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2024年11月1日
スフマートでは、「つくる」「つたえる」という2つの視点をもとに、ミュージアムを支えるさまざまな人へのインタビューを隔週・前後編でお届けします。
今回お話をお聞きしたのは、日本科学未来館の科学コミュニケーター(以下、SC)・綾塚達郎さん。
日本科学未来館・科学コミュニケーター綾塚達郎さん ※撮影時、マスクを外していただきました。
2021年に開館20年を迎えた日本科学未来館は、最先端の科学技術やその研究内容について知ることができ、科学好きはもちろん、大人から子どもまで楽しめるお台場の人気スポットです。
館内で来館者とコミュニケーションを取るほか、「科学コミュニケーターブログ 」の記事を執筆したり、オンライン放送を活発に行っていたりと、さまざまなシーンで活躍されているSCの皆さん。
後編では、日本科学未来館の特色のひとつで、綾塚さんのお仕事でもあるSCについてお聞きしていきます。
日本科学未来館のことや、綾塚さんおすすめの展示をお聞きした前編はこちら
──SCとは、どのような人たちなのでしょうか。
SCの大きな使命は、普段研究とは関りのない方含め、広く世間へ科学技術の面白さを伝えていくことです。
私たちSCは、科学技術がどう活用されていくべきか、ディスカッションを広く開かれた場で行います。しかし、いきなり専門家と一般の人たちが話すとなると難しいですし、かといって何もしなければコミュニケーションは生まれません。そのため、一般の方と研究者の橋渡し役となるのが、SCの主な役割だと考えています。
──具体的には、どのようなお仕事をしているのですか。
展示やワークショップなど、活動フィールドはSCによって異なりますが、基本的には調査・企画と情報発信が主軸です。
「今はどんなニーズがあるのか」「他の科学館ではどのようなアプローチをしているのか」などを調査をしたうえで、日本科学未来館オリジナルの企画を立てたり、展示の設計したりするほか、館の公式サイトで掲載している「科学コミュニケーターブログ」の執筆を行ったりしています。
そのほかにも、テレビやオンラインメディアを通して科学について発信することもあります。
──SCは日本科学未来館の顔なのですね! 綾塚さんのご担当を教えていただけますか。
例えば、ワークショップの調査・企画・実施を担当しています。そのほか、科学コミュニケーターブログの執筆はもちろん、研究者を取材して、その研究について分かりやすく紹介する記事の作成なども日常的に行っています。
また、毎年10月にはノーベル賞発表があるので、賞に関連した記事を執筆したり、ノーベル賞を特集したニコニコ生放送の番組準備とその番組内のMCも担当したりと、10月は忙しく過ごしていますね。
昨年4月から定期的に、新型コロナウイルスに関する情報番組「わかんないよね新型コロナ」の制作も行うなど、おうち時間を意識したコンテンツの制作も行いました。
──幅広くご活躍されているのですね。やはり、コロナ禍でコミュニケーションの方法も変わりましたか。
はい。特に、2020年春の緊急事態宣言中はSCも出勤を控えていたので、情報番組「わかんないよね新型コロナ」においてはそれぞれの自宅から専門家をつないで発信する試みを始めました。
コロナ禍の前に比べると、オンラインを活用する機会が増えたかと。やはり館内では、来場者との距離を取らなければいけないほか、何かに触るようなワークショップの開催が難しいなど状況が変わりました。オンラインにしても、館内の取組にしても、コロナ禍だからこそできることを今後も追求し続けたいと考えています。
──綾塚さんが、日本科学未来館のSCを知ったきっかけについて教えていただけますか。
学生のころから元々、科学コミュニケーションに関心を持っていて、日本科学未来館でボランティアをしていました。
大学院へも進学しましたが、家族から「どんな研究をしているの?」と聞かれることがあり、その話の中でふと「研究者って大事なことをやっているのはわかるけど、なんだかいまいちよくわからない」と言われたんです。
「確かにその通りだな」と思い、科学の世界と一般の人たちをつなぐ活動はないかと探して、たどり着いたのがSCでした。
──ご自身の経験が大きく関係していたのですね。未来館のSCになるのは、何か条件があるのでしょうか。
よくあるご質問で「理系じゃないとダメですか?」と聞かれますが、そんなことはありません。確かに、SCの多くが理系の修士課程取得者ですが、芸術や社会学といった分野からSCになる人もいますので、どのようなSCがいるのか公式サイトでご覧いただけると嬉しいです。
──日本科学未来館では、かなり高度な内容も扱っているかと思います。綾塚さんが一般の方にお伝えするうえで心がけていることをお聞かせください。
心がけていることは、「これが正しい情報です」と一方的な発信にしないことです。その瞬間、コミュニケーションではなくなってしまいますし、人によっては正しい情報をそのまま受け止められないこともあります。
この人は何を求めているのか、今どんな状況にあるのか。質問も交えながら相手の気持ちや背景をきちんと想像することから、コミュニケーションは始まるのではないかと考えています。
あとは、皆さんに理解していただきやすいように、科学技術の話をどこまでかみ砕いて説明するかは、SCの腕の見せ所です。
かみ砕けばかみ砕くほど正確さは失われてしまいますし、細部まで正しいことを伝えるかはケースバイケースです。小学生の来館者と大人の来館者で展示の説明内容も変わるため、「どうわかりやすく伝えるか」ということについては、いつも模索していますね。
──最後に、日本科学未来館での鑑賞を楽しむワンポイントアドバイスがあれば教えてください。
館内で白いベストを着て歩いてる私たちSCを見かけたら、ぜひお話していただきたいです!
展示に書かれていることに対し、「自分ならこの技術をどう使うかな?」とか「これは安全なものなのかな?」とか、自分なりの問いをどんどん膨らませていただけたら嬉しく思います。その手助けとしてSCがいますので、ぜひ館内で見かけたらお気軽にお声がけください。
展示に触れながら、一人ひとりが自由な意見を持てる。日本科学未来館は、そうしたアート鑑賞に近い感覚で楽しめる場でもあります。館内には、来館者が意見や問いをアウトプットできるスペースがいくつかありますので、そこで他の人はどんな問いや感想を持ったのか見てみるのも、新たな発見があって面白いですよ。
提供:日本科学未来館
前編でも、「問い」についてのお話がありましたね。自分なりの「問い」を持って想像を膨らませた分だけ、その分野への興味が自分のなかで育っていくのかもしれません。
皆さんが次に日本科学未来館やほかのミュージアムに行くときは、どんな問いに出会えるのか、と考えて鑑賞してみるのも楽しいかもしれません。
次回の「つくる」「つたえる」を聞くインタビューでは、菊池寛実記念 智美術館の学芸員・足立圭さんにお話をお聞きします。