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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
夏に咲く花はいろいろありますが、そのなかでも特にひまわりは代表的な存在ではないでしょうか。
燃える太陽のような形と鮮やかな黄色の花びらが、日差しや青空とよく合いますよね。夏のシンボルとして扱われることも多い花です。
今回はひまわりをテーマに、関連した美術作品や、ひまわりと美術を楽しめるスポットをご紹介します。
ぜひ、ひまわりも美術も夏も全部楽しんでください!
ひまわりの原産地は北アメリカ大陸。中南米にも広まり、南米ペルーで栄えたインカ文明では太陽のシンボルとされ、神聖視されました。
そんなひまわりがヨーロッパへ渡ったのは16世紀のことです。
スペイン人が種を持ち帰り、そこから各国へ広まっていきました。
ひまわりが本格的に静物画や肖像画で描かれはじめるのは17世紀になってからで、美術史全体で見れば比較的最近と言えます。
今ではすっかりお馴染みの花になっているので、意外に思う人も多いかもしれませんね。
日本に伝来したのも17世紀と言われています。
今では一般的に「向日葵」の字を当てられますが、実際に太陽の方を向くのは成長途中のときのみで、花の向きが太陽を追いかけるように変わるわけではないそうです。
ひまわりの美術作品で、真っ先に挙がるのはフィンセント・ファン・ゴッホ の《ひまわり》ではないでしょうか。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》 SOMPO美術館蔵 撮影:スフマート編集部
ゴッホはオランダのポスト印象派の画家で、力強いタッチや大胆な色使いが特徴です。
苦難の連続だった生前とは対照的に、死後は高く評価されるようになりました。
日本にもたくさんのファンがいるゴッホですが、彼は彼で日本の浮世絵に強い興味を持ち、大きな影響を受けました。
実際に、広重の浮世絵の模写や、肖像画の背景に浮世絵を描いた作品が存在します。
歌川広重『名所江戸百景 亀戸梅屋舗』,魚栄,安政4
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1312266 (参照 2023-07-19)
そんなゴッホの代表作のひとつが《ひまわり》。彼は何枚ものひまわりの絵を描きましたが、特に有名なのが、花瓶に生けられたひまわりのシリーズです。
これは全部で7点あり、その1枚は日本で見ることができます(本当はもう1枚日本にあったのですが、戦争時に空襲で消失)。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり(12本のひまわり)》
(フィラデルフィア美術館: The Mr. and Mrs. Carroll S. Tyson, Jr., Collection, 1963、1963-116-19(https://www.philamuseum.org/collection/object/59202)
ゴッホがこれらの作品を制作したのは、南フランスのアルルに滞在しはじめたころ。
明るい色彩の浮世絵を見たゴッホは、日本に対して「光溢れる理想郷」のような憧れを抱いていたとされます。日差しが明るいアルルは、彼にとって日本のイメージに近かったようです。
太陽に似たこの花に、ゴッホは自分の理想や希望を感じていたのかもしれません。
ゴッホが特に有名であるものの、他にもひまわりを描いている画家はたくさんいます。
まずは、印象派の代表格のクロード・モネです。
クロード・モネ《ヴェトゥイユの画家の庭園》
画像出典:ワシントンナショナルギャラリー
https://www.nga.gov/collection/art-object-page.52189.html
また、アールヌーボーの優美な作風が人気のミュシャも、四季をモチーフにした作品のなかで、夏にあたる部分にひまわりを描いています。
アルフォンス・ミュシャ《四季》
画像出典:シカゴ美術館 https://www.artic.edu/artworks/97439/the-seasons
他にも、グスタフ・クリムトやアンリ・マティス、ゴッホと交流を持ったポール・ゴーギャンなど、さまざまな画家がひまわりを描いています。
壁紙で有名なウィリアム・モリスも、ひまわりをモチーフにした作品を制作しました。
やはり、特に近代以降の芸術家たちから好まれていたようです。
日本にひまわりがやってきた江戸時代。
ひまわりには、丈菊(じょうぎく)、天蓋花(てんがいか)、日車草(ひぐるまそう)などいろいろな呼び方がありました。
橘保國 畫圖『畫本野山草』[3],芸艸堂,[18–]
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2557219 (参照 2023-07-20)
当初はさほど人気ではなかったのだそう。
江戸前期~中期に活躍した本草学者の貝原益軒(かいばらえきけん)にいたっては、著書の中で「もっとも下品」とまで言っています 。
ひまわりは花の中でも背が高くて大ぶりなので、当時の人にとっては見慣れなくて奇妙な存在に思えたのかもしれません。
江戸時代は園芸ブームが巻き起こり、庶民も栽培や品種改良を楽しんでいましたが、夏の花では朝顔、他にも桜や菊、牡丹などが人気でした。
一方で、現代でも人気の伊藤若冲 、江戸琳派の酒井抱一や鈴木其一、印象派へ強い影響を与えた葛飾北斎 によるひまわりの作品が残されています。
益軒には散々な言われようだったひまわりですが、江戸後期に入るころにはそれなりに市民権を得つつあったのではないでしょうか。
JR「新宿駅」から徒歩5分と好立地に建つSOMPO美術館は、日本で唯一ゴッホの《ひまわり》を所蔵している美術館です。
同館では、西洋東洋問わず幅広いジャンルの美術展が開催されています。
ゴッホの《ひまわり》は常時展示されているので、基本的には開館日に行けば鑑賞できます。
実物と対面する感動をいつでも味わえると思うと、とても贅沢な気がしますよね。
展示フロア最後のコーナーにあるので、ぜひそのとき開催されている展覧会と一緒に楽しんでください!
「絵とことば」がテーマの子どもから大人まで楽しめる美術館PLAY! MUSEUM。絵本や児童文学がテーマの企画展を多く開催しています。
展覧会にちなんだカフェメニューもかわいいです!
また、同館の近くにある国営昭和記念公園は、ひまわりの名所として知られています。
ゴッホやマティスなど、画家にちなんだひまわりも植えられているので、美術ファンとしてはぜひチェックしたいですね。
園内はかなり広く、ひまわりの迷路もあります。ひまわりと美術で充実した夏の1日を過ごしたい人におすすめです。
チームラボプラネッツ TOKYO DMM 豊洲は、さまざまなアイディアと最先端のテクノロジーで楽しませてくれる「チームラボ」のアートが楽しめる施設です。
「人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング」は、水の中を泳ぐ鯉が人とぶつかると季節の花に変わる、インタラクティブアートです。
夏の間は、この鯉がひまわりの花に変身!幻想的なデジタルアートの中で、少し変わったひまわり鑑賞を楽しめます。
今よりも日本でひまわりがポピュラーでなかった時代に、この花をたびたび描いていたのが江戸後期の琳派の絵師たち。
そんな彼らの作品をたびたび展示しているのが細見美術館です。
同館では、ひまわりの他にも、日本の夏らしい花の美術品をたくさん堪能できます。
日本美術に登場するひまわりを見たい場合は、こうした江戸後期の絵師たちと草花に焦点を当てた展覧会をチェックすると、比較的出会いやすいです!
大塚国際美術館では、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》やフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》など世界中の名画が鑑賞できます。
実はこの館で展示されているのは、元の絵を高度な技術で原寸大再現した陶板なのです。
ここでは、ゴッホの《ひまわり》シリーズを7点すべて見られます。
もともと初期から1枚展示されていたのですが、2014年に空襲で焼失した作品を再現したものが加わりました。
そして2018年に開館20周年を記念した事業で、残りの作品の陶板も制作されたのです。
ゴッホの《ひまわり》7点を一度に観られるのは、この美術館ならではの体験。観光地としても人気のスポットです。
明るい陽光と爽やかな青空がよく似合うひまわりは、見ているとなんだか元気が出てきますよね。
そうしたところが、ゴッホをはじめ、多くの画家たちに愛されたのではないでしょうか。
皆さんもぜひ、ひまわりや美術作品と一緒に、楽しい夏を満喫してください!
【主な参考文献】
・春山行夫/著『花の文化史:花の歴史をつくった人々』 講談社 1980年
・千足伸行/監修『ゴッホと花:ゴッホと同時代の画家たち:’ひまわり’をめぐって』 損保ジャパン東郷青児美術館 2003年
・遠山茂樹/著『歴史の中の植物』 八坂書房 2019年
・スティーヴン・A・ハリス/著 伊藤はるみ/訳 『ひまわりの文化誌』 原書房 2021年