2022年2月1日

パナソニック汐留美術館で、近現代の陶芸家137名の作品を一堂に紹介

未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展/パナソニック汐留美術館

JR新橋駅「銀座口」から徒歩約8分に位置するパナソニック東京汐留ビル。その4階には、フランスの画家、ジョルジュ・ルオー(1871-1958)の初期から晩年までの作品約240点をコレクションする、パナソニック汐留美術館があります。

同館では、「ルオー」「建築・住まい」「工芸・デザイン」の3つをテーマに、毎年さまざまな企画展示が開催されています。

そんなパナソニック汐留美術館では現在、「未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展」が開催中です。

スフマート Sfumart 取材レポート 未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展 パナソニック汐留美術館
展示風景

本展は、日本工芸会陶芸部会50周年を記念した展覧会であり、同会で活躍した作家の秀作とともに、その活動の歴史を振り返るものです。

歴代の人間国宝作品をはじめ、窯業地(ようぎょうち/やきものを作るところ)ならではの、素材と伝統を受け継いだ作家たちによる作品など、伝統工芸の技と美を紹介する内容になっています。

※展覧会詳細はこちら

日本工芸会陶芸部とは

時代とともに技法や表現が多様化し、今もなお進化し続ける工芸技術のひとつである「陶芸」。とくに昭和戦後期以降には陶芸家の創作活動が活発化し、意欲的な作品が数多く発表されています。

1950年、陶芸をはじめさまざまな分野の工芸技術の保存と活用を目的に、文化財保護法が施行され、その5年後の文化財保護法改定を機に、日本工芸会が発足しました。

日本工芸会は、重要無形文化財保持者(いわゆる人間国宝)を中心に、各分野の伝統工芸作家、技術者たちで組織され、「日本伝統工芸展」を中心に作品を発表しています。

1973年には、同会陶芸部所属の作家による「第1回新作陶芸展(陶芸部会展)」が開催。そして2022年、日本工芸会陶芸部は設立50年を迎えます。

第Ⅰ章 伝統工芸の確立

「伝統工芸の確立」と題した第1章では、日本工芸会初期に活躍した作家たちの作品と、その活動を紹介します。

松井康成(まついこうせい/1927-2003)の《練上嘯裂文大壺(ねりあげしょうれつもんおおつぼ)》。インパクトのある本作は、本展のメインビジュアルにも使われています。

スフマート Sfumart 取材レポート 未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展 パナソニック汐留美術館
松井康成《練上嘯裂文大壺》1979年 茨城県陶芸美術館蔵

美しい青色のグラデーションは、「練上」という陶芸技法によって作られています。練上は、さまざまな色の粘土を薄く延ばし、それを交互に積み重ねてはり合わせたりして作品をつくる技法です。

本作の表面をよく観ると、波が立つようにボコボコしています。このボコボコをつくる技法は「嘯裂(しょうれつ)」と呼ばれています。

「嘯裂」とは、ろくろで成形した筒状の器を内側から回転に合わせてゆっくりと押し出していく過程で、あらかじめくしなどでつけておいた傷が亀裂となって広がっていき、独特の質感となる技法のこと。

グラデーションが亀裂とが相まって、創造性の高いデザインを見せる本作。練上での表現を極めた松井だからこそ、表現できる作品だと思われます。

人間国宝4名の代表作も紹介

1954年に文化財保護法の一部が改正され、現在に通じる重要無形文化財制度が設けられました。

この時、すでに選定されていた無形文化財を一度リセットし、その中で重要な「技」を重要無形文化財として指定し直します。さらに、その「技」を高度に体得している人を、重要無形文化財の「保持者」(人間国宝)として認定する制度が確立しました。

本展では、1955年2月15日、陶芸分野で初の重要文化財の保持者に認定された4名の代表作も紹介します。

スフマート Sfumart 取材レポート 未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展 パナソニック汐留美術館
(左から)濱田庄司《柿釉赤絵角皿》1970年/富本憲吉《色絵金銀彩四弁花染付風景文字文様壺》1957年 いずれも、東京国立近代美術館蔵

左の作品は、近現代の日本を代表する陶芸家の一人である濱田庄司の作品です。

濱田の赤絵は、彼が沖縄に訪れた際に出会った琉球赤絵の美しさに惹かれたことに由来しているのだそう。

中央の植物の模様は、一見すると簡単な点と線で描かれていますが、筆の勢いがあり、植物のエネルギーを感じさせます。

赤茶色のこっくりとした色合いを出す、柿釉(かきゆう)と、その空気を引き締めるシャープな模様が交差し、モダンなデザインとなっています。

第Ⅱ章 伝統工芸のわざと美

伝統工芸の世界には、先人たちが培った素材や技術、技法への対応からさまざまなことを学び、それを糧とし、自身の想いを作品に反映させる使命感のようなものがあるといいます。

このような考えのもと作家たちは、新たな技術や技法、そして独自性を生かした、次世代を担う陶芸作品を数多く作り出しました。

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(左から)庄村健《紅染大鉢「燦々」》/上瀧勝治《葆光布染彩磁壺》1988年 東京国立近代美術館蔵/中田一於《淡桜釉裏銀彩葉文鉢》2018年 東京国立近代美術館蔵

本章では、伝統という名のもとにありながら、実は多彩な展開をみせてきた伝統陶芸の技と美の広がりについて、33名の受賞作や入選作を中心に紹介します。

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三浦小平二《青磁豆彩大皿シルクロード》1985年 東京国立近代美術館蔵

皿のつばに、ラクダが荷物を載せて旅をする一行が描かれた本作は、シルクロードの一場面を描いたものです。

本作のタイトルの中にある「豆彩(とうさい)」とは、釉薬(ゆうやく)の下に染付で文様のりんかくを細い線で描き、焼き上げた後に、上絵の具を施して絵を焼き付ける手法のこと。もともとは、中国で確立された技法です。

淡い水色にふんわりと浮かぶ、異国の建物とその周りをクルクルと歩くラクダの姿が、かわいらしい作品になっています。

第Ⅲ章 未来へつなぐ伝統工芸

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展示風景

日本伝統工芸展のカタログには、「今日の生活に即した新しいものを築き上げること」と書かれています。

同会は、伝統とは単なる伝承ではなく、時代の流れやつくり手の考えが強く反映された、革新的で創造的なものである、と考えています。

最終章では、創造性が高く私たちの生活に寄り添う作品を紹介。まさに“今”を感じさせる作品が多数展示されています。

スフマート Sfumart 取材レポート 未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展 パナソニック汐留美術館
(左から)中田博士《真珠光彩壺》2020年 茨城県陶芸美術館蔵/新里明士《光器》2021年

さらに、未来の陶芸の可能性を予感させる新進気鋭の若手作家たちの作品もあわせて紹介しています。

新里明士による《光器》には、器面をくり抜いて装飾する技法である「蛍手(ほたるで)」が使われています。

展示室内の照明も、じゅうぶん美しい本作ですが、自然光の下で展示されていたら、また違う表情も観られるのかもしれないですね。

 

日本の陶芸界をけん引してきた巨匠たちの作品から、新進気鋭の若手作家までの陶芸作品を紹介する本展。

現代陶芸の今を観つつ、その先の未来まで考えさせられる展覧会になっています。

こうした器たちの最終目的は、私たちの生活の中で実際に使われることです。展示作品一つひとつを観ながら、どのように使うかも考えてみると、展覧会をもっと楽しめるかもしれません。

Exhibition Information

展覧会名
未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展
開催期間
2022年1月15日~3月21日 終了しました
会場
パナソニック汐留美術館
公式サイト
https://panasonic.co.jp/ew/museum/