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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
スフマートでは、「つくる」「つたえる」という2つの視点をもとに、アートに関係するさまざまな人へのインタビューを隔週・前後編でお届けします。
東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」のすぐ近くにある泉屋博古館東京。中国の青銅器をはじめ、日本美術や西洋美術などの多種多様な住友家の美術品コレクションが鑑賞できる美術館です。
2022年3月にリニューアルオープンし、展示スペースの拡張、講堂やミュージアムショップ、カフェといった施設も新たに加わりました。
泉屋博古館東京 橋本旦子さん ※撮影時、マスクを外していただきました。
今回お話をお聞きしたのは、泉屋博古館東京の広報を担当する橋本旦子さんです。
開館の経緯からコレクションの由来や近隣のおすすめスポットまで、いろいろお聞きしました。
──泉屋博古館東京はどのような経緯で開館したのでしょうか。
当館は2002年に、京都の泉屋博古館の分館として住友家の麻布別邸の跡地にオープンしました。
この地域で大きな再開発が計画され、「住友グループの文化発信の拠点を東京にも置きたい」というお話があがったそうです。そこで別邸の庭を残しつつ、この美術館が作られました。
当館が建つ周辺はかつて、大名屋敷が立ち並ぶ町でした。住友家のほかにも、岩崎家や三井家の邸宅があったり、この近辺にある各国の大使館にも屋敷跡に建っていたりします。
住友家はもともと関西が拠点ですが、この麻布別邸を東京でのビジネスや社交、家族が住まう場所として活用していました。その頃の記憶も残しつつ、住友コレクションの作品を中心にご覧頂ける美術館として開館し、今年で20年目を迎えます。
──住友家の別邸跡地で、同家のコレクションが堪能できるのはすてきですね。館として大切にしていることを教えていただけますか。
展覧会では、必ず住友家にゆかりのある作品を展示し、住友コレクションとのつながりを紹介しています。今回のリニューアルで新たに作ったロゴマークにも、その思いがこもっています。
館名表記のロゴタイプは、東京と京都で異なりますが、中国古代の青銅器に表わされた文字、金文の字体で「泉」の字をデザイン化したシンボルマークは2館共通のものです。私たちの活動の根源が、住友コレクションの中核をなす青銅器、そして江戸時代の住友の屋号にちなむ泉屋(せんおく)という館名の「泉」にあることを、シンボルマークのデザインを決めるなかで再確認しました。
──「泉屋博古館」と書いて「せんおくはくこかん」と読むのは、何か由来があるのでしょうか。
中国の宋の時代、当時の皇帝が所有していた青銅器図録に「博古図録(はくこずろく)」というものがあります。その「博古」と、住友家の江戸時代の屋号だった「泉屋」を音読みにして組み合わせた「泉屋博古(せんおくはくこ)」という言葉が住友コレクションを象徴する言葉で、当館の館名のもとになっています。「泉屋博古」は館蔵品図録のシリーズのタイトルでもあります。
──「住友コレクション」を大切にされているのですね。京都と東京を合わせると、コレクションはどれくらいの数になりますか。
約3500点を所蔵しています。主に当館のコレクションの礎を築いたのは、15代目当主にあたる住友春翠(しゅんすい)です。公家の徳大寺家出身である春翠は、1892年に住友家に養嗣子として迎えられ、家業の近代化と発展に尽力した人物です。
住友家は江戸時代から銅の製錬業で発展したこともあり、春翠は中国古代青銅器の研究や収集にとても熱心でした。邸宅にコレクションの陳列室を作り、青銅器を来客に披露していたといいます。
──やはり青銅器がコレクションの中でも核となる存在なのですね。青銅器のほかにも披露されたものはあるのでしょうか。
春翠は茶道や能もたしなんでいたので、それに関係するお道具類も今に伝わっています。また、欧米視察後は洋館での暮らしも取り入れるようになりました。神戸の須磨に別邸を建て、その洋館に飾る洋画のコレクションも増やしていきました。
邸宅美術館のような須磨別邸で若い画家や近隣の子どもたちに見せて学びの機会を作ったり、画家の洋行も支援したりしていました。洋画に関しては、春翠の子息たちのコレクションも含まれています。
また、春翠は青銅器をただ楽しむだけでなく、写真を撮って比較や分類を行い、その研究成果を『泉屋清賞(せんおくせいしょう)』という図録にまとめ上げたりもしています。
研究も含めた収集や、コレクションの公開など、今の私たちの活動のもとになっているのではないかと思います。
──リニューアルを機に「泉屋博古館東京」と改名されましたよね。これにはどんな思いが込められていますか。
当初は、京都の泉屋博古館の収蔵品を東京で見られる、小さな「分館」として開設されました。ですから、ひとつの美術館として見ると規模が小さめでした。
休館に入る2019年まで、色々工夫しながら運営してきましたが、今回のリニューアル工事では、経年劣化した設備の修繕や更新だけではなく、より多くのお客様にご来館いただき、快適にお過ごしいただける施設にすることが大きな目標でした。お客様の声や内部スタッフの要望も踏まえ、ひとつの美術館としての機能を備えた「東京にある“泉屋博古館”」という美術館として再出発するにあたり、「泉屋博古館東京」と館名を改めました。
──そうだったのですね。東京と京都がそれぞれ所蔵する作品が行き来することもあるのでしょうか。
毎回ではありませんが、展覧会の企画内容により、年に数回行き来があります。リニューアル後第1弾の「日本画トライアングル」と第2弾の「光陰礼讃」は、東京館の所蔵品で構成する展覧会ですが、今後は京都本館の所蔵品をミックスさせた企画展も予定しています。
──それは楽しみです! 京都と東京、それぞれの泉屋博古館の魅力についてもお聞かせください。
開館60周年を迎える京都の泉屋博古館は、緑に囲まれた広大な環境の中で、ゆったりとした気持ちで美術品をお楽しみ頂ける場所です。特に、住友コレクションの核となる中国古代の青銅器を多数展示している青銅器館では、歴史を感じながら、その精緻な美しさに触れていただけると思います。
泉屋博古館東京は、六本木という都会の中でも閑静で落ち着いた雰囲気が魅力です。館内施設もコンパクトにまとまっていますので、ふらっと気軽にお立ち寄りいただける美術館だと思います。近隣にも素敵な美術館が複数あるので、はしごされるお客様も多くいらっしゃいます。
──確かに、六本木は魅力的な美術館が多いですよね。近隣のおすすめスポットもお聞きしたいです!
このエリアは本当に魅力的な場所が多く、全部おすすめしたいのが本音です。当館のお客様は、大倉集古館と菊池寛実記念智美術館と一緒に回ってくださる方が多いです。
ここ数年、3館はほぼ入れ違いで休館となりましたが、今年の6月から3館同時に楽しんでいただけるようになりました!
また美術館ではありませんが、もう少し足を延ばしていただいたところに、港区立みなと科学館があります。お子さんだけでなく大人も楽しめる施設で、個人的にオススメです。
──このエリアへお出かけしたら、充実した1日が過ごせそうです。
この地域には大使館もたくさんあります。お隣のスペイン大使館でも展覧会がよく開かれます。毎年10月初旬にはサントリーホールや赤坂アークヒルズを中心に、まちのあちこちで音楽が楽しめる「ARK Hills Music Week」という催しもあります。当館でもミュージアムコンサートを開催します。機会がありましたらぜひ、お越しください。
個性を持つ美術館がたくさんある六本木。お出かけすれば、充実した時間が過ごせそうですね。そうした環境も、泉屋博古館東京を訪れる楽しみを形作る要素のひとつになっているのもかもしれません。
後編では、リニューアルでの変化や今後の取り組みを中心にお話をお伺いいたします。どうぞお楽しみに!
(次回後編:2022年7月18日 更新予定)