米を保管する倉庫事業からスタートしました。美術品の保管サービスは1975年から始まった事業で、もともとは自宅に収納しきれない美術品を始めとした家財を対象にしていました。
寺田倉庫では、ただ美術品をお預かりするのではなく、その作品の価値も含めてお預かりする、ということを重視しています。お預かりした美術品の保管や修復にとどまらず、コレクターズミュージアムを開設して、コレクターの方からお預かりするアート作品を一般の方の目に触れてもらえるような機会も設けてきました。
美術品の価値をいかに次世代につなげられるかを模索しながら日々取り組んでいます。
PIGMENT TOKYOは、顔料や膠、筆や刷毛といった「画材」と、それらの「用法」、そして両者の組み合わせによって生み出される「表情」について、独自のアプローチで研究や教育、普及活動を行っています。
古今東西、伝統のものから最先端のものまで幅広い画材を取り揃えており、希少価値の高い硯(すずり)や筆などを資料として収集、保管、展示し、ミュージアムのような役割も担っています。
さらには最先端の画材や技法も含め、興味のある方向けに講座やワークショップの開催、企業向けのレクチャーやコラボレーションを通して、新たな表現の場と可能性を広げています。
──倉庫事業から、PIGMENT TOKYOを構想した背景を教えてください。
能條:美術品の保管を行っているなかで、寺田倉庫では「伝統的な画材や技術の継承、発展にも力を入れたい」という考えにたどり着きました。
現在でも画材の専門店はありますが、後継者不足や原材料の問題、伝統産業全般の衰退などさまざまな要因から、和紙や筆といった伝統的な画材・技法を維持することが難しくなっていました。この流れに歯止めをかけるため、「長年日本で紡がれてきた技術や文化を守ろう」ということを強く意識するようになったことが、PIGMENT TOKYOを構想する大きな原動力のひとつになったと思います。
──構想から実現にいたるまでは、さまざまなチャレンジがあったのでしょうか。
能條:PIGMENT TOKYOのような施設は前例がなく、非常に挑戦的な試みでした。また、参考になるモデルもほとんどない状態からの構想だったため、「何を目的とした施設にしたいのか?」「どういう問題をどのように解決するのか?」という哲学やビジョンの明確化、さらにそれらをメンバー間で共有・すり合わせすることに重きを置きました。
渡邊:館内の構想ですと、「商材をどのようにセレクトしていくのか」という点はかなり考えました。バリエーション豊富な岩絵具をこれだけ揃えることができたのは、PIGMENT TOKYOの立ち上げに携わっていただいた方がさまざまな画材メーカーと親交があったおかげです。
さまざまなアーティストが立ち上げに携わったからこそ、画材メーカーさんに信頼していただいていた点は大きいのではないかと思います。
──これだけ画材の種類があると、専門的な知識が求められそうですね。PIGMENT TOKYOではどういった方が働いているのでしょうか。
渡邊:アーティスト活動と並行して現場に立っているスタッフが多いです。油絵系や日本画系など専門分野は異なりますが、スタッフ全員美術のことに関しては精通しています。また、レベルアップを図るため専門外の分野を学べる勉強会を定期的に開いています。
画材店、と聞くと、ひとつの空間にびっしりと画材が並んでいるイメージですが、PIGMENT TOKYOはお客様とコミュニケーションを取りやすい、ゆとりのある空間デザインになっています。
専門性の高いスタッフといろいろお話ができるところも、PIGMENT TOKYOならではの強みだと考えています。
──目を引くスタイリッシュな空間ですが、アートにそこまで詳しくない方も来館されるのでしょうか。
能條:さまざまなお客様がいらっしゃいますよ。アカデミー、ミュージアム、ショップを備えた施設ですので、販売している画材はもちろん、館内に並ぶ貴重な画材を見ていかれる方もいますし、スタッフとお話をする中で、「週末にはワークショップを開催しているんですよ」とお伝えすると、実際に興味を持って参加していただき、実際に創作を始めるお客様もいます。
“プロの作家に向けた材料の提供”を使命にはしていますが、唯一無二の伝統画材ラボとして、ふだんあまり絵を描かれない方にも、芸術・美術の面白さや楽しさを伝えられる場所づくりをしています。
2021年8月から12月には、隣接する寺田倉庫G1ビルで、“バンクシーって誰?展”が開催されましたが、天王洲アイル周辺では、多様なジャンル・規模の展覧会が開催されています。近くに“WHAT CAFE”という新進アーティストの作品を鑑賞・購入できるカフェもあり、アートに触れるために天王洲アイル駅を降りて、たまたまPIGMENT TOKYOを見つけて来館されるケースはとても多いです。
──天王洲アイルは芸術に明るい街なのですね。
能條:かつてはオフィス街で週末は閑散としたようすでしたが、“アートになる島、ハートのある街”という街の再開発のスローガンのもと、行政を中心に周辺の民間企業と協力しながら街づくりを進めてきたことで大きく変わりましたね。
2019年からは“TENNOZ ART FESTIVAL”が開催され、街のいたるところに約16点ものパブリックアートも展示しており、街中を歩くだけでも芸術に触れられるようデザインされています。
また、運河沿いの護岸がされたことで、マルシェやイベントが開催できるようになりました。天王洲アイルは東京のなかでも人混みが少なく、水を近くに感じられる穏やかなロケーションです。天王洲アイルをアートの魅力を伝える発信源として、PIGMENT TOKYOもともに盛り上げていけるよう、今後も尽力していきます。
美術品の保管から生まれた発想が大きな原動力となって生まれたPIGMENT TOKYO。豊富な画材はもちろん、世界的建築家・隈研吾氏によるユニークな内装デザインにも注目ですよ。
次回の記事では、コロナ禍における芸術の在り方について話を伺います。お楽しみに。
PIGMENT TOKYO
住所:東京都品川区東品川2-5-5 TERRADA Harbor Oneビル1F
アクセス:りんかい線「天王洲アイル」駅から徒歩3分/東京モノレール「天王洲アイル」駅から徒歩5分
公式サイト:https://pigment.tokyo/