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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
邸宅の記憶/東京都庭園美術館
本館1階 第一応接室
大切に保管された数々のフィルム、そこには在りし日の「旧朝香宮邸」で暮らした人びとの姿が刻まれていました。
東京都庭園美術館の「建物公開」は、春の風物詩とも言える毎年恒例の企画展です。
年に1度、1933年に竣工した本館の建物自体を純粋に楽しめる、またとない機会と言えます。
今回は「邸宅の記憶」と題して、過去にここで日々を営んだ人に焦点を当て、写真や映像資料などを展示しています。
また、宮家の歴史を象徴する貴重なボンボニエールの公開にも注目です。
建物公開展とは、美術館の建築そのものが主役となる展覧会です。
アール・デコの世界観を心ゆくまで楽しめる邸宅の室内装飾が見どころで、毎回テーマを変えて開催しています。また、家具や調度品で当時の空間を蘇らせる「再現展示」も必見です。
通常は窓が閉じている部屋も建物公開では窓が開いているので、今まで気づかなかった景色に出会えるかもしれません。
本館2階 ベランダ
また、4月から6月にかけては、庭園の美しい風景や新緑を眺められるベストシーズンでもあります。
さらに、ふだんはできないことが多い写真撮影も建物公開に限っては可能です。
展示はもちろんのこと、建物のディティールも写真を撮りながら楽しめます。
本館2階 北の間
東京都庭園美術館の一番の特徴は、アール・デコ建築です。
本館は旧朝香宮邸を改装したもので、国の重要文化財にも指定されています。
アール・デコとは、1910年代半ばから1930年代にかけてアメリカやヨーロッパで流行した装飾様式を指します。
直線や記号を用いた幾何学図形や、コントラストの強い色使いが特徴で、館内では随所にそのようなアール・デコの様式美が観られます。
1階大広間から二階広間へと至る階段
1階 大食堂の壁面と家具
朝香宮家とは、1906年に創立した宮家の1つです。
朝香宮夫妻はアール・デコ全盛期のフランスに長期滞在し、その美しさに魅せられて、日本で新邸を建設するにあたってアール・デコ様式を取り入れました。
主要な部屋の設計はフランス人装飾美術家のアンリ・ラパンが請け負い、ルネ・ラリックなどのガラス工芸デザイナーも携わりました。
建設は宮内省の内匠寮(たくみりょう)が担当し、現在の建物はほぼ当時のままだといいます。
アンリ・ラパン《花瓶》1925年頃 東京都庭園美術館蔵
ルネ・ラリック《パイナップルとザクロ》
今回は「邸宅の記憶」をテーマに掲げ、そこに暮らした人の記憶・記録に焦点を当てています。
展示品には宮家の人びとが実際に使っていた道具などが含まれ、仕えていた人の記録書なども公開されています。
《小袖 紅縮緬地菊尾長鳥の丸文様刺繍》1900-1920年 青梅きもの博物館蔵
書斎の再現展示では殿下が好きだったというミモザの花を飾ったり、趣味だったゴルフの道具をエピソードとともに展示したりと、邸宅の人に寄り添う温かさが感じられます。
2階 書斎
《ゴルフクラブ》 公益財団法人鍋島報效会蔵
《写真アルバム》1920-30年代 個人蔵
また、当時の職人が手がけたこだわりの装飾を触って楽しめるハンズオン展示もあります。
植物紋様のレリーフ(レプリカ)
本展では朝香宮允子妃や千賀子妃が着用した衣装が、特別にここ東京都庭園美術館へ「里帰り」してお披露目されます。
《留袖 黒綸子地檜扇に花紋様》1938年頃 青梅きもの博物館蔵
その他にも、初公開の家具《ウォッシュスタンド》と《ワードローブ》にもご注目。
ようやく修理が完了し、この機会に初めてお目にかかれます。
(写真左)《ウォッシュスタンド》
《ワードローブ》
本展では愛らしいボンボニエールが312点も出品されています。
《ボンボニエール 一式》明治~平成 ギャルリー・グリシーヌ蔵ほか
ボンボニエールとは慶事の際の贈答品の1つです。
由来は西洋の小型菓子器ですが、日本の伝統技術を駆使した皇室独自の文化として発展を遂げました。
その可愛い見た目と精緻な造形に心が奪われます。
《ボンボニエール 一式》明治~平成 ギャルリー・グリシーヌ蔵ほか
新館では、映像「よみがえる宮家の肖像」が放映されています。
その中に出てくる湛子女王、紀久子女王が婚礼の際に贈られたボンボニエールも観られます。
《ボンボニエール 一式》明治~平成 ギャルリー・グリシーヌ蔵ほか
建物公開展では、いろいろな部屋を巡ってお気に入りの空間を見つけてみましょう。
たとえば、2階の妃殿家寝室はお妃らしいふんわりしたピンクの色使いとフリルの装飾が魅力的です。
キャプションの解説文を読めば、さらに理解が深まるでしょう。
2階 妃殿家寝室
また、今回は通常非公開のウィンターガーデンが特別に公開中です。
観られるのは2019年の建物公開ぶりとのこと。ぜひ足を運んでみましょう。
3階 ウィンターガーデン
「私のときはこんなだったのよ」
紀久子女王が後に自分の息子に呟いた言葉です。
姉の婚礼では煌びやかな銀色のボンボニエールが贈られましたが、戦時下で行われた自身の婚礼の儀は規模が縮小し、ボンボニエールも木製だったといいます。
母は病に倒れ、姉は嫁ぎ、父と兄は戦地へ。
広大な邸宅で紀久子女王は一人、どのような思いでいたのでしょうか。それでも、フィルムには笑顔の姿と幸せな日々がたしかに残されていました。
アール・デコの美しい建物の中で、かつて暮らした宮家の人びとの記憶に触れ、その追想に思いを馳せてみませんか。
なお、本展は日時指定予約制です。来館の際は、チケットの予約をお忘れなく。
1階 小食堂
また、東京都庭園美術館は今年の10月1日で開館40周年を迎えます。
今後のイベントや告知情報は特設サイトにて紹介されます。そちらをご確認ください。