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2024年11月1日
ゼロからわかる江戸絵画/福田美術館
江戸絵画と言えば、浮世絵、北斎や広重くらいは知っているけど・・・という人にもぴったりな展覧会が、京都・嵐山で開催されています。
「美術ファンも初心者も楽しめる!」がキャッチフレーズ。「ゼロからわかる」というタイトルが、実に心強いんです。
美術館外観
世界中から観光客が集まる京都・嵐山に位置する福田美術館。渡月橋が目の前という素晴らしい立地です。
今回の展覧会は、福田美術館と近隣の嵯峨嵐山文華館の2館共催です。
美術館への道路は観光客でいっぱい。でも一歩館内に入ると、表の喧騒が嘘のように落ち着いた空間が。趣のある庭も素晴らしい。
庭の風景
福田美術館は、京都の実業家・福田吉孝氏が2019年に開館しました。
日本絵画を中心とした約2,000点ものコレクションを所蔵。「たとえ美術に詳しくない方が見ても、感動を覚えるような作品」がコンセプトです。
エントランス
「江戸時代の絵画展」とは思えないポップなポスターに迎えられ、いざ展示会場へ。
会場風景
シックでモダンな館内は一見の価値あり。照度をぐっと落とした展示空間に、作品が浮かび上がります。
足元は暗く感じますが、展示物には適切に設計された照明が当てられています。
最初の展示室は「江戸時代の京都画壇の魅力」。
17世紀から18世紀にかけて京都で活躍した絵師たちの作品がずらりと並びます。
伊藤若冲《蕪に双鶏図》18世紀(前期展示)
まず登場するのは、近年人気沸騰中の伊藤若冲。
若冲30代の最初期の作品ですが、雄鶏が頭を下に向けた大胆な構図は、既に若冲のスタイルが完成していることが見てとれます。
円山応挙《竹に狗子図》1779年(前期展示)
京都画壇の大御所、円山応挙の作品。なんともキュートな仔犬たちです。
この時代、可愛いわんちゃんの図柄は人気があったそうで、多くの絵師が注文を受けて仔犬の絵を描きました。
昔から日本人は「カワイイ」が大好きだったんですね。
作品解説
このミュージアムらしい、ユーモアあふれる作品解説文。
「笑みがこぼれるコロコロわんこ」、解説文を読むのが楽しみになってしまいそう。
展示パネル
日本画の基礎知識も学べるようになっています。こんなところが「ゼロからわかる」なんですね。看板に偽りなし!
長沢芦雪《大黒天図》1786-1787年(通期展示)
本展大注目のこの作品。
独創的な作風で近年人気を呼んでいる長沢芦雪(ながさわろせつ)。
1971年以降行方が分からなくなっていた『大黒天図』が52年ぶりに再発見され、この展覧会でお披露目されました。
畳一畳分はある迫力ある掛軸。勢いのある筆づかいと細やかな描写が印象的です。
続いての展示室は、絢爛豪華な屏風がずらり。
江戸時代に画壇を席巻した「狩野派」や、華やかな装飾、大胆なデザインで人気を誇る「琳派」の作品が並びます。
山本素軒《源氏物語図屏風》17-18世紀(前期展示)
狩野派は室町時代から続く画派で、幕府御用達として常に画壇の中心にありました。
伊藤若冲や円山応挙も最初は狩野派に師事しています。
狩野派の絵師・山本素軒(やまもとそけん)は、後の琳派の祖とされる尾形光琳の師として知られます。
尾形光琳《十二ヶ月歌意図屏風》17世紀(前期展示)
綿々と世襲によって技法が受け継がれた狩野派。
一方、絵師たちが自由に先人の手本を研究する「私淑」という形で受け継いたのが「琳派」です。
琳派の始まりは、書から工芸までこなした本阿弥光悦と「風神雷神図屏風」で有名な俵屋宗達。百年後に尾形光琳が彼らの作品に感銘を受け、様式を確立させました。
この作品は光琳が若い頃に描かれたもの。12か月を彩るモチーフを繊細なタッチで描き、和歌を添えています。
長谷川等伯《柳橋水車図屏風》17世紀(前期展示)
狩野派とは異なる技法で一世を風靡した人気絵師、長谷川等伯の煌びやかな屏風です。
等伯というと「松林図屏風」のような水墨画のイメージですが、障壁画でも画風を確立しました。
屏風いっぱいに橋が架かる大胆な構図の「柳橋水車図」は京都で大流行したそうです。
中村芳中・画 江森月居・賛《松尾芭蕉像》(部分)19世紀(前期展示)
おや、こんなほっこりする作品も。おおらかな画風が人気の中村芳中の画です。
ゴージャスな屏風が続いて肩に力が入ってたのか、思わずリラックスしてしまいました。
観光客で賑わう桂川沿いを2分ほど歩けば、第二会場の嵯峨嵐山文華館。
エアポケットのように静かな空間が広がっていました。
嵯峨嵐山文華館外観
小倉百人一首文化財団が運営する嵯峨嵐山文華館は、「百人一首と日本画の粋」を伝えるミュージアム。
年に数回、近隣の福田美術館と共催の展覧会が行われています。
嵯峨嵐山文華館は、江戸時代に大流行した「浮世絵」を特集。
世界的に有名な歌川広重や葛飾北斎らの木版画が真っ先に思い浮かびますが、実は版画だけではありません。
「浮世」とは「憂き世」、つまり「つらいことの多い現世」のこと。庶民に流行する題材を描いたものが「浮世絵」なのです。肉筆の浮世絵も存在します。
展示された数ある肉筆浮世絵の中、特に目を惹くのがこちら。
葛飾北斎《大天狗図》(部分)1839年(前期展示)
「どう見てもスパイダーマン」と解説にある通り、まさに現代コミックの祖というべき構図と迫力。
北斎80歳の時の作品だそうで、二度びっくり!
毎年2月に行われる競技かるた『ちはやふる小倉山杯』の舞台「畳ギャラリー」。
ここでは歌川広重「東海道五十三次」の全作品が、前期後期に分けて一挙公開されています。
畳ギャラリー
会場をぐるりと囲んで展示されているので、鑑賞していると宿場から宿場へ歩いていく感覚。
畳に座っても寝転がってもいいそうです!
歌川広重《東海道五十三次 蒲原 夜之雪》1833年頃(前期展示)
シリーズ中1、2を争う人気の一枚。雪が降り積もる寒村の静寂が、しんしんと伝わるのです。
蒲原は現在の静岡県。こんなに雪は降らないのですが、広重の想像力で雪景色となりました。
嵯峨嵐山文華館では、百人一首関連の常設展も見どころ。
総勢100体が並ぶ、歌人たちの小さなフィギュアは壮観です。紫式部らビッグネームの姿の中、思わず目を止めてしまったのがこのお方。
参議篁のフィギュア
島流しにあって都を離れる歌だそう。
思わず、肩を叩いて励ましたくなってしまいますね。
見どころ満載のミュージアムに歩き疲れたら、併設のカフェへどうぞ。
福田美術館併設のお店からの展望です。
渡月橋を見渡す素晴らしい眺めと、観光客の賑わいを話題におくつろぎください。
カフェからの眺め
「ゼロからわかる江戸絵画」。
タイトル通り、人気絵師の作品をユーモアたっぷりのわかりやすい解説で楽しめる展覧会です。
深秋の嵐山を満喫しながら、江戸時代の絵師たちに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。