2022年1月6日

版画家、彫刻家・浜田知明の展覧会。80年代以降の彫刻作品も紹介

浜田知明 アイロニーとユーモア/茅ヶ崎市美術館

浜田知明(はまだ ちめい/1917-2018)は、戦後日本を代表する版画家、彫刻家です。
自身の戦争体験のみならず、社会や人間、さらには自分自身にまで作品のモティーフを広げて、さまざまな版画作品を発表しました。

スフマート Sfumart 取材レポート 浜田知明 アイロニーとユーモア 茅ヶ崎市美術館 彫刻家 版画家
浜田知明 アイロニーとユーモア 展示風景より

2002年、茅ヶ崎市美術館に代表作『初年兵哀歌』シリーズをはじめとした、1950年代から1980年代の版画作品56点が寄贈されました。

本展では、その版画作品56点を一堂に展示。さらに、神奈川県立近代美術館が所蔵するヨーロッパ滞在をもとに制作された版画作品と、1990年代以降の版画作品、彫刻作品などもあわせて紹介します。

※展覧会詳細はこちら

版画家・彫刻家である浜田知明とは

浜田知明は1917年、熊本に生まれました。1939年に東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業。ほどなくして、長期化する中国戦線の影響で、浜田は現役兵として入隊します。

東京美術学校時代は、油彩画を専攻していたという浜田。しかし戦後、自身の過酷な戦争体験を表現するために、色彩を捨てて黒と白を基調とする版画での作品制作に至ったそうです。

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浜田知明《初年兵哀歌(歩哨)》1954年 茅ヶ崎市美術館蔵 © Hiroko Hamada 2021 /JAA2100301

1950年からは、浜田の代表的なシリーズとなる『初年兵哀歌』を生み出し、その一部である《初年兵哀歌(歩哨)》(1954年)は、1956年スイス・ルガノの第4回ルガノ国際版画展で次賞を受賞。本シリーズによって、浜田の名前が国内外に広く知られるようになりました。

1983年以降は彫刻作品を手がけ、2000年を最後に版画制作から離れていくようになりますが、晩年に至るまで創作意欲は衰えなかったといいます。

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浜田知明 アイロニーとユーモア 展示風景より

2018年に、町田市立国際版画美術館「浜田智明 100年のまなざし」展(2018年3月10日~4月8日)が開催され、同年7月17日にその生涯を閉じます。享年100歳でした。

茅ヶ崎市美術館の浜田コレクション

茅ヶ崎市美術館が所蔵する浜田知明の版画作品56点は、いずれもサラリーマンコレクター「A氏」の旧蔵品。2002年に、遺族より寄贈されました。

A氏は、浜田のユニークな風刺表現に魅了され、会社勤めをしながら浜田の作品が展示されている展覧会に必ず足を運び、浜田作品だけをこつこつ収集していたそうです。

そして、展覧会のオープニングにも招待してもらうまで、A氏は作家と交流を深めたといいます。

そんなA氏のコレクションは、《初年兵哀歌(歩哨)》をはじめとした「初年兵哀歌」シリーズが5点、《よみがえる亡霊》(1956年)などの戦争を批判する作品、《ボタン(A)》(1988年)に観られる日常や社会への不安と恐怖をモティーフとしたものなど。いずれも1950年代から1980年代までの代表作で構成されています。

これまでA氏のコレクションは、部分的に紹介されることはありましたが、56点すべてを展示することは初めてとのこと。

本展は、知られざるA氏の旧蔵コレクションを大規模に公開する貴重な展覧会となっています。

戦争や社会風刺だけではない、ユーモアのある作品も展示

1974年以降、人間の愚かさや悲しみを鋭く見抜き、それらに皮肉やユーモアを込めて作品を制作した浜田。

いらいらという感情を造形化した《いらいら(A)》(1974年)など、思わずクスッと笑ってしまうような作品を多く発表します。

《いらいら(A)》は、浜田自身が作品をうまく作れずに、いらいらしていた体験が元となった作品です。頭から伸びるギザギザの電波のようなものの先には、目玉がいくつもついており、それらはさまざまな方向を向いています。

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浜田知明 アイロニーとユーモア 展示風景より

また、こうした人間をモティーフにした作品のほかにも、猫などの動物を描いた作品も展示しています。

《むし暑い夜》(1985年)は、蒸し暑い夜と屋根の上にいる2匹の猫が騒いでいるようすを、月夜の波模様で見事に表現しています。

本作の情景を彫刻で表現した神奈川県立近代美術館が所蔵するブロンズ彫刻《悩ましい夜》(2000年、鋳造 2004年)も、あわせて紹介しています。版画作品と彫刻作品の違いを見比べてみるのも、おすすめです。

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浜田知明 アイロニーとユーモア 展示風景より

茅ヶ崎市美術館が所蔵する56点の浜田知明の版画作品を、初めて大規模に紹介する本展。

神奈川県立近代美術館のコレクションとあわせて紹介することで、浜田の芸術の軌跡に迫ることのできる展示構成になっています。まさに、浜田知明入門という内容です。

また、2022年1月14日(金)14時からは、本展を担当した鈴木伸子学芸員によるギャラリートークも、開催。浜田について詳しく知りたい方は、ぜひギャラリートークも参加してみてはいかがでしょうか。

ギャラリートークの詳しい情報は美術館公式サイトをご確認ください。

Exhibition Information

展覧会名
浜田知明 アイロニーとユーモア
開催期間
2021年12月11日~2022年2月6日 終了しました
会場
茅ヶ崎市美術館 展示室1・2
公式サイト
https://www.chigasaki-museum.jp/