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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
テレンス・コンラン/東京ステーションギャラリー
「ザ・コンランショップ」の創業者として知られるサー・テレンス・オルビー・コンラン(1931~2020)。
コンランの多岐にわたる活動を紹介する、日本で初めての展覧会が、東京ステーションギャラリーにて、2025年1月5日まで開催されています。
イギリスのデザイナーであり、実業家であるコンランは、デザインを軸に多彩な才能を発揮しながら、イギリスの生活文化に大きな変化を与えた人物です。
本展では、彼がデザインした食器、テキスタイル、ショップやレストランのアイテム、愛用品などの300点以上の展示品を通じて、彼の活動と人物像に迫ります。
さらに彼から影響を受けた人びとのインタビューも交えて、さまざまなコンラン像を浮かび上がらせる内容となっています。
コンランは、第2次世界大戦後まもなく、テキスタイルや食器のパターン・デザイナーとして活動を始めます。
1950年代に制作された、「チェッカーズ」シリーズなどの初期の作品からは、若きコンランの優れたデザインセンスがうかがえます。
1960年代に入ると、コンランは起業家としての才能を発揮し始めます。
1964年に最初の「ハビタ(habitat)」をオープン。このショップは、ライフスタイルを提案しながら製品を販売するという、これまでにない新しいコンセプトで大成功を収めます。
ハビタでは、商品を高く積み上げて陳列することで、豊富な品揃えを視覚的にアピールしました。
こうした陳列方法は今では一般的ですが、当時としては画期的なアプローチでした。
さらに1970年代には「ザ・コンランショップ」を展開し、セレクトショップの概念を世界に広めます。
世界中から厳選した家具と小物が並ぶ店舗は、世界のデザイン市場に大きな変化をもたらしました。
コンランは1980年代後半から本格的にレストラン事業に乗り出し、イギリスの食文化に大きな影響を与えました。
高級店からカジュアルカフェまで50店舗以上を手がけ、伝統的な食材に新しい要素を取り入れた「モダン・ブリティッシュ」と呼ばれる新しい料理スタイルをイギリスに定着させたのです。
レストランの写真や、メニュー、灰皿とマッチ箱などの展示からは、コンランのこだわりや革新性を感じ取ることができます。
コンランは建築や都市開発の分野でも活躍しました。
歴史のある建物は、その魅力を活かしつつ、現代的な商業施設として再生させ、ロンドンの古い倉庫街は、魅力的な複合エリアへと変貌させたのです。
会場では、こうしたプロジェクトのようすが、写真や図面、模型などで詳細に紹介されています。
「ザ・コンランショップ」が、1994年に日本に上陸したのをきっかけに、日本でのプロジェクトにも携わるようになります。
会場では赤坂アークヒルズ内の「アークヒルズクラブ」の内装デザインや六本木ヒルズのレジデンス棟など、日本でのしごとについても紹介されています。
コンランの才能は、ものづくりの分野でも発揮されました。
1962年に発表した、組み立て式家具シリーズ「スーマ」は、持ち帰り、組み立て、すぐに使い始めることができる、当時としては画期的なアイテムでした。
1980年代には、家具工房「ベンチマーク」を立ち上げ、自らデザインした家具を製作しました。
コンランの家具デザインは、「Plain、 Simple、 Useful(無駄なくシンプルで機能的)」という彼の考え方がよく表れています。
コンランの創造の源となったバートン・コートの自宅のようすも紹介されています。
仕事部屋を再現した空間には、 彼が実際に使用していた仕事道具のほか、没後世界初公開となる愛用品も展示され、彼の趣味の一端をかいま見ることができます。
展示の中心となるデスクは、オリジナルをもとに、孫のフィリックスが吉野檜を使用して地元の職人と作り上げたものです。
展示の最後では、コンランが私財を投じて設立した、世界初のデザイン・ミュージアムに関する資料が紹介されています。
彼は著作活動やミュージアムの設立を通じて、デザインの魅力と重要性を未来にむけて伝えようとしました。
個人の生活空間から都市景観まで、幅広い分野で活動し、デザインの力で時代を切り拓いたコンランは、著書の中で「デザインが暮らしを豊かにすること、いつでもこれが私にとって一番大事なことだった」と語っています。
展示を通してコンランが思い描いた理想の暮らしに触れ、日常をより豊かにするヒントを見つけてみませんか。