塩田千春の作品から他者との「つながり」を考える。圧巻のインスタレーションに注目
2024年10月3日
フローラとファウナ 動植物誌の東西交流/東洋文庫ミュージアム
長崎のオランダ商館につとめたドイツ人医師フランツ・フォン・シーボルトの来日から200年にあたる2023年。これを記念し、東洋文庫ミュージアムでシーボルトの代表的な著作などを紹介する展覧会が開催中です。
本展では、シーボルトの代表的な著作『日本(NIPPON)』『日本動物誌』『日本植物誌』のほか、シーボルトに先行して日本をヨーロッパに紹介したオランダ商館医たちの著書もあわせて展示。日本と西洋それぞれの自然に関する学問の発展を紹介します。
動物や植物、鉱物をはじめ、自然界に存在するありとあらゆるものを総合的に研究する学問である「博物学」。その起源は、アリストテレス、プリニウスといった古代ギリシャ・ローマの学者が、自然化の事物・事象に関する知識を集め、整理してまとめたことが始まりとされています。
しかしヨーロッパでは、14世紀にイタリア・フィレンツェを中心に始まる「ルネサンス(古典文化復興)」が広がっていくまでは、薬物に関わることを除き、あまり発展がみられなかった学問だったといいます。
『本草網目』李時珍撰 1596(万歴24)年 金陵刊 初版
一方、東アジアでは、薬になる自然物とその利用方法、効能に関する学問「本草学(ほんぞうがく)」が中国で誕生し、展開していきました。
『本草網目』は、日本に大きな影響を与えた中国の本草書です。
初版の完本は現存7点のみで、なんと本書はそのうちの1点なのだそう!日本には江戸時代初頭に輸入された本書。その後、広く普及しました。
歴史の教科書でもお馴染みの人物、シーボルト。彼の名前を聞いてパッと思いつくのは、故郷のドイツに帰る際、当時国外への持ち出し厳禁だった日本地図などを持ち出そうとした「シーボルト事件」ではないでしょうか。
そんなシーボルトは今から200年前の1823年に、長崎の出島にあったオランダ商館の医師として赴任しました。
彼の本当の目的は日本の歴史や国土、社会制度、物産などについての総合的な自然科学の調査をするための来日だったそうです。
『日本動物誌』フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト 1833-50年 ライデン刊
シーボルトの代表的な著作のひとつである『日本動物誌』は、シーボルトが帰国後にライデン博物館の動物学者の協力を得て、日本滞在中に集めた標本や資料を整理し、17年の歳月をかけて刊行された本です。
全4冊あるという本書。約820種の動物が4000点以上の図版を用いて紹介されています。
展示では、ニホンザルのページを紹介!細かな特徴まで見事に描かれています。
『日本植物誌』フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト 1835-70年 ライデン刊
また、約35年もの歳月をかけて制作された『日本植物誌』も展示。本書は、シーボルトが日本の植物学者たちの協力を得て収集した植物標本をもとに、ドイツの植物学者ツッカリーニを共同研究者にむかえてまとめた図鑑です。
約200年前の図鑑ですが、その色の鮮やかさは健在!細かい葉脈の色などもきれいに残っているので、展示室でじっくりと観察してみてください♪
東洋文庫には、創設者である岩崎久彌(ひさや)旧蔵の日本・中国の古典籍群「岩崎文庫」と、オーストラリア出身のジャーナリスト、モリソンが収集した欧文資料群「モリソン文庫」の2つの代表的なコレクションがあります。
本展では、岩崎文庫・モリソン文庫の和洋の図鑑・図譜のコレクションから、19世紀に制作されたものを中心に厳選して紹介します。
いずれも学術的な価値の高い内容である東洋文庫の貴重な蔵書たち。
色鮮やかな動植物の図版や、今では日常的にみる動植物を初めてみた人の視点で描いたユニークなものなど、専門的な知識がなくても、それぞれの図版が持つ新しい魅力を楽しむことができますよ。
シーボルト来日200年を記念し、東西それぞれの自然に関する学問の発展、知識の交流などを紹介する本展。
「博物学」と聞くと、「ちょっと難しいのかな?」と思いますが、本展は視覚的に楽しめる展覧会です。
当時の人がどのように自然を観察して、人びとに伝えていったのか。そんなことに思いを馳せながら、じっくりと1冊ずつ鑑賞してみては?