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2026年3月26日
没後50年 髙島野十郎展/大阪中之島美術館

《からすうり》髙島野十郎 昭和10(1935)年 油彩・画布 福岡県立美術館
「没後50年 髙島野十郎展」が、大阪中之島美術館で開催中です。蝋燭を描いた画家としてご存じの方もおいででしょう。
髙島は、福岡県久留米の裕福な酒造家の五男として生まれました。
絵を描くのがうまく好きでしたが、学業も優秀で旧制第八高等学校(現・名古屋大学)を経て東京帝国大学(現・東京大学)農学部水産学科を首席で卒業。その後、画家を目指す決意をします。
独学で絵を学び、東京や千葉にアトリエを構え、特定の美術団体にも属さず、公募展にも出品せず、個展で作品を発表しました。

《すいれんの池》髙島野十郎 昭和24(1949)年 油彩・画布 福岡県立美術館
野十郎の死後の昭和55年(1980)福岡県文化会館(現・福岡県立美術館)で「近代洋画と福岡県」展が開催され、《すいれんの池》が展示されました。無名の画家だった髙島野十郎に脚光が当たるきっかけとなしました。
野十郎のモチーフであった「蝋燭」や「月」の作品と共に「人間ぎらいで、独り身のまま晴耕雨描の修行僧のような生活を送った」との評や、本人の「世の画壇とは全く無縁になることが小生の研究と精進です」の言葉から「孤高の画家」と呼ばれてきました。
没後50年の本展覧会では、初期から青年期や渡欧時の作品に初公開を含む約160点の作品や野十郎が送った手紙や写真などの豊富な資料を展示。
日本近代美術史の中に髙島野十郎を位置づけ、髙島野十郎の全体像を見つめなおす展覧会となっています。
雑誌『白樺』でフィンセント・ファン・ゴッホが紹介されると多くの画家たちが衝撃を受けました。

《田園太陽》髙島野十郎 昭和31(1956)年 油彩・画布 個人蔵
ゴッホから衝撃を受けた画家のひとりである岸田劉生と彼が結成した「草土社」。
大正期に北方ルネサンスのアルブレヒト・デューラーも学び、細密で静謐な写実描写の静物画や人物像を描き、同時代の画家たちに大きな影響を及ぼしました。

《りんごを手にした自画像》髙島野十郎 大正12(1923)年 油彩・画布 福岡県立美術館
禅宗で用いられる法衣の一種である「絡子」を着たこの作品は、野十郎33歳の時の自画像で、デューラーや劉生や草土社の影響が強く、野十郎も同時代の美術史の流れの中に居たのでした。
郷里久留米は、青木繁や坂本繁二郎、古賀春江の出身地でもあり、彼らとの交流も少なからずあったと考えられます。
展示作品には、個人蔵が多くみられます。

《蝋燭》髙島野十郎 大正時代(1912-26)油彩・板 福岡県立美術館
「蝋燭の野十郎」とも呼ばれるほどに野十郎を象徴するモチーフです。「蝋燭」は個展で展示したり売ったりする作品ではなく、大切な人への贈り物でした。
個人が所蔵する「蝋燭」は大切にされ、今も多く残り野十郎の交友関係を物語っています。
野十郎は実家髙島家の援助を受けてアメリカ経由でヨーロッパへ遊学します。

《ノートルダムとモンターニュ通II》髙島野十郎 昭和7(1932)年頃 油彩・画布 福岡県立美術館
当時パリには多くの日本人が在住していましたが、彼らとは交わることはなく、軽やかな筆致で描いた風景画が多く残っています。
独り身の野十郎は、気ままに旅に出て、長期滞在し念入りに取材して四季折々の風景画を描きました。

《積る》髙島野十郎 昭和23(1948)年以降 油彩・画布 個人蔵
野十郎の長兄で詩人の宇朗は禅宗に帰依し、野十郎は長兄から思想的な影響を受け仏教に傾倒していました。
対象の写実的な描写を慈悲の実践と捉え、描くことは仏教の教えに接近することでした。

《寧楽の春》髙島野十郎 昭和28(1953)年 油彩・画布 福岡市美術館
野十郎は奈良を訪れることも多く、近年見つかった『遺稿ノート』に奈良の寺院を詠んだ歌があります。

《割れた皿》髙島野十郎 昭和23(1948)年以降 油彩・板 福岡県立美術館
《割れた皿》何かしらの意図を含んでいるとではないかと考えさせらる作品です。
大阪会場最後の展示室は、照明が落とされ蝋燭と月の作品が並びます。

「蝋燭」の作品の展示風景
月や太陽も野十郎の重要なモチーフでした。

《満月》髙島野十郎 昭和38(1963)年頃 油彩・画布 東京大学医科学研究所
野十郎は「闇を描くために月を描いた。月は闇を描くために開けた穴です」という言葉を残しています。

《睡蓮》髙島野十郎 昭和50(1975)年 油彩・画布 福岡県立美術館
髙島野十郎の絶筆です。
髙島野十郎の作品は、静謐で細やかなタッチを丁寧に重ねた写実描写に独自の精神性も内包し、見れば見るほどに惹きこまれていきました。
図録が読みごたえありでおすすめです。