2022年9月30日

生活に寄り添う日用品のデザインを知る「宮城壮太郎展」が開催中【世田谷美術館】

宮城壮太郎展――使えるもの、美しいもの/世田谷美術館

日々何気なく使っている文房具や調理器具など、私たちの生活に溶け込んだアイテムにもデザインは存在しています。そんな当たり前のことについて、あらためて考え直すことができるような展覧会「宮城壮太郎展 使えるもの、美しいもの」が世田谷美術館で開催中です。

デザイナー・宮城壮太郎

宮城壮太郎(1951〜2011)は、アスクルのオリジナル商品をはじめとした数多くの日用品を生み出したデザイナー。千葉大学工学部でプロダクトデザインを学んだのち、浜野商品研究所に入社したところからその活動を始めます。1988年に独立してからは、プロダクトデザインに留まらないさまざまな分野のデザインを担当しました。

2011年に60歳という若さでその活動に幕を閉じた宮城ですが、彼のデザインしたプロダクトは10年以上経った今でも製造・販売されており、私たちの生活の中で生き続けています。

今回の展覧会では、「デザインに何ができるか」という問いと真摯に向き合い続けた1人の歩みを辿ります。

企業との信頼関係の中で生まれたデザイン


宮城壮太郎+奥成一夫(株式会社浜野商品研究所)《FUJICA HD-1》1979年 富士写真フイルム株式会社

プロローグでは、浜野商品研究所にいた頃の仕事ぶりを知ることができます。1979年に富士フイルム株式会社から販売された「FUJICA HD-1」と「FUJICA HD-S」は、宮城がデザインした初期の代表作といえるでしょう。

アウトドアでの使用を前提とした全天候型生活防水カメラの開発メンバーの一員となった宮城は、プロダクトデザインを担当しています。浜野商品研究所は、マーケティング計画、パッケージデザイン、プロモーション活動まで一貫して手がけました。


展示風景

独立後、さまざまな領域で仕事を続けた宮城には、長期間デザイナーとして関わった企業がいくつもありました。第一展示室では、そうした企業との信頼関係の中で生まれたデザインを見ることができます。


展示風景 Part1-1 チェリーテラス

スイス製のハンディ・フードプロセッサーを輸入・販売する株式会社チェリーテラスとの仕事では、ヨーロッパのライフスタイルに合った製品をどのようにして日本の家庭に溶け込ませるかという依頼から、オリジナルの付属品や製品の開発を担当しました。


宮城壮太郎《オールラウンドボウルズ》2005年 株式会社チェリーテラス

展覧会のポスターにもなっている「オールラウンドボウルズ」は、宮城が開発したオリジナル製品のひとつ。ボウルやザル、さらにはサラダスピナーまで重ねてまとめることができる画期的なデザインの背景には、宮城自身の生活者としての視点が欠かせませんでした。


展示風景 Part1-5 アスクル

アスクル株式会社との仕事は、宮城が企業から信頼されていたことが分かる良い例となるでしょう。アスクル株式会社は、1992年にプラス株式会社の新規事業として岩田彰一郎を中心に設立されました(創業は1997年)。岩田は前職の頃から宮城と仕事をしており、その期間に信頼関係を築いていたことから最初期のデザイナーとして宮城を迎え入れます。


展示風景 Part1-5 アスクル

宮城は、ティッシュペーパーやボールペンなど膨大な数のオリジナル製品はもちろんのこと、本社「e-tailing center」やブランドマーク「アスクル坊や」などのデザインにも携わっていきます。ここでも宮城は生活者視点を大切にしており、デザイナーとしてだけではなく、自身がアスクルの顧客の第1号となってユーザーの立場から意見を述べることもあったそうです。

街の再開発など多岐に渡るデザイン


展示風景 Part3 ホテルのサイン計画

第二展示室では、ホテルのサイン計画や二子玉川駅周辺の再開発計画など、プロダクトデザインに留まらない幅広い仕事ぶりについて知ることができます。


展示風景 Part4 二子玉川の再開発計画

1980年代末、東急不動産株式会社が社内で開いた「二子玉川駅の再開発の勉強会」に外部ブレーンとして加わった宮城は、いくつかのイメージ図を作成しています。宮城が描いたイメージ図には街を効率化するだけではなく、時間とともに街が発展していくなかで新たなものを取り込めるよう、初めから余白が作られていました。デザインするものが何であれ、その主体は「生活者」であるべきだという宮城の強い信念を感じ取ることができます。


展示風景 エピローグ

エピローグでは、宮城が晩年まで兼任講師を務めていた法政大学大学院での授業「製品デザイン原論」の履修生に向けて送ったメッセージを読むことができます。

「情報社会とデザインについてのメモ」という副題を付けたメッセージの結論部で宮城は、「真のモノの価値 真に人間の幸せのために」という書き出しで、これからデザイナーとして社会と関わりを持つことになる学生たちに向けて自身の考えを伝えています。

デザインしないこともひとつのデザイン


宮城壮太郎《かるヒット》2005年 プラス株式会社

今回の展覧会で強く印象に残ったのが「デザインしないこともひとつのデザイン」という宮城の言葉。モノの置かれる環境や生活者のスタイルを尊重して、生活に寄り添うプロダクトをデザインし続けてきた宮城が語るからこそ説得力のある言葉だと感じました。

世田谷美術館のミュージアムショップでは、「+d Tsun Tsun」など展覧会に展示されていた製品を実際に購入することもできます。いつもの日用品も、デザインを意識することで新しく見えてくるものがあるかもしれません。

本展の詳しい情報は公式サイトをご確認ください。

Exhibition Information

TICKET

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〆切は2022年10月9日まで。
※当選は発送をもって代えさせていただきます。