内藤コレクション 写本/国立西洋美術館

上野で中世の彩飾芸術である「写本」の美を堪能【国立西洋美術館】

2024年6月18日
内藤コレクション 写本 - いとも優雅なる中世の小宇宙/国立西洋美術館

《時祷書零葉》 フランス、ノルマンディー地方(おそらくクータンス) 1420-30年頃 内藤コレクション 国立西洋美術館蔵

国立西洋美術館にて、「内藤コレクション 写本 – いとも優雅なる中世の小宇宙」が開催中です。

本展で紹介されている「写本」とは、人の手によって書かれた本のことです。

印刷技術のなかった中世ヨーロッパにおいて、写本は人びとの信仰を支え、知の伝達を担う主要な媒体でした。

人の手によって一文字ずつ書き写して作るため、完成までに長い時間がかかり、ぜいたく品であった「写本」。

さまざまな絵や飾りが描かれ、美術品としても楽しまれてきました。

本展では、国内美術館最大級の写本コレクション「内藤コレクション」を中心に、約150点を一堂に展示。
その美しい中世の彩飾芸術の魅力に迫ります。

「内藤コレクション」とは

フラーテ・ネブリディオの追随者(彩飾) 《ミサ聖歌集零葉》 イタリア、ヴェネツィア(?) 1470-80年頃 内藤コレクション(長沼基金) 国立西洋美術館蔵

内藤コレクションとは、筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史氏が集めた作品のこと。
2015年度に国立西洋美術館は、写本零葉(しゃほんれいよう)を中心とするコレクションを一括でゆずり受けました。

また、内藤氏の友人である長沼昭夫氏からも支援を受け、同館では現在約180点を収蔵しています。

国立西洋美術館では、2019-20年度に3期にわたり開催した小企画展で、内藤コレクションを紹介してきました。

しかし、コロナ禍のさなかでもあったため、それらは小規模なものにとどまったと言わざるを得ません。

本展は、こうした事情をふまえて、改めて内藤コレクションの作品の大多数を一堂に展示し、紹介する展覧会です。

国立西洋美術館では初の大規模な写本展となります。

写本にはどんなことが書いてあるのだろう

本展で観られる写本のほとんどは、零葉と呼ばれる本や冊子から切り離された1枚の紙です。

現代の紙の多くは、植物からつくられますが、この頃のヨーロッパでは、羊などの動物の皮を薄く伸ばした「獣皮紙(じゅうひし)」などが使われていました。

「羊皮紙」という言葉を聞くと、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。
魔法の呪文が書かれていそうなイメージですが、内容はキリスト教に関するものが書かれています。

聖王ルイ伝の画家(マイエ?)(彩飾)《『セント・オールバンズ聖歌』零葉》 フランス、パリ 1325-50年 内藤コレクション 国立西洋美術館蔵

内藤コレクションの聖書写本の中心を形成するのは、13世紀のイングランドおよびフランスで制作された作例です。

カトリックの教会や修道院で聖職者が行う祈りのことを「典礼(てんれい)」と言い、特に1日8回決まった時間に行うものを「聖務日課」と言います。

フランチェスコ・ダ・コディゴーロ(写字) 《ジョルジョ・ダレマーニャ(彩飾)『レオネッロ・デステの聖務日課』零葉》 イタリア、フェラーラ 1441-48年 内藤コレクション 国立西洋美術館蔵

世俗の信徒のために贅を尽くして制作された華やかな作例。繊細で遊び心あふれる彩飾に注目です。

小企画展も一緒に鑑賞してみよう

小企画展「西洋版画を視る―リトグラフ:石板からひろがるイメージ」 展示風景

国立西洋美術館の版画素描展示室にて、小企画展「西洋版画を視る―リトグラフ:石版からひろがるイメージ」(2024年9月1日まで)が開催中です。

「西洋版画を視る」シリーズの3回目となる本展では、「リトグラフ(石版画)」を取り上げて紹介。

リトグラフならではの描写に注目しながら、その歴史を辿り、多様で豊かな表現の魅力に迫ります。

オディロン・ルドンやピエール・ボナール、アルフォンス・ミュシャなど、有名な画家の版画作品を観ることができますよ。

本館から新館「19世紀の絵画」展示ゾーンをつなぐ渡り廊下

会場の「版画素描展示室」は、新館の常設展ゾーン「19世紀の絵画」の展示室を抜けた先にあります。

目印は、国立西洋美術館の収蔵品を代表するクロード・モネ《睡蓮》。会場はこの《睡蓮》の先です。

クロード・モネ《睡蓮》1916年 松方コレクション 国立西洋美術館蔵

ちなみに、版画素描展示室へ向かう途中、宗教画も観ることができますよ。

内藤コレクションで聖職者の1日を観た後に、こちらも鑑賞すると、より内容を深く理解できるかもしれません。

本館 常設展示室「14-16世紀の絵画」展示風景

「内藤コレクション」を中心に、その豊かな彩飾芸術の魅力に迫る「内藤コレクション 写本 – いとも優雅なる中世の小宇宙」。

本展関連グッズも、国立西洋美術館ミュージアムショップで販売中。プレゼントにも良さそうな、大人かわいいデザインです♪

雨が多い6月と7月は、国立西洋美術館でアートに触れる休日を過ごしてみては?