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クロード・モネの世界にひたる。日本初公開作品を含む〈睡蓮〉などを堪能【国立西洋美術館】
2024年11月1日
ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展/国立西洋美術館
日本初公開のピカソ作品35点を中心に、20世紀美術の巨匠たちの名品を紹介する大規模展覧会が、国立西洋美術館で開催中です。
ハインツ・ベルクグリューン(1914-2007)は、パリで画廊を経営しながら自身のために作品を集め、世界有数の個人コレクションを築き上げた美術コレクター。そのコレクションは1996年から彼の生まれ故郷・ベルリンで公開されるようになり、その後2000年にはナショナルギャラリーに収蔵されました。
2004年に現在の名称に改められたベルクグリューン美術館の特徴は、パブロ・ピカソ、パウル・クレー、アンリ・マティス、アルベルト・ジャコメッティという20世紀美術の巨匠4人に焦点を当てているところにあります。
本展は、そんな同館のコレクションから選んだ作品97点に、日本の国立美術館の所蔵・寄託作品11点を加えた、合計108点の作品を一度に楽しめる大規模な展覧会です。
「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」展示風景
展覧会の導入部では、ハインツ・ベルクグリューンが美術コレクターとしての歩みを始めた記念すべき作品たちが飾られています。その中でも、1952年に購入した素描《眠る男》(1942年)は、彼が自らのコレクションに加えた最初のピカソ作品となっています。
展覧会風景 Ⅰ.セザンヌ – 近代芸術家たちの師から
ベルクグリューンのコレクションの特徴は優れた20世紀美術にありますが、その過程において彼は、フィンセント・ファン・ゴッホの《アルルの公園の小道》(1888年)を含む名画の売却を行いました。そうした中でも、最後まで手元に留められていたのがポール・セザンヌの作品たち。《セザンヌ夫人の肖像》(1885-86年頃)をはじめとした卓越したコレクションは、本展の中心となるピカソ、クレー、マティス、ジャコメッティを含む20世紀の芸術家たちが師と仰いだセザンヌ作品の魅力を私たちに伝えてくれます。
第2章から4章では、日本初公開の作品を含む大規模なピカソ・コレクションを鑑賞しながら、時代と共に移り変わる作品の変遷を辿ることができます。
その中でも特に、「Ⅱ.ピカソとブラック – 新しい造形言語の創造」は注目のポイント。こちらの章の序盤には、「青の時代」後期に描かれた《ジャウメ・サバルテスの肖像》(1904年)、「バラ色の時代」を象徴する《座るアルルカン》(1905年)、《アヴィニョンの娘たち》(1907年)の習作である《女の頭部》(1906-07年)などを並んで鑑賞できる贅沢な空間が広がっています。
展覧会風景 Ⅱ.ピカソとブラック – 新しい造形言語の創造
第2章の中盤から続くピカソとジョルジュ・ブラックのキュビスムに関するまとまった展観も見逃せません。2人の芸術家による共同作業から生まれた作品たちは、以降の芸術様式を大きく変えていくターニングポイントとなりました。
「Ⅲ.両大戦間のピカソ – 古典主義とその破壊」は、ピカソの素描作品を中心に構成されています。繊細な線と淡い色彩で描かれた作品たちからは、ピカソ芸術の幅の広さを知ることができるでしょう。
「Ⅳ. 両大戦間のピカソ – 女性のイメージ」は、1930年代後半から40年代初めまでのピカソ作品に現れた女性像を中心に展示しています。本展の目玉のひとつにもなっている《緑色のマニキュアをつけたドラ・マール》(1936年)は、ピカソが当時のパートナーである女性芸術家ドラ・マールに宛てて描いた作品。ミステリアスな魅力を放つ本作は、彼女に対するピカソの強い関心が見て取れる象徴的な一枚です。
展覧会風景 Ⅳ. 両大戦間のピカソ – 女性のイメージから
同空間には、ベルクグリューン美術館の「顔」とも言える代表作《黄色のセーター》(1939年)や《大きな横たわる裸婦》(1942年)も飾られており、ピカソの代表的な作品をさまざまな角度から鑑賞することができます。
第5章から最終章の7章にかけては、ピカソと同時代に活躍したクレー、マティス、ジャコメッティの作品が飾られています。「Ⅴ.クレーの宇宙から」では、他の章とは一転した紺色の暗い空間に34点に及ぶクレーの作品たちが集結。一見すると同時代の作品たちから独立しているような印象も受けますが、注意深く観ることによって、その奥に隠された同時代の画家たちからの影響を感じ取ることができるでしょう。
展覧会風景 Ⅴ.クレーの宇宙から
「Ⅵ. マティス – 安息と活力から」には、ベルクグリューンが「現代フランスの最も偉大な画家」と称賛したマティスの作品。そして最終章の「Ⅶ. 空間の中の人物像 – 第二次世界大戦後のピカソ、マティス、ジャコメッティ」には、20世紀の2大巨匠と言われたピカソとマティスに加えて、ジャコメッティの作品が並びます。ここでは二度の世界大戦によって疲弊した世界の中で、既存の表現形式と向き合いながら、独自の人間表現を創り出していった3人の芸術家たちの姿を観ることができます。
「私は一貫して、根気よく収集し続けることによって、誰にもまして20世紀全般の生の実感を宿して生きた、人間ピカソの世界の輪郭を捉えようとしたのである」(Berggruen 2001, p.225 )と語っているように、ベルクグリューンの誠実で情熱的なコレクションからは、その当時の画家たちが抱えていた葛藤や喜びを発見できるでしょう。
ベルクグリューン美術館の改修を機に実現した今回の大規模な展覧会。20世紀を象徴する名画の数々を一度に鑑賞できるこの機会を、ぜひお見逃しないよう。
本展の詳しい情報は公式サイトをご確認ください。
※会期等については、今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は展覧会公式サイトでご確認ください。