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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
イヴ・ネッツハマー ささめく葉は空気の言問い/宇都宮美術館
宇都宮市制100周年を記念し、1997年3月に開館した宇都宮美術館。
周辺には、同日にオープンした公園施設・うつのみや文化の森もあり、豊かな自然が広がります。
宇都宮美術館
同館は主に、国内外の20世紀以降の美術作品を収集・公開するとともに、芸術文化活動の拠点施設として幅広く活動しています。
現在、企画展「イヴ・ネッツハマー ささめく葉は空気の言問い」を開催中。
本記事では、イヴ・ネッツハマーの日本初となる個展の見どころをご紹介します。
スイス・シャフハウゼン出身の映像インスタレーション作家、イヴ・ネッツハマー(1970-)は、建築製図やデザインを学んだのち、1997年より作家活動を開始。
オープニングセレモニー テープカット式典のようす(右から2人目・イヴ・ネッツハマー氏)
ピピロッティ・リスト(1962-)の次の世代を担う映像作家として注目を集め、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレではスイス館代表を務めました。
また、サンフランシスコ近代美術館やベルン美術館で個展を開催するなど、世界各地で活躍しています。
彼の作品の中でしばしば現れる「深層へと潜る」という世界観。
そんな「潜る人」ネッツハマーと、大谷石地下採堀場跡という巨大な地下空洞を宿す街・宇都宮との出会いによって、同館で日本初となる個展の開催に至りました。
本展では、受付から展示室へ向かうガラス張りの廊下より展示がスタート。17面のガラス窓には、奇妙でユーモアな表情を見せる線描画が貼り付けられています。
イヴ・ネッツハマー《ガラス面上の素描群》Glaszeichnugen, 2024 ©Yves Netzhammer
ネッツハマーの表現の原点は、コンピュータによってデジタル・ドローイングされた「線」です。
線描画《ガラス面上の素描群》は、外からのあたかかな光や中庭に置かれたクレス・オルデンバーグの彫刻《中身に支えられたチューブ》などと交わりながら、個性豊かな表情を観せてくれます。
クレス・オルデンバーグ《中身に支えられたチューブ》1985
大空間・中央ホールの天井から吊り下げられているのは、《奇妙な空間混合》と題された回転するオブジェ作品。
イヴ・ネッツハマー《奇妙な空間混合》Seltsame Raumgemische, 2024 ©Yves Netzhammer
ネッツハマーが近年になって使用し始めたLEDホログラムファンで制作されています。
また、床面に置かれたモニターには「人像」が映し出され、その上にはリンゴのオブジェが置かれています。
ネッツハマーの映像作品は、顔を持たず性別も定かではない抽象的な「人像」が繰り返し登場するのが特徴です。
イヴ・ネッツハマー《奇妙な空間混合》2024 ©Yves Netzhammer
展示室に入ると、本展のために制作された竹のインスタレーション作品《筏(いかだ)》が来館者をお出迎え。
イヴ・ネッツハマー《筏》2024 ©Yves Netzhammer
いくつもの竹が天井から吊り下げられ、地中に張り巡らされた迷路のような空間に思わず息をのんでしまいます。
本展準備のために来日したネッツハマーは、大谷石地下採掘場跡や近隣の足尾銅山跡を訪問し、地下空洞に魅了されたといいます。
また、地域の伝統工芸にも関心を示した彼は、大田原市にある竹芸工房「無心庵」も訪問。本来竹は油分が多いことから着色が難しいですが「無心庵」の着色技術により、数多くのカラフルな竹が使用されています。
会場で約3週間かけて作り上げた本作。その構成力の高さに、観る者はあっと驚かされることでしょう。
《筏》の周辺に展示されているのは、屏風仕立ての作品《世界は美しく、こんなにも多様だ。本当なら皆、愛し合ってもおかしくないはずなのに。》。
イヴ・ネッツハマー《世界は美しく、こんなにも多様だ。本当なら皆、愛し合ってもおかしくないはずなのに。》2024 ©Yves Netzhammer
大パノラマのようなスケールの中で繰り広げられる、人やさまざまな生き物たちの絡み合いを観ることができます。
本作のタイトルは、宇都宮と同時期にスイス・ゾロトゥルンで開催されたネッツハマー展の展覧会名を日本語訳したものです。
もう一つの展示室では、これまで彼が制作した映像作品が展示されています。
イヴ・ネッツハマー《「ささめく葉は空気の言問い」展 コンセプト・デジタル・ドローイング》 2023 年 ©Yves Netzhammer
2007年、ヴェネツィア・ビエンナーレで発表の《反復するものが主体化する(プロジェクトA)》や2015年、チューリヒのギャラリー「クリスティンガー・デ・マヨ」で発表の《時間なき日々》など、代表的な作品を一気に見られる貴重な機会です。
イヴ・ネッツハマー《反射するものが主体化する(プロジェクトA)》2007 ©Yves Netzhammer
本展では、全ての作品に題名が付けられているものの、説明文は一切ありません。
それは、観る人が自分なりの解釈をしてくれれば良いという彼の思いのもと。
宇都宮の地から放たれる、予測不可能な映像作品の世界を観に皆さんも足を運んでみてはいかがでしょうか。