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2024年11月21日
「10分でわかるアート」は、世界中の有名な美術家たちや、美術用語などを分かりやすく紹介する連載コラムです。
作家たちのクスっと笑えてしまうエピソードや、なるほど!と、思わず人に話したくなってしまうちょっとした知識など。さまざまな切り口で、有名な作家について分かりやすく簡単に知ってもらうことを目的としています。
今回は、多くの人が触れたことのある「百人一首」について詳しくご紹介。
「この作品を作った作家についてもう少し知りたい!」「美術用語が難しくてわからない・・・」そんな方のヒントになれば幸いです。
歌川豊国《古今名婦伝 小野小町》1859年 国会図書館
多くの人が一度は目にしたことがある百人一首。学校の国語の授業で習ったことがあるという人も多いのではないでしょうか。
百人一首とは、古代から鎌倉時代までの百人の優れた歌人が詠んだ歌を集めたものです。
1235年頃、藤原定家によって編さんされました。一般的に百人一首と言えば、この藤原定家が編さんした「小倉百人一首」のことを指します。
百人一首の由来は、定家が息子為家の妻の父親にあたる宇都宮頼綱(うつのみやよりつな)に頼まれたことから始まっています。
京都嵯峨野にある小倉山のふもとにあった頼綱の山荘のふすまを飾るために、歌を百種選びました。その歌を色紙にしたそうです。
百人一首の歌のテーマは、男女の恋愛や人生への想い、季節の情景などさまざま。
五・七・五・七・七の三十一文字で、これらのテーマをぎゅっと濃縮してつづられています。
その内容は時を経ても共感を呼び、江戸時代やそれ以降にも、百人一首を題材にしたさまざまな作品が生まれました。
豊原国周||筆 《六歌仙狂画墨塗》1880年 東京都立図書館
古代より日本ではさまざまな場面で歌が詠まれてきました。
その時代に合わせてそれらの歌を集めた書籍が編さんされ、多くの歌が残されています。それらの中でも優れた歌を詠む人が「歌仙」です。
この「歌仙」という言葉は『古今集』で柿本人麻呂が、歌のうまい山部赤人(やまべあかひと)を「和歌仙(わかのひじり)」と呼んだことから生まれたと言われています。
さまざまな歌仙が選ばれてきましたが、現代でもとりわけ有名なのは六歌仙でしょう。
六歌仙は『古今和歌集』の中で紀貫之が、特に優れた歌を詠む人として選んだ6人です。
この6人の中で、百人一首に歌が選ばれているのは大友黒主以外の5人。中には聞いたことのある名前もあるのではないでしょうか。
歌川豊国(1世)||画 《三美人 小野小町》1813年 東京都立図書館
「絶世の美女」と言われた小野小町は名前や歌は伝わっていますが、どのような人だったのか、生没年などは不明です。
それだけ優れた歌を詠んだということかもしれません。
藤原公任が選んだ三十六歌仙にも選ばれており、平安時代を代表する歌人です。
また、恋の歌を詠んだことで知られている在原業平。百人一首では、昔の気持ちを思い出して詠んだ歌が選ばれました。
国語の教科書でおなじみの『伊勢物語』の主人公ともされています。
在原業平も小野小町と共に三十六歌仙にも選ばれており、やはり注目された歌人の一人だったと言えるでしょう。
葛飾北斎《百人一首乳母か絵説 在原業平》
時を経ても百人一首はすたれることなく、多くの人を魅了し続けています。
百人一首を使ったかるたは江戸時代頃には庶民にも広がり、多くの人の娯楽の一つになりました。
百人一首を題材にしたものはかるただけではなく、浮世絵などにも取り入れられています。
その中でもよく知られるのが葛飾北斎の《百人一首乳母がゑとき》です。
これは百人一首の和歌の内容を乳母が子どもに絵で説明するという形で、和歌を説明している作品集です。
右上に和歌が書いてあり、その内容を表す絵が描かれていますが、そこに登場する人たちは江戸時代の人の姿をしています。
葛飾北斎《百人一首乳母かゑとき 猿丸太夫》
この《百人一首乳母かゑとき》は、最初の企画では全百図を目指していたようです。
実際に葛飾北斎はほぼ全部の下絵を完成させていたと言われています。しかし実際に出版されたのはわずか二十七図です。
なかなか多くの人には受け入れられなかったのかもしれません。このころに北斎は錦絵を辞めてしまったと考えられています。
江戸時代の葛飾北斎だけでなく、それ以外にもさまざまな人が百人一首を題材にした作品を制作してきました。
それらの作品を所蔵している美術館があります。
例えば、京都市にある「嵯峨嵐山文華館」は百人一首ミュージアムとも呼ばれています。
常設展示では百人一首にまつわる作品を展示しており、百人一首について詳しく知ることができるでしょう。
また箱根にある「岡田美術館」では重要文化財《色絵竜田川文透反鉢》を見ることができます。
さまざまな美術館で百人一首にまつわるテーマの展示が行われることもあり、今も多くの人が百人一首に心を惹かれているのが伝わりますね。
百人一首は子どもの頃から学校で習ったり、漫画などで読んだりと、身近に感じている人もいるのではないでしょうか。
それは昔の人も変わらず、さまざまなシーンで百人一首が人びとの心をとらえてきたことがわかります。
また百人一首の歌とそれをモチーフにした作品を楽しむことで、より奥深く楽しめるはずです。
まずは百人一首の歌を読み返してみませんか?そしてそれにまつわる作品を探してみましょう。
今まで知らなかった世界を知ることができるかもしれません。
【参考書籍】
・田辺昌子 『もっと知りたい浮世絵』 株式会社東京美術 2019年
・吉海直人 『漫画で楽しく歌を味わう百人一首』 株式会社ブティック社 2010年